猫の肛門が赤い時に考えられる病気と治療法

猫の肛門が赤い時に考えられる病気と治療法

猫の肛門まわりが赤い時には、飼い主さんはどうしたら良いでしょうか。猫の肛門やその周りが赤い時に考えられる猫の病気と、その治療法についてご紹介します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の肛門が赤い時の病気

草むらを走る子猫のおしり

猫の肛門が赤いと飼い主さんとしてはとても心配ですよね。今回は猫の肛門が赤い時に考えられる病気についてご紹介してきます。

胃腸炎

猫の胃腸炎とは、胃から腸にかけての粘膜に炎症が起こり、下痢や嘔吐などをする病気です。下痢のしすぎで猫の肛門が赤いという事があります。

トキソプラズマ

猫のトキソプラズマ症とは、トキソプラズマという寄生虫に感染する病気です。トキソプラズマに感染した場合には、消化器系に異常が現れることで、下痢になり、血便が出て、肛門周りが赤い色になります。

熱中症

猫が熱中症になった時にも、発熱や嘔吐、下痢といった症状に加えて、血便や血尿をし猫の肛門が赤いという事があります。熱中症になると、体温が上がって体の熱を逃がすことができなくなっているために、症状が悪化すると呼吸器系や神経系に異常が起きて、吐血や血便が起こります。

切れ痔

猫の肛門が赤い時に多いのが切れ痔です。切れ痔は直腸に傷や炎症ができているために出血して、便に血が混ざって赤い血便となります。

猫の肛門嚢炎

猫の肛門嚢炎とは、肛門嚢という袋状の器官に赤い炎症が起きた状態のことです。猫の肛門周りが赤い、腫れて膨らんでいる、といった状態になります。

猫の肛門腺癌

猫の肛門が赤い原因として肛門嚢炎と似た病気で、肛門腺癌というものもあります。肛門嚢にできる腫瘍で、猫では極めて稀なものとされています。肛門腺癌が発見された時にはすでにリンパ節に転移していることも多く、命に関わることが多い病気です。

猫の膀胱炎

細菌や真菌などに感染したり、尿結晶が原因で膀胱粘膜が傷ついたりすることで、猫の膀胱に炎症が起こる病気です。膀胱炎がひどくなると血尿が出たりするため、肛門まわりが赤いように見えることがあります。

猫の子宮蓄膿症

猫の子宮蓄膿症とは、メス猫の子宮に細菌が感染して炎症が起こり、子宮の中に膿がたまってしまう病気です。外陰部から出血するので、お腹や後ろ足、肛門まわりが赤くなり、肛門も赤いように見えることがあります。

猫の肛門が赤い時の病気の症状

おもちゃで遊ぶ子猫のおしり

胃腸炎

肛門が赤いように見える時には、胃腸炎になり、下痢や嘔吐などが見られ、血便をしていることもあります。

嘔吐が繰り返されるようになると、吐き気があるため食欲も減り、少量の水を飲んでも吐いてしまうこともあります。そして腸炎が悪化すると下痢の症状がひどくなり、便が大量に出たり、何度も便をしたりします。便の形状は様々ですが、水のような便やタールのような便、血便をすることがあります。

猫パルボウイルス感染症

猫パルボウイルス感染症が原因で腸炎が起こると、嘔吐のほか、激しい下痢や血便が見られます。このため肛門や便が赤いように見えます。

そうすると脱水になってしまうだけでなく、血液中の白血球が減少してしまい、免疫力が低下するので、こちらも猫の命に関わる場合があります。

猫パルボウイルス感染症は成猫では症状が出ない時もありますが、子猫が感染すると発熱して激しい下痢や嘔吐により、死亡してしまうことが多くあります。

トキソプラズマ

トキソプラズマの症状としては、感染したのが成猫の場合であれば、一過性の下痢のみでその後は症状が出ないこともあります。ただし、子猫や老猫、また免疫力の弱った猫が感染した場合には、下痢、嘔吐などの症状が出て、血便のために肛門が赤いように見えることもあります。

