猫にとって親兄弟とはどんな関係?

猫は嗅覚や聴覚などの感覚器官を使って、それぞれの個体を識別します。一方、自分の親兄弟という血のつながりに関しては理解しているわけではなく、幼少期に同じ巣の中で共有した記憶とニオイに基づいています。猫にとっては、敵か味方かということの方が重要だからです。では、親兄弟とはどのような関係性になるのでしょうか。
1.猫として生きるために不可欠な関係
猫のオスは子育てに参加しないため、生後数ヵ月までの子猫にとっては、母猫が食事や排泄の世話をしてくれ、外敵から身を守ってくれる生存のための唯一の保護者です。たくさん舐めてもらうことで情緒が安定しますが、育児放棄される恐怖は性格形成にも影響します。
また、兄弟猫同士では、社会性を学ぶための遊び相手となります。一緒に眠ったり、お互いに噛みつき合ったり追いかけっこをしたりする中で、猫としてのコミュニケーション方法を獲得していきます。
この時期の親兄弟との時間は、猫の生存だけでなく個性にも関わるほど大きく影響するのです。
2.成長すれば信頼できる馴染みの関係
成猫になってからも同じ家で暮らし続けている場合、生存や猫として生きるために必要だった関係性はなくなります。その代わりに、同じテリトリーを共有している「信頼できる幼馴染の猫」という関係に変化します。
人間でいうと幼馴染や小さなころにかわいがってくれたおばさんのような距離感になり、性格や飼い主の干渉によって、仲良く寄り添って寝ることもあれば、一定の距離を保ちながら上手に共存することもあります。
血縁であっても同じ血統だからではなく、ニオイや声や見慣れた毛色などの「馴染み」でつながる関係になります。
3.離別後に再会してもよそ者扱い
子猫期を一緒に過ごした本当の親兄弟であっても、別々の家庭に引き取られるなどして数ヵ月から1年以上離れて暮らすと、たいてい関係性がリセットされてしまいます。特に幼少期に離れてしまうと、再会したときのよそ者扱いは顕著になり、威嚇することも少なくありません。
ただし、友好的な猫が、初対面の相手の鼻やお尻のニオイを嗅ぎ合った結果、相手にも敵意がなかった場合には、そこから仲良くなることも少なくありません。
猫としては関係が一度リセットされても、それぞれの性格などによっては飼い主から見て「やっぱり血縁ね」と感じるようなこともあるのです。
4.発情期には交配相手になりうる
一部の動物では、遺伝的に近親交配が回避されているという研究結果がありますが、猫の場合は、本能的に近親交配回避のメカニズムが見られず、実際に血縁関係に関わらず交配、妊娠に至るケースが非常に多く見られます。
猫は生後半年ほどで性成熟して発情期を迎え、メスが発情するとオスがそれに呼応する形で生殖行動が行われます。
家庭内など安全な場所で暮らすメスの発情は、危険のある外猫と比べると遅くなるといわれますが、手術をしていない猫が発情した場合、親子や兄弟に関わらず、生殖本能が優先されて妊娠・出産に繋がることがあります。
5.縄張り争いの「ライバル(競合相手)」
生きるために必要な資源が不足していると、たとえ生物学的に血縁であっても、成長とともに生き残りをかけた敵対関係になることがあります。野良猫や多頭飼いなどで見られます。
限られた食事や寝床、あるいは繁殖可能なメス猫を巡っての争いでは、親兄弟という血のつながりは一切関係なく、生存に邪魔な「排除すべき相手」として激しいケンカをする関係になります。場合によっては、小さな子猫が殺されるケースもあります。
野生に近い環境であればあるほど、親兄弟という甘えは通用しなくなることから、子猫の自立も早まります。その一方で、資源が潤沢な環境になれば、猫同士の関係も一気に落ち着くことがあります。
猫同士の関係で血縁よりも大切なもの

私たち人間の家族関係が重視されるのは、変化しやすい感情に頼らず、社会を安定させる仕組みとして家族が定義されているからです。地域や文化によって「家族」の概念は異なるものの、世界のほとんどの地域で、血縁が家族の基盤となっています。
一方、友人関係においては「信頼できるかどうか」「好きか嫌いか」、そして「共有の思い出」から関係が築かれます。個人の自由で相手を選び、相手から選ばれることで成立する関係です。
猫同士の関係性は、人間の友人関係に似ています。猫の場合は、生きている環境が異なるため、第一に「生存するのに安全な環境かどうか」という判断が中心になりますが、その上で猫同士の関係は、血縁よりも信頼と相性と一緒に過ごした経験が左右するのです。
これは外にいる猫でも同様です。定期的に食事を提供されている地域猫の集団では、母猫を中心とした血縁グループが基盤になることがあります。さらに、血のつながらない猫が入ってきても、長期間一緒に食事をすることで仲が良くなり、最後まで一緒に過ごす猫もいるほどです。
多頭飼いの家庭で、血のつながらない猫同士が仲良く過ごせるのは、共に過ごす時間の中で信頼関係(友情)を築けたからでしょう。
まとめ

猫にとってお母さんや兄弟、あるいは自分の子どもに対する「血のつながり」は、私たち人間が思うほど特別なものではないのかもしれません。
子猫のときは生存のために必要な存在でも、成長して環境が変われば、その関係は容易にリセットされてしまいます。一方で、血のつながりがなくても、共に過ごした時間や信頼関係があれば、猫たちは深い絆を築くことができます。
これは、これから多頭飼いを検討している方にとっても大切な視点です。「兄弟・親子だから仲良く過ごせるはず」という期待は、必ずしも猫の世界には当てはまりません。むしろ、性格の相性や安心できる環境を整える方が、猫同士の良好な関係づくりには重要だといえるでしょう。