猫の後ろ足がふらつく理由と考えられる病気

猫の後ろ足がふらつく理由と考えられる病気

猫の調子が悪い時にふらつくような歩き方をすることがあります。猫の後ろ足がふらつく場合は何らかの原因や病気の可能性があるかもしれません。そこで今回は猫の後ろ足がふらつく時に考えられる原因や疑いのある病気についてお話ししたいと思います。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の後ろ足がふらつく理由

堤防を歩く猫

後ろ足を怪我している

猫が歩く際に後ろ足がひきずって、フラフラとふらつくような場合には、後ろ足を痛めている可能性があります。

また中には、外に出る機会がある猫の足がふらつく場合は、車との接触などの事故で後ろ足を怪我してしまうことが多く、猫の足がふらつき下半身麻痺になる恐れもあるため、完全室内飼いにするようにしましょう。

脳や神経による神経性疾患

猫の後ろ足に、外傷は見当たらないがふらつく場合は、脳や神経などの神経性疾患の可能性があります。猫の足がふらつくのは、生まれつきの先天性異常によるものもあれば、何らかの脳の障害で、平衡感覚のバランスが崩れてしまい、後ろ足がふらつくことがあります。

また猫の足がふらつく時は、平衡感覚の役割をもつ、内耳にある三半規管が、異常をきたすことでも体のバランスが保てなくなるため、ふらつく、グルグルと回る、斜頸などの神経症状がおこります。

その他にも猫の足がふらつく時は、ヘルニアにより、神経や脊髄に圧迫されることで痛みが出ることや、後ろ足がおぼつかない※、ふらつくような歩き方をするなどの神経症状がみられます。

何かしらの病気による二次的な影響

猫の足がふらつくのは、怪我や先天的な疾患だけが原因とは限りません。猫の足がふらつく原因として、腎臓などの臓器による病気や機能低下により、貧血や体力低下を起こし、猫の後ろ足がヨタつき、体勢がふらつくことがあります。

また猫エイズや猫風邪など、何かしらの感染症に伴う免疫力の低下や、発熱、嘔吐、下痢などが要因となり、後ろ足に力が入らず、座りこむことや、自分の体を支えきれずふらつくことが起こります。

他にも炎症による波及や、栄養不足(障害)による低血糖、低体温、高齢猫に伴う筋肉量の減少なども、後ろ足がフラフラとふらつくことがあります。

猫の後ろ足がふらつく時に考えられる病気

日向ぼっこをする猫

中耳炎・内耳炎

猫の後ろ足がふらつく時は、耳の病気にかかっている可能性があります。猫の耳の構造は入り口から外耳、中耳、内耳と大きく3つに分かれています。この耳の奥にある内耳には、平衡感覚の役割をもつ「三半規管」があります。三半規管は、前庭神経とつながっており、頭など、体の位置感覚情報を脳に伝達する働きをしています。

しかし、何らかの原因により、この三半規管に炎症をおこしてしまうと、猫は平衡感覚を失い、目がグルグルと回ります。この時、後ろ足がふらつくようになります。またこの時、眼振(眼球が揺れている)、斜頸(首が斜めに傾いている)などの神経症状をおこすことがあります。

猫のふらつく原因でもある、三半規管の炎症の原因は、外耳炎の悪化があげられます。初期は外耳炎だけでしたが、治療を怠り、症状が長引くと、炎症が耳の奥まで広がり、猫の足がふらつく中耳炎・内耳炎を引き起こしてしまうのです。

小脳の形成不全

生まれつき小脳に障害があると、子猫の時から後ろ足がフラフラとふらつくことや、すぐによろけて倒れてしまう、眼振など神経症状を起こします。

主な先天的小脳障害として、「小脳の形成不全」があげられます。原因としては、妊娠中の母猫が猫汎白血球減少症ウイルス(猫パルボウイルス)に感染してしまうことで、胎盤を通して子猫に感染することです。

あるいは生まれたばかりの子猫に、猫汎白血球減少症ウイルスが感染することでも、子猫の小脳に大きなダメージを与えてしまうことで、小脳形成不全を引き起こします。

先天的な原因疾患で、小脳にある神経細胞が変性してしまう「小脳変性症」や、生まれた時から既に小脳が萎縮している「小脳低形成症」などもあります。

小脳変性症

小脳の神経細胞が妨害されることにより、歩く際に後ろ足がふらつくことがおきます。この病気は進行性と非進行性に分けられ、進行性の場合は徐々に神経症状が重症化していきます。

