猫の引っかき傷の危険性
猫と暮らしていると、猫の爪や歯があたって傷ができてしまうことも多々あるかと思います。愛猫家にとって愛猫のひっかき傷は勲章のひとつだ!と言いたいところですが、様々な危険性も潜んでいるようです。この機会に猫のひっかき傷にはどんな危険性があるのか、引っかき傷によって引き起こされる病気について再確認してみましょう。
猫の引っかき傷の危険性①猫ひっかき病
「猫ひっかき病」とは、バルトネラ菌を保有した猫に引っ搔かれたり、噛まれたり、傷口を舐められたりすることによって感染する人獣共通感染症です。主症状は傷口の腫れや化膿、微熱、倦怠感などですが、リンパ節炎を引き起こすこともあります。ひっかき傷の箇所によって、脇や足の付け根のリンパ節が卵ほどの大きさまで腫れあがることもあります。
猫ひっかき病の原因となる「バルトネラ菌(バルトネラヘンセレ)」は、バルトネラ菌を保有したノミの吸血や糞を介して感染します。バルトネラ菌は、猫に対して病原性を持たないウイルスであるために、感染した猫自身は無症状ですが、感染期間が非常に長く約18ヵ月前後続くこともあるようです。
つまり、猫ひっかき病はノミから猫へ、猫から人へと感染する恐れがある感染症です。人が猫ひっかき病に感染した場合、症状が軽度な場合は自然治癒することも可能ですが、症状が重篤な場合は完治まで数ヶ月を要する場合もあります。
猫の引っかき傷の危険性②パスツレラ症
猫の引っかき傷によってパスツレラ症が引き起こされる危険もあります。パスツレラ症とは、パスツレラ菌(パスツレラムルトシダ)と呼ばれるウイルスによって引き起こされる感染症ですが、免疫力が低下している時に症状が現れることが多いため日和見感染症の一種とされています。パスツレラ菌は、主に猫に噛まれた傷口から感染すると考えられています。このパスツレラ菌は、高い確率で猫の口腔内に存在する菌であるため、免疫力が低下している時や、免疫力の低い赤ちゃんやお年寄りは特に注意しなければなりません。
猫の引っかき傷の危険性③カプノサイトファ―ガカニモルサス感染症
カプノサイトファ―ガカニモルサス感染症とは、カプノサイトファ―ガカニモルサスと呼ばれる細菌に感染することによって引き起こされます。上記のパスツレラ症と同様に日和見感染症の一種とされており、猫の唾液に高い確率で存在する菌でもあります。しかし、敗血症、髄膜炎などの重篤な症状を引き起こすこともあり、敗血症を引き起こした場合で30%、髄膜炎を引き起こした場合で5%の患者が死に至っているという報告もあります。
感染経路は引っかき傷や噛まれた傷、キスや食器の共有などが挙げられます。免疫力が低下している時や、赤ちゃん、お年寄りは十分に注意する必要があります。
猫と人との間で感染する人獣共通感染症は意外に多く存在します。猫と暮らしていると、ついたかがひっかき傷…と考えてしまいがちですが、危険性についてもしっかり頭に入れておかなければいけませんね。特に免疫力が低下している時に悪さをする日和見感染が多いことも、注意しなければなりません。猫のひっかき傷がなかなか治らない、熱が出てきたなど、異変が合った場合はすぐに病院を受診しましょう。
猫の引っかき傷の注意点
猫の引っかき傷の危険性についてご紹介しましたが、猫と暮らす以上、引っかき傷を一切つくらないことも、引っかき傷ができる度に病院へ行くのもいささか難しいこととも言えます。では、どんな引っかき傷に注意すればいいのでしょうか。ポイントは以下の4つです。
猫の引っかき傷の注意点①出血量
まず、目に見て分かるほどに出血している場合は傷が深く、何らかの細菌感染を引き起こす可能性も高くなります。多少の引っかき傷であれば血が滲むことはあっても、止血が必要なほどではないはずです。止血しなければいけない程の引っかき傷を負った場合はなるべく病院を受診しましょう。
