【獣医師監修】猫にニンニクを与えるのは絶対NG!危険な理由と中毒症状、致死量から誤食時の対処法まで徹底解説

【獣医師監修】猫にニンニクを与えるのは絶対NG!危険な理由と中毒症状、致死量から誤食時の対処法まで徹底解説

猫にニンニクは絶対NG!加熱したものや「舐めただけ」でも、命に関わる「にんにく中毒(貧血)」を引き起こす危険があります。なぜ危険なのか、具体的な症状、危険な量の目安、万が一食べてしまった場合に飼い主がすべき対処法と動物病院での処置を解説。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫ににんにくを与えるのは絶対にNG

ニンニクのそばで横になっている猫

猫にニンニクは絶対に与えてはいけません。これは加熱調理したニンニクや、ニンニク風味の調味料(ガーリックパウダーなど)であっても同様です。

人間にとっては健康食材として知られるニンニクですが、猫にとっては命に関わる可能性のある、非常に危険な「中毒」を引き起こす食べ物です。

猫がにんにくを食べると危険な理由

体調が悪そうな様子で眠っている猫となでる飼い主の手

ニンニクは、ネギや玉ねぎ、ニラなどと同じ「ヒガンバナ科」の植物です。

これらの植物には、猫にとって有毒な「有機チオ硫酸化合物」が含まれています(かつてはアリルプロピルジスルフィドという成分が中毒を引き起こすと考えられていましたが、現在はこちらが主な原因物質だとされています)。

猫がこの成分を摂取すると、血液中の赤血球にある「ヘモグロビン」という重要なタンパク質が酸化されてしまいます。ヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ役割を担っています。

酸化によって破壊されたヘモグロビンは、赤血球の中で「ハインツ小体」と呼ばれる塊を形成し、赤血球そのものが壊れやすくなります。

結果として、体中に酸素を運べなくなる「溶血性貧血」という深刻な状態を引き起こし、重症の場合は命を落とす危険性があります。

にんにくに含まれる成分と猫への影響

集めて置かれた3個のニンニク

ニンニクには人間にとって有益な成分が多く含まれていますが、それらが猫に同じように作用するわけではありません。

アリシン(硫化アリルの一種)

ニンニク特有の強い香りのもとになる成分が「アリシン」です。人間にとっては疲労回復や免疫力アップなどの効果が期待されることがあります。

しかし、このアリシンこそが、猫の赤血球を破壊する原因となる有毒成分(有機硫黄化合物)の一つでもあります。

ビタミンB群・ミネラル

ニンニクにはビタミンB1、B6などのビタミンB群や、カリウムなどのミネラルも含まれています。これらは本来、体の機能を維持するために必要な栄養素です。

しかし、猫がニンニクからこれらの栄養素を安全に摂取することはできません。得られるかもしれないわずかなメリットよりも、中毒を引き起こすデメリット(毒性)の方が圧倒的に大きいため、猫に与える健康効果は一切ないと言えます。

猫の「にんにく中毒」の危険な症状

体調が悪そうな表情で床に伏せている猫

猫がニンニクを食べた場合、すぐに症状が出るとは限りません。多くの場合、食べてから数時間後、あるいは1〜数日経ってから症状が現れ始めます。

初期症状としては、下痢や嘔吐、よだれ、腹痛など、消化器系の異常が見られることがあります。

中毒が進行し貧血が始まると、酸素が全身に行き渡らなくなるため、元気がない、ぐったりして動かない、食欲不振などの様子が見られます。

さらに重症化すると、呼吸が速くなる、心拍数が増加する、発熱する、歯茎などの粘膜が白っぽくなる(貧血のサイン)といった症状が現れます。

赤血球が破壊されることで、尿にヘモグロビンが混じり、赤褐色や茶色の血尿のような尿(ヘモグロビン尿/血色素尿)が出ることもあります。これらは非常に危険なサインです。

猫の「にんにく中毒」を引き起こす量の目安

ニンニクに鼻先を近づけている猫

ニンニク中毒の危険性は、猫の体重や健康状態、個体差によって大きく左右されるため、「この量までなら安全」という明確な基準はありません。

「にんにくを舐めた」だけでも危険?

結論から言うと、「舐めただけ」でも危険な可能性があります

特に子猫やシニア猫、持病のある猫は、少量の摂取でも重篤な症状が出やすい傾向があります。

ニンニクのエキスが溶け出したスープや、ガーリックパウダーが付着した人間の手を舐めただけでも、中毒症状を引き起こすリスクはゼロではありません。

「にんにくの実」はどのぐらい食べたら危険?

一般的に、猫は体重1kgあたり1g以上のニンニクを摂取すると、重い中毒症状を引き起こす危険性があるとされています。

例えば体重4kgの標準的な体格の猫(マンチカンやアメリカンショートヘアなど)であれば、4g程度が目安となりますが、これはあくまで計算上の目安です。

玉ねぎの場合は、体重1kgあたり5g以上で中毒を引き起こすと言われていますが、ニンニクは玉ねぎよりもさらに毒性が強いと考えられています。ひとかけらでも猫にとっては致死量になり得ると認識してください。

猫がにんにくを食べてしまった場合の対処法

診察台に伏せて獣医師の診察を受ける猫

万が一、猫がニンニクを食べてしまった、あるいは舐めてしまった疑いがある場合は、症状が出ていなくても、様子を見ずに直ちに動物病院へ連絡してください。

飼い主ができる対処法

飼い主が自宅でできる応急処置は、残念ながらありません。

自己判断で無理に吐かせようとしたり、塩水や水を与えたりすることは絶対にやめてください。かえって猫の状態を悪化させる可能性があります。

動物病院へ行く前に、まず電話で状況を伝えることが重要です。「いつ」「何を(生か加熱か、料理名など)」「どれくらいの量」を食べた可能性があるかを、できるだけ正確に伝えてください。

可能であれば、猫が食べたものと同じもの(料理の残りや、ニンニクの現物、商品のパッケージなど)があれば、それを持って病院へ向かいましょう。

動物病院での処置

動物病院では、ニンニクを食べてからの時間や猫の状態に応じて処置が行われます。

食べてから時間が浅く(通常1〜2時間以内)、猫の意識がはっきりしている場合は、毒素が体に吸収される前に「催吐処置」として吐かせる処置を行うことがあります。

すでに時間が経過している場合や、催吐処置が困難な場合は、消化管に残った毒素を吸着させるために「活性炭」の投与が行われることがあります。

また、体外への毒素の排出を促したり、脱水を防いだりするために、点滴(静脈内輸液)が行われるのが一般的です。

貧血が深刻なレベルまで進行している場合は、命を繋ぎとめるために輸血が必要になるケースもあります。

まとめ

生のニンニクと加工品

ニンニク(加熱したもの、パウダー、エキスを含む)は、猫にとって「毒」であり、深刻な溶血性貧血を引き起こす危険な食べ物です。

人間用の料理、特にステーキやパスタ、スープなどには、ニンニクが使われていることが多いため、調理中や食事中の盗み食いには細心の注意が必要です。

猫がニンニクを口にしてしまった疑いがある場合は、症状の有無にかかわらず、すぐに動物病院を受診してください。早期の対処が、愛猫の命を救う鍵となります。