猫ひっかき病が油断できない理由とは?

猫ひっかき病は、「バルトネラ・ヘンセレ」と呼ばれる菌が原因で発症する感染症です。
猫に感染していても、症状が出ることはありませんが、人間が感染すると、発熱してリンパが腫れるなどの症状が出てきます。ケガをしたときは「そんなに大したことない」と思っていても、あとになって大事に至ることもある危険な病気です。
猫ひっかき病の警戒すべきポイントを覚えておきましょう。
1.感染経路は日常に潜んでいる
猫ひっかき病の病原菌は、主にネコノミが媒介します。病原菌は、感染猫の血液中で生きていて、吸血していたノミのお腹の中で増殖し、フンとして排出されます。小さなノミのフンは、猫の毛づくろいによって猫の口の中や爪などに付着し、引っ掻かれたり噛まれたりすることで人間に感染するのです。
ただし、注意したいのは「猫ひっかき病」という名前でも、攻撃性のある引っ掻き行為だけで感染するものではないということです。噛まれたり傷口を舐められたりすることでも感染しますし、指にささくれ(傷)ができている状態で感染猫に触れただけでも感染することもあります。
感染している猫自身には症状がないため、外から見て病原菌を持っているかどうかは判別することができないことから、猫への接触には注意をしておく必要があります。
2.体調・体質により重症化する
猫ひっかき病は、体調や体質によっては重症化し、最悪の場合、命に関わることもある感染症です。
免疫力が十分にある健康な人は、感染後、傷口の腫れや水ぶくれ、リンパ節の腫れや微熱などが起こり、自然治癒することも少なくありません。感染が全身に回ると、腫れたリンパ節から膿が出る、38〜39℃の熱が1週間以上続くということもあります。骨や関節に痛みがあり、医療機関での治療が必要となります。
さらに重症化すると、内臓感染や脳症などを引き起こすことがあります。特に高齢者や小さな子供、あるいはがんや糖尿病などで、免疫力が弱い場合は、ほんの小さな傷であっても命にかかわる事態へ進行する危険性があるのです。
3.診断が難しく治療が遅れやすい
猫ひっかき病は、感染してから発症までに時間がかかるのが特徴です。そのため、本人に猫に引っかかれた記憶がないことで特定が遅くなることがあります。
たとえば、猫を撫でた手で無意識に傷口に触ってしまったり、傷があるところを舐められたりして感染すると、発症する頃には、本人もなぜ具合が悪いのかわからないことも多いのです。
猫ひっかき病の発熱やリンパの腫れといった症状は、さまざまな病気と似ていることから、問診の際に患者が「猫の情報」を伝え忘れ、診断までに時間がかかってしまうことがあるのです。
特に猫ひっかき病の病原菌に一般的な抗生物質が効かないことや、リンパ節が大きく腫れあがる症状や発熱、全身倦怠感などが、悪性リンパ腫や菊池病などに似ていることで正しい判断にたどり着くまでに遠回りしてしまう可能性もあります。
猫によって傷ができてしまったときの対処法

猫に引っかかれたり噛まれたりして傷になってしまったときは、すぐに・念入りに流水で洗うことが大切です。
まず、水道の蛇口を強めに出して患部をよく流しましょう。そして、石鹸をしっかりと泡立てて傷口を洗います。石鹸はふつうの家庭用せっけんで問題ありません。石鹸がしみて痛い場合は、中断してかまいませんが、泡と一緒に菌を洗い流すイメージで、5分以上かけて水やぬるま湯で洗い流しましょう。
洗う際に出血している場合は止血する前に、血液と一緒に菌を外へ流し、止血は洗った後に行います。水で十分に洗えば、消毒剤は必須ではありません。
傷口を保護する際には、ふつうの絆創膏やガーゼを使用します。動物による傷に入る菌(嫌気性菌など)は、酸素が少ない場所で爆発的に増殖するため、密閉タイプの絆創膏(キズパワーパッドなど)は、絶対に使用しないでください。空気が通らないことで中に残った菌が増殖して化膿しやすくなります。
傷が小さくても、赤く腫れる・痛みが強い・化膿してきたなどの症状が出た場合や、感染症リスクの高い人は、すぐに皮膚科や形成外科、外科を受診してください。特に数日〜数週間後に、患部の近くのリンパ節(首や脇の下など)が腫れてきた場合は、猫ひっかき病の発症かもしれません。診察の際は、猫との接触についても伝えましょう。
まとめ

猫ひっかき病は、ちょっとしたことから感染し、場合によっては重い症状を引き起こす危険性があります。
この感染症の特徴である、時間差による発症を忘れないようにしておきましょう。小さな傷だった場合は、すっかり傷が良くなってから発熱やリンパの腫れを経験することもあるからです。
また、猫ひっかき病の病原菌は、どんな猫でも持っている可能性があり、国内の研究では飼い猫の7〜10%、野良猫や保護猫は約20%が菌を保有しているといわれています。
血液中の菌は、1年ほどで消失するといわれていますが、その間にノミがいると感染リスクが高まります。ノミ対策をしっかりして、ノミのフンから感染するリスクを下げることが大切です。