母猫の妊娠の過程
猫の発情期は冬から春と春から夏の年2回です。猫は交尾をすることで排卵するので交尾をすれば高い確率で妊娠する、非常に繁殖能力に長けた生き物です。
母猫の妊娠期間は60~68日で、妊娠20日頃から乳房がピンク色になりその後食欲が落ちるつわりのような症状が出ます。妊娠30日頃にお腹が大きくなり乳房が張ってきて、妊娠45日頃からは食欲旺盛になり活動量が低下します。分娩2~3日前になると母乳が出てくるようになり、出産24時間前には食欲が急激に低下します。
また猫には “異期複妊娠”という驚きの妊娠があります。これは妊娠中の母猫が雄猫と交尾すると、父猫が異なる子猫を同時に妊娠するというものです。同じ母猫から、父猫が全て異なる子猫が1度の出産で5匹生まれたという事例もあるそうです。
母猫の出産
出産直前になると、母猫は警戒心が強くなり攻撃的になります。乳房や陰部をしきりに舐めたり、落ち着きなく床や巣を掘り返すような行動をとったり、排便の姿勢をとったりするようになります。いよいよ出産です。
母猫は1度に1~9匹の子猫を生みます。もちろんこれ以上生むこともあります。陣痛が12秒~90分続き、15~30分間隔で次々と子猫を生みます。母猫は、生まれたばかりの子猫の鼻先を舐めて呼吸を促し、へその緒を噛み切ります。出てきた胎盤は母猫が栄養補給を兼ねて食べます。
しかし、全ての子猫が無事に生まれてくるわけではありません。妊娠の途中で、母猫の中で子猫が死んでしまう流産や、妊娠60日以前に子猫を生んでしまう早産というケースもあります。早産した子猫は高い確率で死産、仮に生きて出産できても間もなく死んでしまうことがほとんどです。
母猫の子育て中の行動
母猫の子育て
母猫が出産後に見せる子猫の世話などの行動は、母猫のホルモンの働きによるものと考えられています。具体的には以下のような行動が見られます。
- 子猫の傍にいる
- 子猫への授乳
- 子猫を舐める
- 子猫の排泄を促す
- 子猫を巣へ連れ戻す
- 子猫を連れて引っ越す
- 攻撃的になる
- 他の子でも育てる
- 子猫に親離れさせる
- その他、母猫の異常な行動
子猫の傍にいる
出産を終えてからの数日間、母猫は子猫の傍を何時間も離れることはありません。これは、まだ体温調節を上手にすることができない子猫が低体温になるのを防ぐためです。子猫は生後3週間ほどで体温調節をすることができるようになります。
子猫への授乳
産後しばらくの間の母猫は、ほとんどの時間を子猫と過ごし、その多くの時間を授乳に費やします。産後10日目くらいまでは、免疫力を高める抗体などが豊富な初乳と呼ばれる母乳が出ます。この母乳を飲ませることで子猫は病気に強くなります。またこの期間の母猫は、子猫に母乳を与えるために多くの栄養が必要となり、産後2~3日で食欲が産前の2倍になります。
母猫が子猫を舐める意味
母猫に舐められた子猫は心拍や血圧が安定し、腸の働きがよくなり成長が促されるという説があります。また、子猫の頭を舐めて乳房へ誘導したりもします。
子猫の排泄を促す
母猫は子猫の陰部やおしりを舐めて排泄を促します。排泄物は母猫がきれいに舐め取ります。
子猫を巣へ連れ戻す
子猫が成長し動けるようになってくると、巣から出て行ってしまうことがあります。母猫は子猫の首のあたりをくわえて巣に引きずり連れ戻します。
子猫を連れて引っ越す
母猫は子猫を外敵から守るため、産後何度か巣を変えます。
攻撃的になる
母猫は外敵から子猫を守るために鳴き声をあげて攻撃的になります。特に雄猫は子猫を殺してしまうことがあるので、母猫は雄猫に対して攻撃的になります。この場合威嚇ではなく本当に攻撃を仕掛けます。
他の子でも育てる