神経症状や呼吸器の症状が出てくる場合もあり、命にかかわることもあります。

熱中症

猫が熱中症になった時にも、発熱や嘔吐、下痢といった症状に加えて、血便や血尿をすることがあります。このため肛門周りや下腹部などが赤いように見えることがあります。

猫の具体的な症状としては、口を開けてハァハァと呼吸したり、よだれを垂れ流したりします。ひどい場合にはショック症状を起こして、猫の命に関わる場合もあります。

食中毒

また、食中毒や他の病気の影響で、下痢になったり便秘になったりしたことで、便中の細菌が肛門周囲につき炎症を起こし肛門が赤く見えることがあります。

便秘

便秘の場合は水分不足や毛玉や異物の飲み込みなどが考えられます。便秘になると排便時にいきむために肛門周囲が切れてしまったり、少し脱腸を起こしてしまう可能性があります。そのため、肛門が赤く見えてしまうこともあります。

肛門腺癌の症状

肛門の周囲が、腫瘍のために、赤い色になり腫れて膨らんできます。腫瘍があるため、便がうまく出せなかったり、便の形が平たくリボン状になったりします。水をたくさん飲み、おしっこの量が増えることもあります。食欲が落ちて元気がなくなって来ます。悪化すると、肛門や、その周囲から赤い血のようなものが出てきます。痛みや違和感のために、歩き方がおかしくなったり、触られるのを嫌がったりするなどの症状もあります。

肛門嚢炎の症状

肛門嚢に炎症が起きるので、肛門の周りが赤い、肛門嚢が腫れる、といった症状が出ます。具体的な症状としては、次のようなものがあげられます。

  • 肛門まわりが赤い
  • お尻を気にする(なめる、お尻をこすりつけるなど)
  • 元気がない
  • 熱がある
  • 食欲がない

進行すると肛門嚢が破れてしまったり肛門の近くに傷ができたりして、膿がもれてしまうことがあります。

膀胱炎の症状

猫が膀胱炎になると、血尿で陰部が汚れるので、肛門が赤いように見えることもあります。

猫がトイレに何度も行く、排尿時に痛がって鳴く、トイレに行ったのにおしっこが出ていない、おしっこの色がおかしいなどの症状が出ます。血尿が出ていれば、猫トイレを見た時に、おしっこが赤いか、赤褐色になっています。

子宮蓄膿症の症状

猫の子宮蓄膿症の症状としては、陰部から血の混じったおりものが出るほか、発熱したり、食欲がなくなったり、下痢や嘔吐がみられたりします。血の混じったおりものが出た場合には、悪臭がして、おしりや後ろ足までもおりものや膿で赤い色に汚れてしまうこともあります。

猫の肛門が赤い時の病気の治療法

診察される子猫

胃腸炎

胃腸炎の治療では、下痢と嘔吐を止めることが先決です。整腸剤や吐き気止めを与えるといった対症療法や、脱水症状を改善するために輸液療法を行います。また、胃腸を休めるために絶食を必要な期間だけ行い、処方された消化しやすい食事を少量ずつ与えて回復をはかるといった治療が行われる場合もあります。

猫パルボウイルス

猫パルボウイルスなどの感染症が原因の腸炎の時には、猫パルボウイルスに直接効果のある薬剤はないので対処療法を行って、さらに二次感染予防するために抗生剤を投与することもあります。

トキソプラズマ症

トキソプラズマ症の治療としては、下痢や発熱、血便に対する治療を行うほか、抗菌薬を使って治療します。また、トキソプラズマは、人間や他の動物にも感染する人獣共通感染症のため、しっかりと治療する必要があります。トキソプラズマ症の予防のためには、猫を完全室内飼いして土などに触れないようにし、生肉を与えないようにしてください。

熱中症

熱中症の症状が見られたら、霧吹きで水をかけたりタオルで巻いた氷を脇にあてがったりするなどして猫の体を冷やしながら、できるだけ早く動物病院に連れて行き、適切な処置を受ける必要があります。治療法としては、脱水症状があれば点滴をします。その他、症状が見られればそれぞれに対処療法をします。

切れ痔

切れ痔の治療法としては、原因となる下痢または便秘を治すことと、傷がひどければ傷の治療をするということになります。状態によっては絶食をしたり、点滴をしたり、別の病気が原因であればそちらの治療をしたりします。

