【獣医師コラム】娘猫の身代わりに『自ら捕獲器に入った母猫』の話

【獣医師コラム】娘猫の身代わりに『自ら捕獲器に入った母猫』の話

外で暮らす猫のなかには数%、人になつかずに暮らしている猫がいます。今回は以前野良猫の避妊活動を行う地域猫活動・TNR活動に参加した際に出会った、『娘猫の身代わりに自ら捕獲器に入った母猫』の話を紹介します。

娘猫の身代わりに『自ら捕獲器に入った母猫』の話

野良猫

外で暮らす猫のなかには数%、人になつかずに暮らしている猫がいます。そういう猫は、捕獲器は罠だと知っており、近づくことすらしません。

そんな捕獲が不可能だった猫が自ら捕獲器に入ったのです。一体何が起こったのか。それは実際に起こった出来事です。

母猫との出会い

人になついて可愛がられるのが猫なのですが、なかには人になつかないで、自由に暮らしている猫もいます。

その猫がやってきたのは夏の終わり頃。生後5ヶ月齢ほど若い猫で、餌もあって居心地が良かったのでしょう、直ぐに地域に馴染みました。

外で暮らしているので、早々に避妊手術を済ませる必要があって、捕獲器を仕掛けたものの、全く近づく気配はありませんでした。

野生の勘で警戒しているためか、捕獲不可能な猫だったのです。

ある日、野良の母猫はお腹がぺったんこ 捕獲されたのは別の猫

捕獲を試みても捕まるのは、いつも見知らぬ猫、この周辺にこんなに猫がいたのかと思うほどです。やがて母猫のお腹は大きくなり、心配していたことは的中しました。

ある日、メス猫がお腹はぺったんこで現れ、やがて一匹の子猫を連れて現れました。しかし、警戒心は一層強まってきました。

母猫は子猫に罠の危険性を教え、決して捕獲器に近づかせようとはしませんでした。

不覚にも捕獲器に入ってしまった娘猫 慌てる母猫

捕獲されて威嚇する娘猫

子猫が生後5ヶ月齢ほどに成長したある日、娘猫は捕獲器に近づいてしまいました。母猫が警戒を教えていたにもかかわらず、娘猫は檻のなかの餌に興味をもったのです。

食べようとした瞬間「カシャン」という金属音とともに捕獲器の扉は閉まってしまいました。あわてて檻の中で大暴れして逃げ出そうとする娘猫、母猫には助けることができません。

あれほど警戒することを教えていたのに残念だったのでしょう。捕獲器を遠巻きに見て諦めようとはしませんでした。

一方、予想外で捕まった娘猫でしたが、避妊手術ができる体格になっていたので、まずこちらから手術を済ませ、元の場所で放しました。警戒していた母猫はずっと探していたらしく、見つけると二匹一緒に猛ダッシュで家の隙間へ走りこんでいきました。

人目につかない場所で安堵したのでしょう。ふたたび、親子で暮らすようになりました。

なかなか捕まらない母猫

この1年間、延べ13匹の見知らぬ猫が捕獲器に入り、2度捕獲される猫もいたりしましたが、どうしても母猫だけは捕まりませんでした。

母猫の避妊手術を早く済ませないと、また子供が増えてしまいます。再び捕獲を試みるものの、やはり捕獲器には近づかず、周囲を逃げ回る始末でした。

ところがあれほど捕獲が難しかった母猫が、娘が戻ってきて6日目、容易に捕獲されたのです。

娘猫の代わりに自ら捕獲器に入った母猫

捕娘猫の身代わりで捕獲器に入った母猫

警戒を教わっていた娘猫でしたが、また捕獲器の餌につられて接近してしまったのです。警戒心の薄い娘猫には怖さが分からないのでしょう。

娘猫が捕獲器に入ろうとした瞬間に母猫が身代わりになって入ったのです。

「カシャン」

自ら入ったことで母猫には威嚇も怯えもありません。

きっと娘猫を守れたと思っホっとしているのでしょう、娘猫の方はあの金属音に驚いてとっくに逃走。しばらく一匹暮らしとなりますが、数日の辛抱です。

まとめ

避妊手術を終えて一緒に暮らす親子猫

思いがけず、親子猫の避妊手術は無事に終えることができました。今では二匹一緒に走り回り、自由に暮らしています。

動物の5つの自由と言われていますが、本当の意味での猫の自由とは何かと考えさせられます。まあ、とにかく猫は可愛がっておけば良いということには間違いありません。

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