猫の妊娠期間について
猫の妊娠期間は約2ヶ月程度で、個体差はあるものの65日前後であることが多いようです。人間の妊娠期間は約10ヶ月であることに比べると短い期間のようにも感じますが、人間の妊娠と同様に母猫は様々なリスクを背負い、命がけでお腹に宿った命を育てます。
ちなみに、人間と猫の妊娠において大きな違いは「排卵」にあります。人間も含めて殆どの動物は、性行為の有無に関わらず自然に排卵が誘発される「自然排卵動物」に分類されます。しかし、猫の場合は交尾によって卵巣が刺激されることによって排卵が誘発される「交尾排卵動物」に分類されます。このようなシステムによって、猫の妊娠確率は格段に上がり、効率的に子孫を残すことができるのです。また、猫は出産後約2ヶ月程度で妊娠が可能になるため、多ければ年間4回程度の妊娠出産を繰り返すことも可能となります。
猫の妊娠期間における兆候
猫の妊娠期間における兆候は人間同様、妊娠周期によって徐々に現れます。
猫の妊娠期間における兆候①妊娠20日頃
猫は妊娠20日頃になると、1週間前後の食欲低下がみられることが多いようです。個体差はあるものの、食の好みが変わったり、嘔吐をしたりと悪阻(つわり)のような症状が現れる場合もあります。また、この頃になると乳首がぷっくりと膨らみ、赤やピンクっぽい色に変わり始めます。これは妊娠の証ともいわれる「ピンキングアップ」で、普段はどこにあるかよく分からない猫の乳首が簡単に目視できるようになります。
猫の妊娠期間における兆候②妊娠30日頃
猫は妊娠30日頃になると、乳房やお腹の膨らみが分かるようになってきます。この時点で、猫の妊娠に気付く飼い主さんも多いようです。
猫の妊娠期間における兆候③45日頃
猫は妊娠45日頃になると、食欲が増加するのに対して活動量が減るため、体重が増加し始めます。猫も妊娠期間中は、一度にたくさんの量を食べられなくなる場合もありますので、自動給餌器などを利用するのもいいかもしれません。食事量については、少な過ぎでも多過ぎてもいけませんので、かかりつけ医としっかり相談しましょう。
猫の妊娠期間における兆候④妊娠50日頃
猫は妊娠50日頃になると、胎動を感じることができるようです。お腹の膨らみもはっきり分かるようになり、丸まるとした印象になります。
猫の妊娠期間における兆候⑤妊娠60日頃
妊娠60日頃、つまり出産が近づくと母乳が出るようになり、食欲が激減します。また、営巣行動と呼ばれる巣を掘り返す、床をかくなどの行動や、陰部や乳房のグルーミングが増える、排便の姿勢をとるなどの兆候が現れ、警戒心が強くなり、そわそわと落ち着かないことも多いようです。出産をするための安全な場所を探すためにウロウロと探索することもありますので、猫のニオイがついた安心できる場所を作ってあげるといいですね。
猫の妊娠期間でのケア
猫の妊娠期間にできるケアについてご紹介します。
猫の妊娠期間でのケア①獣医師との連携
まず、猫の妊娠が疑われる場合は必ず動物病院を受診しましょう。人間同様、猫の妊娠出産にも様々なリスクが伴います。猫の妊娠中は、食生活にも気を配らなければいけませんし、妊娠中服用してはいけない薬などもあります。動物病院での妊娠確定、妊娠週数の確認などと同時に、今後の生活や出産に向けての準備などについて獣医師の指示を仰ぎましょう。何か異変を感じた場合に、信頼できる獣医師といつでも連携をとれるよう、前もって準備しておくことが大切です。
猫の妊娠期間でのケア②安全な環境づくり
猫も妊娠中は普段のように高い場所に飛び登ったり、狭い場所に入り込むとお腹に負担が掛かる可能性があります。妊娠期間中は動くのが億劫になる場合もありますので、なるべく移動せずにトイレや食事などができるよう工夫してあげましょう。
