痛いほどわかる「寿命を分け与えたい」気持ち
漫画家の電気こうたろうさんはさまざまなタイプの漫画を描いていらっしゃいますが、今回ご紹介させて頂くお話は「猫に寿命をわける話」です。
いずれは訪れる愛猫の死をどう受け止めるか、寿命というものをどのように考えるか、すべての飼い主さんにとって永遠のテーマだと思います。
ちょうど一年程前になりますが、電気こうたろうさんがこのお話をツイッターに投稿されると、ツイッター上では感動の嵐が巻き起こりました。
愛するがゆえの飼い主のエゴ、寿命を分けるなんて愚かで悲しい行為?しかしその思いは飼い主さんであれば共感できる部分もあり、その反面でハッと気づかされる部分もあり、大変深いお話でした。
このような作品を通し、愛猫のターミナルケアはどのようにしてあげることが良いのか、いずれ迎える愛猫の死をどのように受け止めるか等考えるきっかけにしていかれたら良いと思います。
それでは早速、「猫に寿命をわける話」をご紹介させて頂きます。
「猫に寿命をわける話」
お話は3部構成の漫画になっています。
「もって一年ですね」
獣医さんから愛猫チュッチュッの余命1年宣告を受けた飼い主さん。獣医さんから『生命エネルギーをわける機器』で飼い主さんの寿命をわけることができるがどうするかと持ちかけられます。
その帰路、空にはハムみたいな雲が浮かんでいるのに気づいた飼い主さんは愛猫チュッチュッにも教えてあげて一緒に空を見上げます。
そして飼い主さんは、チュッチュッに自分の寿命をわける決断をするのでした。
「10年分の寿命をあげたのに1年しか愛猫の寿命が延びないなんて!」
処置が終わった後で、10年分の寿命を分け与えたのにチュッチュッの寿命は1年しか延びないということに愕然とする飼い主さん。
しかしチュッチュッは元気になって猫じゃらしに飛びついたり布団で一緒に寝たり、回復が見られて嬉しい気持ちになります。
チュッチュッがいてくれたら何もいらないし老化も構わないと働いてお金を稼いではチュッチュッへ寿命をわけることを繰り返します。
そしてついに、もうこれ以上はできないと獣医から告げられます。この頃には10年分の寿命を何度も分け与えたことで老化は進行し、空を見上げてチュッチュッと一緒においしそうだねと見たハムみたいな雲にも、もう気づくことができず、花を見てもむしゃむしゃ食べてしまうおばあさんになってしまいました。
「チュッチュッの死」
チュッチュッへ寿命を分けてあげることはもうできないと言われても、それでも諦められないおばあさんになった飼い主さんは「長生きさせろ」とたびたび動物病院へ行きますが、無理だと断られます。
その帰路タクシーを途中で降りた飼い主さんは、チュッチュッが動かないことに気づきます。
「起きて!起きて!」と呼びかけますが、チュッチュッは二度と目を覚ますことなく天国へ。
来た時は手のひらに乗るくらいだったのに大きくなって…この日が来ることはわかっていたけど、と涙が止まらない飼い主さん。チュッチュッと一緒の時にいつも口ずさんでいた歌「チュッチュッは母ちゃんと一緒~」を泣きながら口ずさむのでした。
愛猫の寿命と向き合い、残された時間を大切にするためには
愛猫にとっての本当の幸せは?
漫画では余命宣告をされた飼い主さんが高額をつぎ込んで自分の寿命を分けますが、現実でも、一日でも長生きしてほしくてずっと一緒にいたいからと、とことん高額医療に進むのが良いのか、緩和ケアか、寿命にまかせるか、何択もある中で飼い主さんが考えなければなりません。
漫画の中でも、余命宣告を受けた日の帰路にはハムの形の雲を「おいしそうな雲だね」と愛猫チュッチュッと飼い主さんが一緒に空を見上げていますが、何度も寿命を分け与えて老いてしまった飼い主さんは、もうハムの形の雲に気づくことができませんでした。
もしかしたらチュッチュッは、飼い主さんの老化を引き換えに延命するよりも、最期まで飼い主さんと一緒に雲を見上げたりたくさんお話ししたかったかもしれませんね。
飼い主さんの思い、愛猫にとっての本当の幸せ、愛猫が元気な時にこそじっくり考えてみるのも良いかもしれません。
愛猫の死、あなたはその時何を思うか
ペットロスという言葉はここ数年でとても身近なものとなりました。
多くの方がわが子のようにペットを愛しているからこそ、立ち直るのに時間がかかるのだと思います。
もちろん愛猫を失い一時は喪失感でいっぱいになりますが、責任をもって幸せな一生を送らせてあげられたことを喜びましょう。飼い主を失って行き場がなくなる猫さんもいる一方で、愛猫を迎え入れた日から最後の日まで一緒にいてあげられたこと、これは何よりなことなのかもしれませんね。
まとめ
「猫に寿命をわける話」は、余命宣告の際に『生命エネルギー(寿命)をわける機器』で10年ずつ寿命を分け与えることを繰り返し老化していく飼い主モデルを通し、ペットの死をどう受け入れるか考えさせられる深いお話でした。
寿命を分け与えようと思った飼い主さんが、チュッチュッと一日でも長く一緒にいたいと望んだ気持ちは、すべての飼い主さんの願いであると言えます。
余命宣告された愛猫の為に、高額医療や治療の選択肢の中から何を優先するべきかを考える時のヒントが、この漫画にはたくさん詰まっていました。
飼い主のエゴだけで突き進むことなく、愛猫が一番望んでいることにも耳を傾けてあげることがベストですね。
天寿を全うして迎える死を悲しみだけではなく、愛猫が幸せを感じ満足して旅立ったという視点もあるのかもしれません。
電気こうたろうさん、このたびはどうも有難うございました!
電気こうたろう(イエ・ネコゾウ)さんの『note』では、架空のカルチャーやブームを描いた「架空のエッセイ」などが読めます