猫を電子レンジでチンした訴訟とは
「猫を電子レンジでチンした訴訟」、その内容は以下のようなものとされています。
とあるおばあさんが電子レンジをプレゼントされ、その機能を大層気に入り活用していた。ある日、飼い猫がずぶ濡れになって帰ってきたため、おばあさんは電子レンジを使って猫を乾かそうと考えた。猫を電子レンジにいれ温めをスタートしたところ、爆発を起こし、猫は亡くなってしまった。
そこで、おばあさんは電子レンジの取扱説明書を確認したが、「動物をいれてはいけない」という明記はなかったため、電子レンジの販売元を相手に訴訟を起こした。その結果、おばあさんの主張は認められ、多額の賠償金を手に入れることとなり、電子レンジの説明書には「動物をいれないでください」という注意書きが明記されるようになった。
ここまでが猫レンジ事件として語り継がれている内容です。しかし、これは実際にあった話…ではなく、米国発の都市伝説のひとつです。諸説ありますが、製造物責任法(PL法)を皮肉ったブラックジョークであるという説が濃厚であるようですね。動物愛護先進国ともいわれる米国で、このような惨い都市伝説が語り継がれるのは、アメリカが「訴訟大国」と呼ばれることに深く関係しているようです。
猫を電子レンジでチンした事件(アメリカ以外の事件)
少年達が猫を電子レンジで殺害した事件(カナダ)
これは、2008年にカナダのアルバータ州カムローズで起きた事件です。 少年4人が金品を盗もうと、ある民家に強盗に入りました。 その際に民家で飼われていた猫を、あろうことか電子レンジに入れ、加熱し殺害してしまったのです。 さらに少年たちは、戸棚に「かわいい猫だね、電子レンジの中を見てみな」とペンで挑発的なメッセージを残しました。 この事件が報じられると、ネット上で少年達を批判するコメントが殺到。彼らの実名が公開される事態になりました。その後、少年たちは猫を殺害した罪で裁判にかけられています。
激怒した女性が飼い猫を電子レンジで殺害した事件(イギリス)
続いてご紹介するのは、2014年にイギリスで起きた事件です。 これは精神科に通う23歳の女性が、診察時に事件の内容を自ら話したことから発覚しました。 彼女は、飼っている金魚を、同じペットである猫が食べてしまったことに激怒。信じられないことに、猫を電子レンジに入れて加熱してしまいました。5分ほど経ち、ふと我に返った女性は猫を救出しましたが、猫は苦しんだ後に死亡。 裁判では、女性は「精神疾患があり、衝動的な犯行」だと弁護されましたが、「非常に衝撃的かつ凄惨である」として懲役14週の刑と共に、今後動物を飼うことを禁止されました。
「猫を電子レンジに入れてはいけない」訴訟大国の闇
「猫を電子レンジに入れてはいけない」と言われれば、「当たり前でしょうが!」と答える人が殆どですよね。では何故猫レンジのような事件が、まるで実話かのように長く語り継がれているのか。それは、訴訟大国と呼ばれる米国の裁判事情が関係しているようです。
訴訟大国の闇①価値観の違い
米国は合衆国ということだけあって、様々な人種、言語、習慣、宗教などがあり、単純な話し合いでは解決できない事案が非常に多いことも裁判事情に深く関わっています。私達日本人は、なるべく穏便に話し合いで解決したいという考えを持つ人が少なくありませんが、米国では「とりあえず訴えよう」というところから始まると言われる程です。
訴訟大国の闇②エンターテイメント化
米国では、裁判の様子を生放送したり、DVD化したりすることがあるのだとか…。なんと裁判官が鋭いツッコミやアメリカンジョークを飛ばすこともあるようです…。そもそも、私達日本人が持つ「裁判」への認識とは全く別物なのかもしれませんね。
訴訟大国の闇③弁護士が多い
日本の弁護士が3万2千人であるのに対し、米国には127万人もの弁護士がいるとされています。そのため、弁護士への依頼も比較的難しくなく、訴状やそれらの手続きも簡易的であることも、訴訟を起こしやすい要因のひとつかもしれませんね。
訴訟大国の闇④多額の賠償金
実際に米国では「何だそれは…」という内容の訴訟で、多額の賠償金を勝ち取っているケースは少なくありません。そのため、金銭目的で訴訟を起こす人が後を絶たないのも事実としてあります。特に大手の企業を相手取り、多額の賠償金を得ようと無茶な訴訟を起こす人は多く、中には目を見張るような内容のものもあります…。
「猫を電子レンジでチン」以外の事件
では実際に、米国で起こった何とも驚きの事件をご紹介します。
「猫を電子レンジでチン」以外の事件①マクドナルドコーヒー事件