猫の引っかき傷の注意点②化膿
愛猫と遊んでいる時にできた引っかき傷の治りが悪く、水ぶくれのように腫れてきた、膿のような浸出液が出てきたという場合は、なるべく早く病院を受診しましょう。何らかの感染症を引き起こしている可能性もあります。
猫の引っかき傷の注意点③倦怠感
傷口はいつものように少し腫れている程度なのに、何故か身体がだるい、頭痛がする、食欲がないという場合は病院を受診しましょう。感染症による症状も、一見風邪の症状に似ていることからまさか猫の引っかき傷が原因とは思わなかったという方も少なくないようです。病院へ行った際に、猫に引っかかれて傷ができたことを医師へ説明しましょう。
猫の引っかき傷の注意点④痒み
猫の引っかき傷がミミズ腫れのようになり、強い痒みが出るという人は多く、なかには全身に湿疹や蕁麻疹が出たという人も。これらは、上記でご紹介したような日和見感染症の軽度な症状である場合や、アレルギーが原因となっている場合があるようです。
筆者も幼少期はアトピー性皮膚炎、猫アレルギー持ちだったため、猫の引っかき傷は傷の深さに関わらず大袈裟に腫れあがり、熱を持ち、痒みが伴います。数分もすれば何もなかったかのように消えるのですが、初めて見た人には驚かれるような見た目に…。
筆者のようにすぐ治まるのであれば心配要りませんが、数分経っても腫れや痒みがひかない、湿疹や蕁麻疹が広範囲に広がってきたという場合は早急に受診してください。
猫の引っかき傷は、殆どの場合自然に治ります。しかし、傷口の治りが悪い場合や、体調に異変がある場合はたかが引っかき傷と侮ってはいけません。清潔な室内で暮らしている飼い猫も例外ではありませんが、野良猫と触れ合った時に引っかき傷ができてしまったという場合は特に注意しましょう。
猫の引っかき傷を治す処置
猫の引っかき傷を治す処置についてご紹介します。
猫の引っかき傷を治す処置①流水で洗い流す
まず、猫の引っかき傷ができた時はすぐに流水で洗い流しましょう。ついティッシュでポンポン…と拭いて終わってしまいがちですが、水道の一番強い水圧で傷口を洗い流すことを意識しましょう。流水で洗い流すだけなら、普段から習慣づけることもできそうですね。
猫の引っかき傷を治す処置②消毒する
猫の引っかき傷を治す治療として、様々な感染症を防ぐためにも消毒を行います。傷口を早く治すために消毒液を使わない治療が推奨されることもありますが、動物との接触による傷口には消毒液を使い、感染症を防ぐことを優先しましょう。
猫の引っかき傷を治す処置③モイストヒーリングをする
傷口を洗い流して消毒をする、この後は何か薬を塗りたいところですが、市販の傷薬にも様々な効能のものが販売されています。使い方によっては逆効果になってしまう場合もありますので、モイストヒーリング、湿潤療法を取り入れてみましょう。
BAND-AID(バンドエイド) のキズパワーパッドなどが有名ですね。このモイストヒーリングは、傷口を乾燥させず、治癒力を高める効果が得られるとされています。また、傷跡が残りにくいことでも知られ、実際に猫や犬の引っかき傷が付きやすい、動物看護士さんやトリマーさんなども利用することが多いようです。
まとめ
猫の引っかき傷の危険性と治す処置についてご紹介しました。猫の引っかき傷によって引き起こされる感染症も多く、その症状は重篤化すると死に至る可能性もあるようです。たかが引っかき傷、されど引っかき傷…猫と人が健康的に暮らすためにも、引っかき傷の危険性をしっかり理解し、免疫力が低下している時は十分に注意しましょう。
また、爪切りやノミダ二駆除、ワクチン接種、完全室内飼いの徹底など、日頃から行えることもたくさんあります。どうすれば、リスクを減らすことができるのか。改めて猫の生活環境を見つめ直してみるのもいいかもしれませんね。