猫も仲間を失うと変化する?

これまで「悲しみを感じる動物」としてよく語られてきたのは、犬やチンパンジー、ゾウのような社会性の強い動物でした。一方で猫は単独行動を好む動物として知られ、人間に飼われるようになってからも「自立している存在」と思われがちです。しかし最新の研究では、猫も同居していた犬や猫が亡くなったときに、行動の変化を示すことがわかってきました。
調査では400人以上の飼い主にアンケートを行い、同居動物を失った後の猫の様子を記録しました。その結果、多くの猫に「食欲が落ちる」「遊ばなくなる」「いつもより人に甘える」「隠れて過ごす」といった変化が見られました。特に亡くなった動物とよく一緒に遊んだり、寝たりしていた猫ほど変化が顕著で、まるで人間の悲しみに似た反応を示すことが明らかになったのです。
このことは、猫が「一緒に過ごした仲間の存在」をしっかりと認識し、その仲間がいなくなったことを感じ取るを示唆しています。単独行動を基本とする動物でも、家庭内で形成された絆が強ければ、その喪失は大きなストレスとなり得るのです。
飼い主の悲しみと猫の反応

興味深いのは、猫の行動変化が「飼い主自身の悲しみ」とも関係している点です。調査では、亡くなった動物に強い愛着を持っていた飼い主ほど「残された猫が甘えるようになった」「よく鳴くようになった」と感じやすい傾向がありました。これは二つの可能性を示しています。
一つは、猫が本当に仲間を失った悲しみを抱え、その気持ちを飼い主に向けて表現しているという可能性です。もう一つは、飼い主自身の悲しみが強いために、猫の行動をより敏感に捉えたり、自分の感情を猫に投影している可能性です。
実際にはこの両方が影響していると考えられます。悲しんでいる飼い主が猫に寄り添えば、その変化は猫にとっても環境の変化となり、さらに新しい行動を引き起こすかもしれません。猫の「悲しみのサイン」は、単独の要因ではなく、飼い主と猫の心の交流の中で形作られているといえるでしょう。
愛猫を支えるためにできること

では、もしあなたの猫が仲間を失って悲しんでいるように見えたとき、飼い主には何ができるでしょうか。まず大切なのは、急な行動変化を病気と区別することです。食欲不振や隠れる行動は悲しみのサインである場合もあれば、健康問題の初期症状である可能性もあるため、長く続く場合は必ず獣医師に相談しましょう。
また、残された猫の気持ちに寄り添うことも重要です。新しいおもちゃで遊んだり、一緒にいる時間を増やしたりと、安心できる時間を作ることで猫は少しずつ落ち着きを取り戻します。ただし無理にかまいすぎると逆にストレスになる場合もあるため、猫のペースを尊重しながら関わることが大切です。
さらに、飼い主自身がペットロスを癒していくことも猫の支えになります。猫は人の感情に敏感で、飼い主の落ち込みが伝わると不安を強めてしまうことがあります。気持ちを共有できる人と話したり、亡くなった子との思い出を前向きに残したりすることで、飼い主自身が立ち直ることが猫にとっても安心につながるのです。
研究はまだ始まったばかりで、「猫は本当に人間と同じ意味で悲しんでいるのか」には明確な答えが出ていません。しかし、確かなのは多くの猫が仲間がいなくなったことに反応し、その行動が変わるということです。そして、その変化に気づき、支えてあげられるのは飼い主にしかできない役割なのです。
まとめ

猫も同居動物を失うと行動が変わることがあります。飼い主が愛猫の心に寄り添い、安心できる環境を整えることが、悲しみを和らげる大切な支えになります。
(参考文献:Appl. Anim. Behav. Sci. 277, 106355.)