出産後1週間くらいまでの母猫は、他の動物の子であっても受け入れて育てることがあります。猫は1度で多くの子を産み、その1匹1匹を見分けることをしないので、同じくらいの大きさの子であれば例え猫でなくても、本当の子のようにお世話してあげることがあります。
子猫に親離れさせる
出産後3か月、長ければ半年ほどで母猫は、子猫を威嚇し追い払おうとします。こうして親離れさせるのです。
その他、母猫の異常な行動
育児を一生懸命にこなす母猫がいる一方で、異常な行動をみせる母猫もいます。例えば育児放棄です。人間への過剰な愛着、ストレス、他の猫との接触不足、他の猫の出産を見たことがなく子育ての仕方が分からないなどの理由から子育てをしなくなることがあります。
さらに、自らが生んだ子猫を殺したり食べたりすることもあります。ストレスや母猫の栄養不足、獲物と勘違いする、ホルモンによる攻撃性の増加などが原因と考えられます。
母猫になった際に気をつけてあげたい点
もし飼い猫が妊娠したら、妊娠中から出産、産後にかけて注意したり、時には獣医師に相談したり診てもらわなくてはいけない場合があります。それぞれ見ていきましょう。
妊娠中
妊娠中の母猫は食欲がなくなる時期がありますが、極端に体重が減っていく場合は獣医師に相談した方がよいでしょう。
出産時
飼い猫がもし出産を迎えたら、人はできるだけ介入しないようにします。介入が原因で、母猫が育児放棄になることがあるからです。しかし、以下のようなことがあれば、母猫に異常が起きている可能性があるので、獣医師に相談するようにします。
出産時に、悪臭を放つ黄色や茶色の分泌液が出ている場合は感染症の疑いがあります。通常は透明の分泌液が出ます。また、陣痛が起きて60分以上経っても生まれてくる気配がない場合は難産です。子猫が成長し過ぎている、母猫の骨盤が小さく子猫が出てこられないなどの場合があります。
出産時の大量出血や、頭が出ているのに5分以上そのまま留まっている場合は問題が起きた可能性があります。その他にも、出産を終え、生まれた子猫と胎盤の数が合わない場合は、母猫の体内に胎盤が残っている胎盤停滞の可能性があり、子宮感染の原因になります。
産後
産後の母猫は、とても神経質になっています。もし飼い猫が子育てをしているなら、あまりのぞき込んだり干渉したりせずにそっとしておいてあげるようにします。しかし、産後の母猫には以下のような病気にかかることがあります。症状が見られた時は獣医師に相談します。
- 産褥熱(さんじょくねつ)
- 子癇(しかん)
- 子宮内膜炎
- 子宮蓄膿症
- 乳腺炎
産褥熱(さんじょくねつ)
出産時に子宮や膣内にできた傷から細菌感染し高熱が出ることがあります。元気がなく、子猫の世話もしないようなら注意が必要です。
子癇(しかん)
妊娠や授乳によるカルシウム不足が原因で痙攣、震え、発熱などの症状が見られます。
子宮内膜炎
産後の子宮が修復されず、細菌に感染したことが原因で、腹部を痛がる、微熱、膣から濃緑色の分泌液が出る、不正出血が続くなどの症状が見られます。
子宮蓄膿症
子宮内膜炎が進行し子宮内に膿が溜まっている状態で、さらに重症化すると子宮が腫れてしまいます。お腹が膨れている、陰部から膿が出ている、水を大量に飲むなどの症状があります。
乳腺炎
乳房の中に残った母乳で、乳房の中で炎症が起きる病気です。乳房の腫れやしこり、発熱、授乳を嫌がるなどの症状が見られます。
まとめ
妊娠から出産、子育てまで、母猫が新しい命を育む過程を紹介させていただきました。母猫の頑張りには心打たれるものがあります。しかし、猫は上記でもある通り、非常に繁殖能力の高い生き物です。
