笑うチェシャー猫は、どこから来た?

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ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」は1865年に初版されました。本の中に出てくるのが、神秘的なニヤニヤ笑いが特徴的なチェシャー猫です。
「笑っていない猫はよく見かけるけれど、猫の姿がないのに笑いだけ見えるなんて、今まで見た中で一番不思議なことだわ!」とアリスは本の中で語っています。
「チェシャー猫のように笑う」という句は、キャロルが考え出したわけではありません。この表現が最初に登場するのは、1795年に出版されたPeter Pindarの「抒情書簡集」です。ここには次のような一節があります。
「見よ、我らの宮廷はチェシャー猫のように笑うだろう」
「チェシャー猫のようにニヤニヤ笑う」という表現は、1811年の俗語辞典にも記載されているようです。
チェシャー州は酪農地帯で、古くからチーズや乳製品で知られていました。ディー川沿いにはチーズ倉庫があり、港も近かったのです。港の猫たちは波止場に集まり、チェシャー産チーズを積む船が港に到着すると、船から降りてくるネズミを待ち構えていたといわれています。こうして猫たちは幸せな暮らしをしたため、「ニヤニヤ笑い」はそこから来ているともいわれています。
ブリティッシュ・ブルーが起源か?

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一方で「まるで笑っているかのような表情」で知られる猫が、ブリティッシュ・ブルーです。はるか昔、コーンウォール地方からチェシャーへと移住した人々が連れてきた猫が先祖であるという説もあります。ルイス・キャロルは、チェシャーでの生活を通して、これらの猫とその「ニヤリとした表情」に接していたのかもしれませんね。
ルイス・キャロルは、11歳までチェシャーのデアズベリー村で暮らしました。このため「さまざまな動物の形をした地元のチーズ」をよく目にしていたはずです。その中には、ニヤリと笑う猫の形をしたものもありました。デアズベリー教区教会にはルイス・キャロル記念ステンドグラスがあり、そのうちの1つにチェシャー猫が描かれています。
一方で、チェシャー猫は「初期の紋章に由来している」という説もあります。初代チェスター伯爵の紋章には、イングランドのライオンが刻まれていました。ライオンは紋章のデザインによく用いられ、中世の画家たちはしばしば、実際に見たこともないライオンが吠えているようすを描くよう求められました。
そのため、彼らが描いたライオンは、ニヤリと笑う猫にそっくりなのでした。何世紀も前に描かれたパブ(酒場)の看板にも、ライオンやヒョウがモチーフになっています。でもこうした看板は人々から「猫の看板」と呼ばれていました。
キャロルがなじんだ猫の彫刻

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チェシャー州グラッペンホールの聖ウィルフリッド教会の塔には、猫の彫刻があります。牧師だったキャロルの父はここで説教をしていたため、少年はきっと訪れるたびにこの猫の彫刻を目にしたことでしょう。
さらにチェシャー州の東端に位置する小さな村、ポット・シュリグリーには13世紀に建てられた聖クリストファー教会があり、説教壇近くの壁に猫の頭の彫刻が設置されています。
キャロルは11歳の時にイングランド北東部のクロフト・オン・ティーズに移り住みました。当時、彼の父はクロフト教会の牧師であり、「不思議の国のアリス」に出てくる場面の多くは、クロフト教会とその牧師館周辺を舞台にしているといわれています。教会には、聖職者用の座席であるセディリアが壁に組み込まれており、その片端にはライオンの石像の顔が彫られています。教会のベンチから見るとライオンは笑っているように見えますが、立ちあがると笑みは消えてしまって見えないのです。まるでチェシャー猫のようですね。
神秘的なチェシャー猫のニヤニヤ笑い。これからも、わたしたちの想像をかきたててくれることでしょう。