【獣医師監修】猫はブリ(鰤)を食べても大丈夫!与える際の注意点と正しい調理法、適量から栄養素の効果まで解説

【獣医師監修】猫はブリ(鰤)を食べても大丈夫!与える際の注意点と正しい調理法、適量から栄養素の効果まで解説

猫にブリを与えても大丈夫?少量ならOKですが、与え方には注意が必要です。ブリの栄養効果から、危険な骨・アニサキスの注意点、刺身のリスク、安全な加熱調理法、1日の適量まで詳しく解説。愛猫に与える前に必ずご確認ください。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫はブリ(鰤)を食べても大丈夫?

床に置かれた食器の前に座っている猫

結論からお伝えすると、ブリ(鰤)は猫に与えても問題ない食材です。

ただし、与え方や量にはいくつかの注意点があり、それを守ることが愛猫の健康を守る上で非常に重要になります。

ブリは栄養価が高い魚ですが、正しい知識を持って安全に与えるようにしましょう。この記事では、ブリの栄養素から具体的な与え方、注意点まで詳しく解説します。

ブリ(鰤)の栄養素と猫への健康効果

ざるに盛られたブリの切り身

ブリには、猫の健康維持に役立つ優れた栄養素が豊富に含まれています。特に注目すべき成分を知ることで、愛猫の健康管理に活かすことができます。

DHA・EPA

DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、オメガ3脂肪酸に分類される栄養素です。これらは猫の体内ではほとんど作ることができないため、食事から摂取する必要があります。

DHAやEPAには、関節の炎症を抑える働きや、心臓や腎臓の機能を保護する作用があります。また、皮膚や被毛の健康をサポートし、美しい毛並みを保つ助けにもなります。特にシニア期の猫の脳機能の維持にも役立つと言われています。

タウリン

タウリンは、猫にとって非常に重要な必須アミノ酸の一種です。必須アミノ酸とは、体内で合成できず、必ず食事から摂取しなければならない栄養素のことを指します。

タウリンは、心臓の筋肉が正常に働くためや、目の網膜の健康を維持するために不可欠です。不足すると、心筋症や網膜の萎縮といった深刻な病気を引き起こす可能性があります。キャットフードにも必ず添加されている重要な成分です。

ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を助ける働きがあり、健康な骨や歯を維持するために欠かせない栄養素です。人間は日光を浴びることで体内でビタミンDを生成できますが、猫はその能力が非常に低いため、食事から摂取することが重要です。

ビタミンDが不足すると、骨の成長に影響が出ることがあります。「総合栄養食」と記載があるキャットフードを食べていれば不足することはありませんが、ブリのような魚から適度に摂取することは、猫の骨格の健康維持に繋がります。

ただし、過剰に摂取しすぎると、特に子猫で骨の異常を引き起こすリスクもあるため、注意が必要です。

猫にブリ(鰤)を与える際の注意点

飼い主になでられながら毛布の上で休んでいる猫

栄養豊富なブリですが、与える際にはいくつかの注意点があります。愛猫の安全のために、以下の点を必ず守ってください。

骨に注意

魚の骨は、猫の喉や食道、胃などの消化器官に刺さる危険性があり、非常に危険です。ブリを与える際は、どんなに小さな骨でも完全に取り除いてください。

加熱したブリの身を丁寧にほぐし、指で触って骨が残っていないか、念入りに確認してから与えるようにしましょう。

味付けしない

人間用に調理されたブリは、猫に与えないでください。塩焼きや照り焼き、煮付けなどに使われる塩、醤油、砂糖などの調味料は、猫にとっては塩分や糖分の過剰摂取に繋がります。

塩分の摂りすぎは、腎臓や心臓に大きな負担をかける原因となります。猫にブリを与える際は、必ず味付けをせず、素材そのものを加熱して与えるようにしてください。

アレルギーに注意

猫にも、人間と同じように食物アレルギーがあります。ブリを含む魚介類にアレルギー反応を示す猫もいます。

初めてブリを与える際は、ごく少量から始めましょう。与えた後は、嘔吐や下痢、皮膚のかゆみ、目の充血などのアレルギー症状が出ないか、数時間から1日程度は様子をよく観察することが大切です。

与え過ぎない

ブリは脂質が多く、カロリーが高い魚です。そのため、与えすぎは肥満の原因になったり、消化不良による下痢や嘔吐を引き起こしたりする可能性があります。

また、ブリなどの青魚を頻繁にたくさん食べすぎると、体内に脂肪が蓄積し、その脂肪が酸化(サビつき)して炎症を引き起こす「黄色脂肪症」になるリスクも存在します。

ブリはあくまで主食のキャットフードのトッピングやおやつとして、少量に留めることが重要です。総合栄養食のキャットフードを基本として、食事のバランスを崩さないように配慮しましょう。