もし猫を飼っているご家庭で、飼い猫が出産しても、子猫を自分の家庭で面倒見たり、もらい先を見つけることができなかったりする場合、飼い猫がどんどん出産してしまうのは、社会問題にもなる危険なことです。必要に応じて避妊手術などの対応をお願いしたいと思います。
50代以上 女性 ごじちゃん
何匹か出産させましたが、お産のときに呼ばれたのはそれが初めてです。中には人間的とも思えるほど感情豊かな猫がいますが、この猫もそのタイプでした。赤ん坊の頃に捨てられていたのを、学校帰りにひろってきたのが娘です。それ以来、毎日一緒にいたので、もはやその猫にとって娘が母親のようなものだったのでしょう。
人間をそんなに信頼しているのに、子猫が育つと3度引っ越しされました。どこにどう隠すのか、しばらく子猫の姿が行方不明になって、心配させられたものです。
猫はあっという間に大人になるので、油断すると避妊手術の前に妊娠してしまいます。産ませられる環境だといいですが、望まない妊娠は可哀想だと思います。この猫も失敗して妊娠させてしまいましたが、無事に育てられたことは救いでした。
20代 女性 ユキ
20代 女性 UMI
愛猫から産まれた小さな命ならそれはそれは可愛いでしょうが、我が家は猫をこれ以上増やす訳にはいかないので避妊手術しましたが、もし経済的にも時間的にも余裕があるなら是非愛猫の妊娠、出産に立ち会い子猫達と一緒に暮らしてみたいです。新たに産まれる大切な命に対して一生責任を取れる覚悟があるならですが。
20代 女性 レオ
女性 ひなママ
猫の妊娠率はかなり高いことで知られていますが、1度に1~9匹も生まれるとなれば、猫の多頭飼育問題が大きく広がっていることも、とても理解できますね。
メス猫が2匹、オス猫が1匹の、計3匹飼育していたとしても、すべての猫が避妊去勢手術を受けていないとなれば、猫は出産後早ければ3か月でまた発情が可能といわれていますから、軽く計算してみると・・・
1月に2匹のメス猫が9匹ずつ出産したとして、その3か月後に又妊娠したとしましょう。そしてまた2か月の妊娠期間を経て、更に9匹ずつ出産。そしてその3か月後の発情を迎え、また2か月後に9匹ずつ出産したとしたら・・・、1年で生まれてくる子猫の数は、何と54匹!
単純計算、そして胎児の数もMAXでの計算なので、さすがにここまでになることはめったに無くても、これだけ増える可能性があるということですから、猫を多頭飼育する場合、どれだけ避妊去勢手術が大切かが分かります。
女性 チセ
何が凄いって、母猫はそれを誰の手も借りずたった一人でやり遂げるところです。ほぼ不眠不休で子猫達をお世話し、野良なら外敵から我が子を守り、愛情いっぱいに子猫達を育てるんですから本当に凄いですね。どんな種族でも母は強いですね。
40代 女性 しおり
妊娠がわかったときにはとても、嬉しかったです。仲のいい夫婦猫ですので、いつか可愛い子猫ちゃんが授かれば嬉しいなと思っていたのです。
妊娠がわかってから、出産まではあっという間でした。小さな子猫が6匹無事に産まれましたが、生まれてすぐに1匹は亡くなってしまいました。他の子猫ちゃんは、すくすく育ちました。母乳をゴクゴク飲んでいました。
母猫も、初めての出産でしたが放棄することなく育児を頑張ってくれました。出産を手伝ったのと、生れたての子猫を暖めることは手伝いましたが、あとは見守ってやるだけで大丈夫でした。何より、母体も子猫も無事で何よりでした。こちらも、出産に立ち会うのが初めてだったので不安でしたがその不安が母猫に伝わらないように気をつけていました。いまとなっては、当時の母猫は、高齢になりましたが、今でも残った1匹の自分の子供とも仲良く過ごしています。
40代 女性 のりこ