これは1992年、ニューメキシコ州で本当に起こった訴訟事例です。その内容は、ある女性がマクドナルドのドライブスルーで購入したホットコーヒーを膝の上にこぼしてしまい、火傷を負ったため、販売元のマクドナルドへ治療費とホットコーヒーの温度の再確認を求めたというものです。女性側は、マクドナルドのホットコーヒーは一般的に販売されているホットコーヒーよりも温度が高いことや、女性の火傷が重度であったことなどを訴えました。
その結果、裁判所はマクドナルドに16万ドル(約1600万円)の填補賠償額と、マクドナルドのコーヒー売り上げ高2日間分に相当する270万ドル(約2億7000万円)を懲罰的損害賠償額を女性へ支払うことを命じました。この訴訟以降、マクドナルドはホットコーヒーの温度を下げ、カップには「VERY HOT!」などの火傷への注意書きが明記されるようになったとされています。
この事件は、バラエティやアニメなどでも面白おかしく取り上げられることも多かったようですが、実際には和解が成立し、女性はマクドナルドから50万ドル以下の和解金のみ受け取ったそうです。とはいえ、「コーヒーをこぼして巨額の賠償金を受け取った」という表面的な話だけが拡散されたことで、この事件を元に猫レンジ事件などの都市伝説が生み出されたとも言われています。
「猫を電子レンジでチン」以外の事件②お化け屋敷が怖すぎて訴訟
1998年、ある女性がユニバーサル・スタジオを相手に訴訟を起こしました。その内容は、アトラクションの一つである「ハロウィン・ホラー・ナイト」が怖すぎた!という何とも驚きの内容。アトラクションの中で、あまりの恐怖に転んでしまった女性を、アトラクション内のスタッフが脅かして怖がらせようとしたとして精神的苦痛を訴えたのです。その裁判の結果、なんと女性の訴えは認められ、ユニバーサル・スタジオへ1万5000ドル(約180万円)の支払いを命じました。アトラクションよりも、こんな訴訟がまかり通ってしまうことの方へ恐怖を感じますね…。
「猫を電子レンジでチン」以外の事件③ポップコーンを毎日食べて訴訟
2012年、市販のポップコーンに含まれる人工バターの影響で気管支の病気「ポップコーン肺」になってしまった男性が訴訟を起こしました。確かに市販のポップコーンを食べて健康に害をきたしのであれば訴訟も致し方がない…と考えられるかもしれませんが、なんとこの男性、10年間毎日2袋のポップコーンを食べていたというのです。ちょっと食べすぎかと…。しかし、ポップコーンに病気への警告表示がなかったことなどから、ポップコーンの製造元に損害賠償金720万ドル(約5億6,000万円)の支払いが命じられました。
訴訟事例を挙げ始めるとキリがありませんが、このような訴訟が実際に数多く起きていることを考えれば、猫レンジ事件のような米国の裁判事情を揶揄した作り話が存在することも納得できますね。また、猫をレンジに入れてしまい訴訟を起こしたという話は、あくまでも都市伝説であるとされていますが、実際に「猫をレンジに入れた」という事件は存在しているようです。
「猫を電子レンジでチン」以外の事件④悪戯した子猫を電子レンジへ
これは、都市伝説である「猫レンジ事件」を本当に起こしてしまったとして、世間を騒がせました。英国南ヨークシャー州に住む女性が、金魚に悪戯をしたという生後4か月の子猫をお仕置きのために電子レンジへ入れ、スタートボタンを押したというのです。1分後、電子レンジから子猫を出したものの、90分後に亡くなりました。この事件に対し、裁判所は14週の禁固刑を科すという判決を下しました。
生後4ヵ月といえば、悪戯盛り。金魚を目の前にすれば悪戯をしてしまうことも安易に想像できたはずです。手の届かない場所へ避難させる、子猫を注意するという方法もとらず、無抵抗な子猫を苦しめたことは決して許されることではありませんね。
上記の事件以外にも、実際には電子レンジの電源を入れてはいないものの、猫を電子レンジにいれる様子を撮影し、アップロードしたなどで問題になっているケースもあります。猫レンジ事件を連想させる遊びのつもりなのでしょうが…絶対に許されることではありません。虐待目的ではなく、炎上目的である場合もありますが、そんな画像や動画を発見した場合は即通報しましょう。
まとめ
猫を電子レンジでチンした訴訟についてご紹介しました。猫レンジ事件そのものは、あくまで訴訟大国である米国を皮肉った都市伝説ですが、実際に猫をレンジにいれて命を奪った人がいることや、猫レンジ事件のようなとんでもない訴訟が起こり続けているのも事実です。米国の裁判事情を知れば知るほど、何が本当で何が作り話なのか分からなくなってしまいそうですね…。