また、猫の性格にもよりますが妊娠期間中は警戒心が強くなり、イライラすることも増えるため、なるべく人の出入りが少ない静かな場所に安心して過ごせる場所を作りましょう。なかには、常に飼い主が見えないと安心できず、大きなお腹を抱えて飼い主について歩く場合もありますので、そんな時は飼い主が視界に入る場所に寝床を作ってあげるのもいいかもしれません。
妊娠直前になり、営巣行動が見られるようになった場合はなるべく薄暗い場所に新聞紙やタオルなどを敷き、安心して出産できる場所を作ってあげてください。稀なケースではあると思いますが、出産用に用意した寝床は全く使用せずに、私の布団の上で出産した猫が居ました。何度寝床に戻しても追いかけて出てきてしまうので、結局いつも私と猫が寝ていた布団の上に新聞紙とタオルを敷き、出産に立ち会ったことがあります。自分や飼い主のニオイがついていないと安心できない、飼い主の側でないと安心できないという猫も居ますので、猫の性格や妊娠期間中の様子をしっかり観察して臨機応変に対応できるよう準備しておきましょう。
猫の妊娠期間でのケア③高栄養な食事
猫も人間同様、妊娠中の食事には普段よりも気を配らなければなりません。妊娠期間中、お腹の中で元気な子猫を育てるためにも、出産へ向けて体力をつけるためにも、普段の2倍近い栄養が必要となりますので、妊娠中の猫の食事は、妊娠・授乳期用の高栄養、高カロリーなフードを選ぶようにしましょう。妊娠中や授乳期の猫のフードは、子猫用と同じになっている場合も多く、いつも食べさせているフードの子猫用を利用する飼い主も多いようです。
妊娠初期や妊娠直前などに食欲が落ちたり、一度にたくさんの量を食べられなかったりする場合もありますので、食事回数を増やしたり、食べたい時に食べられるように自動給餌器を利用するなどの工夫も必要です。また、妊娠期間中は水分摂取もとても重要なので、普段より水分摂取量が少ない場合や、便秘が続く場合は子猫用のウェットフードを利用するのもいいかもしれません。
体重が増加しすぎると難産になりますので、太りすぎないように注意してください。
猫の妊娠期間でのケア④完全室内飼いの徹底
猫の妊娠期間でのケアとして、完全室内飼いを徹底することがとても大切です。猫は、妊娠中であっても交尾を行うことで「異期複妊娠(いきふくにんしん)」が成立する可能性があります。異期複妊娠とは、その名の通り異なる時期に複数の妊娠が成立してしまう現象です。この異期複妊娠は、自然界では多く起こりうることでもありますが、母体に負担が掛かるため、出産後に母猫が死亡してしまう可能性もあります。また、様々な感染症のリスクもありますので、妊娠中は特に完全室内飼いの徹底を意識しておきましょう。
猫の妊娠期間でのケア⑤猫の妊娠出産の知識を蓄える
猫の妊娠期間にできるケアは、食生活や生活環境などに気を配ることだけではありません。猫は妊娠中に流産や早産、胎子の吸収などが起こる可能性があります。猫の妊娠中に伴うリスクや、引き起こされる可能性がある事態などについてもしっかりと知識を蓄えておくことで、いざという時に冷静に対処できるよう準備しておきましょう。妊娠期間中の母猫とお腹の中の子猫を守るためにも、知識を蓄えておいて損はありません。
まとめ
猫の妊娠期間と兆候、その間のケアについてご紹介しました。猫の妊娠期間は2ヶ月前後と、人間の妊娠期間に比べれば短いものではありますが、伴うリスクは同じです。逆に言えば、ゆっくり準備をしている時間がありません。お腹の子猫はもちろん、母猫が健康に安心して出産ができるよう、出来る限りのケアをしてあげたいですね。