アニサキスに注意

アニサキスは、魚介類に寄生する寄生虫の一種です。生きたアニサキスを摂取すると、激しい腹痛や嘔吐を引き起こすアニサキス症になる可能性があります。

アニサキスは、ブリの内臓や筋肉に潜んでいることがあります。この寄生虫は加熱または冷凍することで死滅するため、生の状態でブリを与えるのは非常に危険です。必ず十分に加熱調理してから与えましょう。

ヒスタミン食中毒に注意

ブリのような赤身魚は、常温で放置するなど鮮度が落ちると、ヒスタミンという化学物質が生成されやすくなります。このヒスタミンを多く含む魚を食べると、ヒスタミン食中毒を引き起こすことがあります。

症状としては、嘔吐、下痢、顔の腫れなどが見られます。猫に与える場合は、必ず人間が食べられる新鮮なブリを選び、購入後はすぐに冷蔵庫で保管し、早めに調理するようにしてください。

猫にブリ(鰤)を食べさせる際の与え方・調理法

フライパンでブリの切り身を焼いている様子

猫に安全にブリを与えるためには、適切な調理法を選ぶことが大切です。以下の方法を参考にしてください。

茹でる

最も安全で簡単な調理法が「茹でる」ことです。鍋に水と骨を取り除いたブリの切り身を入れ、味付けは一切せずに火にかけます。

しっかりと火が通ったら、お湯から取り出して人肌程度まで冷まします。その後、食べやすいように細かく身をほぐしてから与えましょう。

茹で汁にもブリの旨味や栄養が溶け出していますが、与える場合は少量にしてください。

蒸し焼きにする

フライパンに少量の水を入れ、蓋をして蒸し焼きにする方法もおすすめです。この調理法は、ブリの風味や栄養を逃しにくいというメリットがあります。

調理の際に油は絶対に使用しないでください。茹でる場合と同様に、十分に加熱し、骨がないことを確認してから、冷ましてほぐして与えます。

焼く

焼く場合は、グリルやフライパンで塩などを振らずに「素焼き」にします。油も使わないようにしましょう。

表面が焦げてしまった場合は、その部分は取り除いて与えないようにしてください。中までしっかりと火を通し、骨を取り除いてから与えるという基本は他の調理法と同じです。

刺し身(注意点あり)

生のブリ、つまり刺し身は、アニサキスや細菌による食中毒のリスクがあるため、基本的には推奨されません。また、生の魚に含まれるチアミナーゼを多量に摂取すると、体内のビタミンB1(チアミン)を分解して、チアミン欠乏症を引き起こす可能性もあります。

アニサキスや細菌、チアミナーゼは、熱が加わると死滅・失活するため、加熱調理が最も安全な与え方です。どうしても与えたい場合は、人間用の非常に新鮮な刺し身を、ごく少量だけに留めてください。

また、一度冷凍処理されたものであればアニサキスのリスクは低減しますが、細菌のリスクは残ります。愛猫の安全を最優先に考え、加熱することを強くお勧めします。

猫にブリ(鰤)を食べさせる際の適量

食器の前で鳴きながらフードを待っている猫

ブリをおやつやトッピングとして与える際の適量は、1日の総摂取カロリーの10%以内が目安とされています。

例えば、体重4kgの成猫の1日に必要な最低限のカロリーは約200kcalです。その10%は20kcalとなります。

天然ブリのカロリーは100gあたり約222kcalなので、20kcalに相当するブリの量はおよそ9gです。これは、刺し身の薄い切り身1枚に満たないくらいの量です。

必要カロリーは体格・活動量・避妊去勢の有無で異なりますが、与えすぎは肥満や健康を害する原因になりますので、必ず適量を守るようにしましょう。初めて与える際は、この目安量よりもさらに少ない量から試すことが大切です。

まとめ

食器からフードを食べている猫

ブリは、DHAやEPA、タウリンといった猫の健康に良い栄養素を含む食材です。しかし、安全に与えるためには、必ず「十分に加熱する」「骨を完全に取り除く」「味付けをしない」「少量に留める」というルールを守る必要があります。

特に、生の状態で与えることは寄生虫や食中毒のリスクがあるため避けましょう。これらの注意点をしっかりと守り、愛猫との食事の時間をより豊かで楽しいものにしてください。