肛門腺癌の治療法

猫が肛門腺癌になった場合の治療法として、外科的な治療が推奨されており、可能であれば放射線治療や化学療法が行われることもあります。外科手術や放射線治療をしても、完治しないこともあります。また放射線治療は、設備がある病院がまだまだ限られているために選択が難しい場合もあると言えます。できるだけ早く動物病院で腫瘍を発見してもらえるように、猫の肛門が赤いかどうか見るだけでなく、体調の少しの異常でも飼い主さんが気づいてあげられるようにしたいものです。

肛門嚢炎の治療法

肛門嚢炎の治療法としては、まず炎症や感染を抑えるため、抗生剤や抗炎症剤を飲ませたり傷の部分に塗ったりします。さらに肛門嚢を絞って分泌物を出したり、肛門嚢の内部にカテーテルを入れて洗浄したりするなどして分泌物を排出させ、消毒をします。

肛門嚢を絞って分泌物を出す肛門絞りは、猫の場合には特に必要ありません。以前、肛門嚢炎になったことがあるとか、老猫などで括約筋が弱っている猫で必要がある場合にだけ、肛門絞りをします。肛門周りが赤いとか、とても腫れている場合には、飼い主さんは肛門絞りをせず、獣医さんで処置してもらうようにしましょう。

膀胱炎の治療法

猫の膀胱炎の治療は、その原因によって変わってきます。細菌や真菌が原因であれば抗生物質や抗真菌剤を投与し、尿結石が原因の場合には外科手術で結石を取り除いたり、内科治療、食餌療法で石を溶かしたりします。

子宮蓄膿症の治療法

治療法としては、猫の状態を安定させるために抗生剤などを投与した後、手術をして、卵巣と膿がたまった子宮を摘出します。子宮蓄膿症は、メス猫の避妊手術をすることで、予防をすることができます。

猫の肛門が赤い時の病気の原因

トイレの中の子猫2匹

胃腸炎

胃腸炎は、猫が腐ったものや冷えたものを食べたり、おもちゃや抜け毛などの誤食をしたりすることで、胃や腸の粘膜に炎症が生じて起こります。

猫パルボウイルス

また、猫パルボウイルスや細菌に感染することで腸炎になることもあります。

トキソプラズマ症

猫のトキソプラズマ症の原因は、トキソプラズマに感染した動物の肉を猫が生で食べたり、感染した猫の便から排泄されたトキソプラズマの卵(オーシスト)が、グルーミングなどで口に入ったり、また土の中にあるオーシストが口に入ったりして感染します。

熱中症

熱中症は熱射病や日射病とも言われ、暑い日に、猫が車内や室内など狭い場所に閉じ込められることで発症します。

切れ痔

切れ痔の原因は下痢や便秘がありますが、下痢の場合には、腐ったものなどを食べたり胃腸が弱っていたりしたと考えられ、便秘の場合には、水分不足や運動不足、または何か異物を食べてしまったことも考えられます。

肛門腺癌の原因

肛門腺癌は、肛門嚢のアポクリン腺組織に由来する、悪性度の高い腫瘍です。原因ははっきりとしていませんが、ホルモンの異常がひとつの理由として考えられます。

肛門嚢炎の原因

肛門嚢炎の原因は、普段は便と一緒に排出されるはずの分泌物が、肛門嚢の開口部がつまることで排出されずに溜まるために、炎症が起きます。また下痢などで肛門嚢の周りが汚れることでも、炎症が起きます。

膀胱炎の原因

猫の膀胱炎は、細菌や真菌などに感染することや、尿結晶などで膀胱粘膜が傷つくことで起こるとされています。また、原因不明で起こる膀胱炎もあり、治ったり再発したりを繰り返す場合もあるようです。

子宮蓄膿症の原因

メス猫の子宮に細菌が感染することで起こります。普段は感染することはありませんが、発情期の後半や妊娠の時期に、免疫力が落ちることがあり、その時に細菌に感染してしまう場合があります。

猫の肛門が赤い時の病気と治療法のまとめ

後ろのほうをみる猫

猫の肛門は、気をつけて見ていないと、赤い状態になっていることには気づかないかもしれません。様々な原因により肛門が赤くなりますが、血便や膿などが出ている状態であれば、比較的気付きやすいと言えるでしょう。何も排泄物や分泌物などがない場合には、肛門が赤いということに加えて、肛門周りが腫れていることもあります。猫のお尻にも普段から気を配って、異常には早く気づいてあげられるようにしましょう。

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