猫の命に関わる『膵炎』ってどんな病気?気付きにくい初期症状から治療法まで解説

猫の命に関わる『膵炎』ってどんな病気?気付きにくい初期症状から治療法まで解説

猫の膵炎のほとんどは、慢性膵炎で気づかないまま進行するケースも多い病気です。そのため、気づいたときには進行していることも少なくありません。この記事では、膵炎の基礎知識から初期症状の見極め方、治療と食事管理までをわかりやすく解説します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫の膵炎とは?

?の書かれた黒板の前に寝そべる猫

膵炎とは、本来は食べ物を消化するために働く酵素が膵臓内で活性化して、自分の膵臓を消化して炎症を起こす病気です。これまでは、猫の膵炎は珍しいとされていましたが、最近では多くの猫が膵炎にかかっていることがわかりました。

膵炎には急性と慢性があります。急性膵炎は突然発症して症状が強く出ることが多く、慢性膵炎は長期にわたって炎症が続きゆっくりと進行していきます。猫の膵炎の約90%は慢性とされています。

慢性膵炎の初期は症状がわかりにくく、早期発見が難しいのが特徴です。

 

膵炎の原因

丸まって眠る猫

猫の膵炎は、約95%が原因不明とされています。犬では高脂肪食や肥満がおもな原因となりますが、猫では当てはまりません。また、急性膵炎と慢性膵炎では原因が異なります。

急性膵炎のおもな原因は以下が考えられます。

  • ウイルス(猫伝染性腹膜炎 大腸菌サルモネラ菌など)
  • 寄生虫の感染(トキソプラズマなどの原虫)
  • 外傷(転落や交通事故など)
  • 虚血性疾患
  • 膵管の閉塞
  • 薬物摂取中毒

また猫の慢性膵炎では、原因不明の特発性膵炎が全体の60〜70%といわれています。

 

膵炎の初期症状とおもな症状

ご飯をあげる女性と顔を背けている猫

猫の膵炎は急性、慢性ともに特異的な症状が見られず、ほかの胃腸疾患との違いがわかりにくいのが特徴です。ここでは、それぞれの症状について解説します。

初期症状

急性膵炎では激しい嘔吐・下痢、突然の食欲不振などが見られますが、慢性膵炎の初期でははっきりとした症状が出ないことがほとんどです。「なんとなく元気がない」「食欲にムラがある」といった小さな変化が慢性膵炎の初期症状としてあらわれます。

これらの変化は加齢や一時的な体調不良と区別しにくく、発見が遅れがちです。「なんとなく」でも症状が続く場合は注意が必要です。

おもな症状

猫の膵炎では、以下の症状が見られることが多いとされています。

  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 体重減少
  • 不定期な嘔吐
  • 下痢

とくに慢性膵炎の猫では90%以上で食欲低下が認められたとの報告があります。ただし、まったく食べないのではなく「少しだけ食欲が落ちた」「いつもより残す」といった症状です。

重症化した場合や急性膵炎では、黄疸、ぐったりする、脱水、高熱といった症状があらわれます。炎症が全身に及ぶと多臓器障害につながり、命にかかわる可能性もあります。

 

受診の目安と治療法

診察中の猫と獣医師、飼い主

膵炎が疑われる場合は早めに動物病院を受診する必要があります。動物病院では、血液検査や超音波検査、CTなどの画像診断、組織生検を組み合わせて総合的に判断します。気になる症状があれば早めに受診することが基本です。

では、猫の膵炎における受診の目安と治療について見ていきましょう。

受診の目安

猫の膵炎では、以下のような症状が受診の目安となります。

  • 食欲不振
  • 元気がないぐったりしている
  • 嘔吐が続く
  • 体重が減っている
  • 黄疸が見られる

急性膵炎の場合は短時間で重症化する場合がありますので、異変に気づいたら速やかに受診しましょう。また、週1回程度の嘔吐でも慢性膵炎と診断されたケースもあります。猫の膵炎においては「いつもより静かにしている」「あまり食べていない」「最近よく吐いている」という程度の変化でも注意が必要です。

猫は絶食状態が続くことで肝臓への負担がかかり、致命的な問題につながる危険性があるため、食欲不振が見られたらできるだけ早めに受診をし、絶食状態になることを避けましょう。

おもな治療法

現時点では膵炎を直接治す薬はなく、治療の中心は対症療法です。症状にあわせて輸液の点滴や消炎剤による炎症の抑制、鎮痛剤、吐き気止めなどが使用されます。

急性膵炎では急激な悪化も考えられるため、入院による集中管理が必要になるケースがほとんどです。強制給餌または鼻チューブや食道チューブなどを利用した給餌がおこなわれることがあります。

慢性膵炎では、ほとんどが通院での治療となります。

 

猫の膵炎で注意すること

カメラ目線で寝そべる猫

膵炎は炎症性腸疾患(IBD)や胆管肝炎と同時に発症する「三臓器炎」と呼ばれる状態に陥ることがあります。複数の臓器に炎症が重なり、治療がより複雑になるため、とくに注意が必要です。

慢性膵炎ではインスリンを産生する細胞が障害され、糖尿病を発症する可能性があります。膵臓へのダメージが蓄積するほどリスクが高まるため、早期発見と管理が重要です。

また、慢性膵炎は再発しやすく、症状が落ち着いたあとも継続的な管理が必要となります。

まとめ

獣医師の診察を受ける猫

猫の慢性膵炎は症状がわかりにくく発見が遅れがちです。初期には食欲不振や元気消失といった変化しか見られず、胃腸炎と診断されることも珍しくありません。

膵炎の早期発見の鍵は「なんとなく食欲が落ちた」「元気がないような気がする」「最近よく吐いている」などの小さな不調を見逃さないことです。日頃から愛猫の様子をよく観察し、異変にいち早く気づけるようになりましょう。

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