①猫の舌と味覚
猫の舌にはもちろん味覚があります。その味覚を感知する細胞を味蕾(みらい)と呼び、これは人にも、犬や猫以外の動物にもあるものです。
この味蕾で甘味・塩味・酸味・苦味・旨味を感じ、食べる喜びを感じながら生きていますが、猫は甘味や塩味をほぼ感じません。それは猫が肉食のため、生きる中で甘味と塩味を感じる必要が無かったために退化したといわれています。
一方で酸味や苦味は敏感に感じ取り、口にする物が傷んでいたり、腐敗していないかをすぐに舌で判断することができるのです。また、猫が味を感じる味蕾は舌の真ん中には無く、味覚を感じるのは舌の側面なのです。人も食べ物を口の真ん中に置くと味覚はないので、試してみると面白いですよ。
猫の食欲をそそる基準は、以下になります。
①匂い
②食感
③味
④見た目
嗅覚に優れた猫ですが、味覚を感じる舌はあまり発達していません。これは、人が感じる味覚の味蕾の数と比べると、猫は大分少ないからです。結果、キャットフードを主食にする猫は、まず匂いで好みかどうかを判断し、食感で危険のない味だと分かったら安心して食べ続けてくれるようです。人と違って美味しいから食べるのではなく、生きるために食べることを優先しているのです。そのため、いつものご飯を食べない時は、鼻が利かない・口が痛い・お腹が不調などの問題があるかもしれません。しっかり様子をみてあげてください。
②猫の舌とザリザリ
猫の舌は味覚以外にも、食べる時のスプーンの役割も果たしています。人の舌との大きな違いとして、猫の舌の特徴でもある『ザリザリ』が挙げられます。あの舌で手を舐められると次第に痛くなると思いますが、このザリザリは食べる時や飲む時に必要不可欠な糸状乳頭(しじょうにゅうとう)と呼ばれているのものなのです。
この舌で野生時代には獲物の肉を骨から削ぎ、現在はウェットフードを器用にすくい、飲み水を飲む時のスプーン代わりに使って喉を潤しているので、猫にはザリザリの舌が無いと、とても不便なのです。
また、猫の味覚は人よりも疎いですが、美味しい飲み水を選別する能力には長けているそうです。これは熱帯の乾燥地帯で生活していた時、貴重な水を探すために身に付けた能力で、あまり水分を摂らない猫がシンクや洗面台から流れる水を好んだり、循環タイプの水や陶器やコップの水を好むのは、水が貴重だったからこそ趣向が高くなったのかもしれません。また、ブラッシングする時にも猫の舌は大活躍します。ザリザリの猫の舌は一年中毛の抜ける猫にとって、無くては困る機能ですね。
③猫の舌と「猫舌」
熱い食べ物が苦手な人に「猫舌だね!」と言うことがあります。この言葉から猫=熱いものが苦手と判断できますが、猫の舌は本当に熱いものが苦手なのでしょうか?
答えは、苦手と言うよりは危険だから食べないといった方が正しいかもしれません。そもそも、火を使ってアツアツの料理を食べることは、猫に限らず人以外の動物には不自然なことです。自分たちの体温以上の食べ物を危険だと判断して、口にしないのが1番の理由だと思います。普段経験の無いことに警戒するのが動物界では当たり前なので、食べたことのない熱さを口にした時、不慣れで驚き逃げるのは当たり前なのです。そういった意味では熱いもの=苦手も正しいでしょう。
猫の舌のまとめ
最近舌をしまい忘れている猫が話題になりました。この猫の舌しまい忘れですが、本当にリラックスをしていてしまい忘れている時と、そうでない時があります。
- 顎が小さく舌が長いので、しまい切れない場合
- 牙や歯が無い場合
- 歳を取り、舌の筋力が低下して出ている場合
- 疾患がある場合
上に記載してあるようなことで猫の舌が出てしまうことがありますが、疾患があること以外で舌が出ている場合は、特に大きな問題はありません。猫の唾液には細菌が多いので、逆に舌が出ていることで菌の繁殖が低減される場合もあります。ただし、舌や口が傷ついていたり、病気等の疾患を疑う場合は、危険な状況かもしれません。いち早く病院へ連れて行きましょう。
猫の舌には人と違う部分がたくさんあり、まだまだその生態への興味も多くあります。猫と共に寄り添って生活をすることで、たくさんの新しい発見ができそうです。