小脳低形成症

遺伝的なものや、妊娠中の母猫及び、生まれたばかりの子猫による感染症、栄養障害、中毒など様々な要因により小脳の成長が妨害されてしまうことで小脳に障害がおきます。猫の場合は、特に猫汎白血球減少症ウイルス感染症が原因のことが多く、フラフラとふらつく、震え、眼振などがおこります。早ければ、生後3~4週齢の子猫から神経症状の兆候がみられることがあります。

尿毒症

高齢猫で、食欲不振で全く食べない、嘔吐などの症状があり、体や足元がふらつく際に尿毒症を引き起こしていると考えられます。尿毒症とは、腎不全の末期状態のことを指します。腎臓機能が著しく悪くなり、老廃物が体内に蓄積されることで、様々な臓器に影響を与えてしまうので命の危険性が高いです。

猫は元々、腎単位であるネフロンの数が少ないこともあり、腎不全になりやすく、高齢猫の約30%が慢性腎不全を発症しているデータがあります。猫が尿毒症を引き起こすと、ご飯を全く食べない、水も飲まない、嘔吐や下痢、アンモニア臭(臭いがキツイ口臭)などがみられます。

かなり状態が悪くなると、著しい体重減少や貧血もみられ、後ろ足に力が入らないためにふらつくようになり、自力で自分の体を支えきれなくなり、尿失禁もみられるようになります。次第にひきつけや昏睡など、神経症状をおこす場合があり、命を落とす危険があります。

低血糖症

猫の体や後ろ足がふらつく、意識がハッキリしていない、ぐったりしている、震えなどの症状がみられた場合は低血糖症の可能性があります。低血糖をおこす原因は様々で、子猫の場合は、栄養不足や下痢などで栄養を吸収できなかったことがあげられます。

成猫や高齢猫の場合も栄養不足が考えられますが、膵臓の腫瘍や腎不全、肝不全などの何らかの病気に伴い低血糖をおこし、食欲不振から二次的に血糖値が下がることが原因として考えられます。

また、糖尿病を発症している猫は、低血糖をおこすことが稀にあります。治療の際に血糖値を下げるため、インスリンの投与を行うのですが、インスリンの量を多く投与すると、血糖値が一気に下がりすぎて低血糖をおこしてしまいます。

猫の後ろ足がふらつかない正常な歩き方

2匹の猫がくっついて歩いている

歩き方

私たちは歩く時、かかとを床につけて歩きますが一方、猫はかかとではなく、つま先立ちの状態で自分の体重を支えて歩いています。一見、歩きにくそうにも思えますが、この体勢の方が速く走ることができるため獲物を狩る際には非常に適しているのです。猫が走る速さは時速48kmに相当するといわれています。

肉球の役割

猫の大きな特徴でもある、プニプニとした柔らかい肉球は、クッションの役割をもっていて、足下からくる衝撃を緩和することができるので、足音立てることせずに歩くことができます。

肉球には汗腺があり、滑り止めの効果があるので、足元が不安定なところでも足を滑らせずに歩くことができます。

バランスのとり方

基本的に猫が歩く際は右前足と右後ろ足、又は左前足と左後ろ足は連動する特徴的な歩き方をします。そして柔軟な体や平衡感覚をもつ三半規管の発達により、猫は自分の体重バランスを瞬時に調節することができますが、尻尾もバランスを調節する役割をもっているといわれています。

猫の尻尾にある神経は脊髄とつながっているため、とても敏感で身体のバランスを調整することができます。そのため、猫は細い道や塀の上でも落ちることなく、歩くことができるのです。

猫の骨格

元々猫は約240個と人よりも骨格の数が多く、非常に柔軟な体つきをしています。その柔らかい骨格があるおかげで、猫は高いところから飛び降りても、落下する際の衝撃を吸収してくれます。

一般的に猫は、6~7mの高さからでも無事に着地することができるといわれていますが、どんなに柔軟な体で運動能力が高い猫でも、時には足を滑らせてしまうことがあるため、稀に落下事故により後ろ足を痛めてしまうことがあります。

実際にキャットタワーや、上の階の手すりから落下した事故で、運ばれてきた猫がいました。

まとめ

歩く三毛猫

骨格により柔軟な体や、発達した三半規管、尻尾などにより、猫は瞬時に自分の体重バランスを整えることができます。そのため細く狭いところを、足を滑らせずに悠々と歩け、高いところから飛び降りても、位置感覚がわかるので着地することができます。

しかし脳の障害や三半規管の異常、病気などによる二次的なものなど、様々な要因により猫が後ろ足をふらつかせることがあります。

明らかにいつもと違う歩き方でふらついていて、ぐったりしている、意識がもうろうしているなど、少しでも異変を発見した際は、動物病院に受診することを勧めます。

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