猫の歯にトラブルを招く『歯磨きの方法』3つ 逆効果になる理由や正しいケアのコツ

猫の歯にトラブルを招く『歯磨きの方法』3つ 逆効果になる理由や正しいケアのコツ

猫の健康を守るための歯磨きが、実は逆効果になっているかもしれません。良かれと思ってやった方法で嫌われないよう、注意すべき点と正しい手順を解説していきます。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

猫の歯にトラブルを招く「歯磨きの方法」3選

男性に歯磨きされる猫

1.無理やり口を開けさせる

猫が嫌がって顔を背けているのに、力ずくで押さえつけたり、無理やり口をこじ開けたりするのは絶対に避けましょう。

人間よりもずっと体が小さく繊細な猫にとって、体を押さえ込まれることは、捕食者に捕まったような強い恐怖を感じる行為です。このような経験をさせてしまうと、飼い主との間に築いてきた信頼関係にヒビが入ってしまいます。

また、暴れる猫を無理に押さえると、爪で引っかかれたり噛まれたりして飼い主が怪我をするだけでなく、猫の顎や口の中を傷つけてしまうリスクもあります。まずは「口を触る」という行為に慣れてもらうようにしてください。

2.人間用の歯磨き粉を使う

私たちが普段使っている人間用の歯磨き粉は、猫には絶対に与えてはいけません。人間用の製品には、爽快感を出すためのミント成分や、泡立ちを良くするための発泡剤、そしてキシリトールなどの甘味料が含まれていることが多いです。

これらの成分は、猫にとって毒です。、少量飲み込んだだけでも深刻な中毒症状を引き起こします。

必ずペットショップなどで販売されている、飲み込んでも安全な「猫専用」の歯磨き粉やジェルを選ぶようにしてください。

3.いきなり歯ブラシを口に入れる

「今日から歯磨きを始めよう」と意気込んで、いきなり歯ブラシを口の中に突っ込むのは失敗の大きな原因です。

猫にとって、自分の口に硬い異物が入ってくるのは非常に不気味で恐ろしい体験です。まずは指先で触れる、次にガーゼを巻いた指で触れるといった段階を踏まずに、いきなり道具を使うと、猫はパニックを起こしてしまいます。

一度歯ブラシを「敵」だと認識してしまうと、その後のトレーニングが非常に困難になります。道具を使うのは、猫が口元を触られることに抵抗がなくなってからの最終ステップだと考え、焦らずに数週間から数ヶ月かけて進めるくらいの心の余裕を持ちましょう。

なぜその方法はダメ?逆効果になる理由

歯磨きを嫌がる猫

間違った方法が良くない最大の理由は、猫の心に深い「トラウマ」を残してしまうからです。猫は一度嫌な思いをすると、その場所や道具、さらにはその時の飼い主の雰囲気までセットで記憶します。

また、見た目では分かりにくくても、実はすでに歯肉炎などで痛みがある場合もあります。その状態で硬いブラシでこすってしまうと、激痛を伴い、さらに状態を悪化させてしまうので注意しましょう。

健康のために始めたはずのケアが、結果として猫を苦しませ、治療を遅らせる原因になっては本末転倒です。

また、追いかけ回して捕まえるような行為を繰り返すと、日常生活の中で猫が飼い主を避けるようになり、心の距離が離れてしまうという悲しい結果を招くことにもなりかねません。

正しい歯みがきのステップ

歯磨きペーストを舐める猫

歯磨きを成功させるコツは、小さな「できた」を積み重ねることです。一気にすべての歯を磨こうとするのではなく、今日は唇をめくるだけ、明日は前歯をちょっと触るだけ、というように非常にゆっくりとしたペースで進めましょう。

ステップ1:口の周りに触れる練習

まずは歯を磨くことではなく、口の周りを触られることに慣れてもらうことから始めます。猫がリラックスして甘えてきている時や、お昼寝前のウトウトしているタイミングを狙いましょう。

頬や顎の下を撫でるついでに、指先で唇のあたりを優しくチョンと触ってみてください。もし嫌がらなければ、そのまま優しく褒めてあげます。

これを数日間繰り返し、指が近づいても猫が動じなくなったら、次は少しだけ唇をめくって歯を確認してみる練習に移ります。

この段階ではまだ歯を触る必要はありません。触られることに違和感を持たせないことが大切です。

ステップ2:味付きペーストや指サックを活用

直接指で触れることに慣れたら、次は猫が「歯磨きはいいことだ」と認識するように工夫します。

猫用の歯磨きペーストには、チキン味や魚味など、猫が好むフレーバーがたくさんあります。まずはペーストを飼い主の指に塗り、猫に舐めさせてみましょう。「これをされると美味しいものがもらえる」と学習させるのです。

次に、指にガーゼやペット用の指サックをはめ、そのペーストをつけて優しく歯の表面を撫でてみます。ブラシのような硬い感触ではないため、猫も受け入れやすくなります。

まずは前歯から、そして徐々に奥歯へと触れる範囲を広げていきましょう。

ステップ3:少しずつ歯ブラシへ移行

指先でのケアがスムーズにできるようになったら、いよいよ歯ブラシの登場です。猫用の歯ブラシは、ヘッドが小さくて毛先が柔らかいものを選んでください。

最初は歯ブラシに美味しいペーストをたっぷりつけ、おやつのように舐めさせることから始めます。

ブラシの感触を嫌がらなくなったら、数秒だけ前歯に当てて横に動かしてみましょう。いきなり全部を磨こうとせず、今日は右側だけ、明日は左側だけと分けて行っても構いません。

猫が「もうやめて」というサイン(耳を伏せる、しっぽを激しく振るなど)を出す前に終わらせることが、続けるためのコツです。

歯磨きを習慣にするためのポイント

指サックで歯磨き

歯磨きを毎日の習慣にするためには、飼い主側も「完璧にやらなければならない」というプレッシャーを捨てることが大切です。1日に全ての歯を完璧に磨ける猫はなかなかいません。

たとえ1か所しか磨けなくても、それを毎日続けることの方が、週に1回無理やり全部磨くよりもずっと価値があります。

また、歯磨きの後は必ず猫が喜ぶことをしてあげてください。お気に入りのおやつを一粒あげる、大好きなおもちゃで遊ぶ、お腹を撫でてあげるなど、「歯磨き=その後に良いことが起こる」という方程式を猫の頭の中に作ってあげるのです。

これを繰り返すことで、猫の方から「歯磨きして」と寄ってくるようになることもあります。

まとめ

指で歯磨きされる猫

猫の歯磨きで最も大切なのは、猫のペースを尊重し、決して焦らないことです。嫌がる猫に無理強いをすると、健康を守るためのケアが、かえってストレスや信頼関係の悪化を招いてしまいます。

少しずつ段階を踏んで、「楽しい時間」に変えていきましょう。どうしても自宅でのケアが難しい場合は、無理をせずプロの獣医師に相談して、その子に合った方法を見つけてあげてくださいね。

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