1.本能を刺激する「ベビースキーマ」

動物の赤ちゃんには、思わず「かわいいッ」と感じてしまう特有の体の特徴があり、動物行動学者のローレンツはそれを「ベビースキーマ」と名づけました。
ベビースキーマには、「体に比べて頭が大きい」「目が丸く大きい」「頭全体に対して目鼻が下の方に位置する」「四肢は短い」などの特徴があり、これらは猫の姿かたちにも多く当てはまります。
猫の中でもペットとして飼われるイエネコは、成猫になっても丸みのある形をしていて、それが人間の「守りたい」「世話をしたい」という感情を継続的に喚起すると考えられているのです。
2.予測不能な行動が生む中毒性

猫を飼っている人なら「猫はワガママ」とか「猫は気ままな動物」という言葉は、必ずしも愛猫には当てはまらないと思う人も多いでしょう。一方、人の生活に密着して暮らす家畜を含む動物の中では、猫はもっとも野性味を残した動物だといえます。
猫は人に従属することもなく、甘えてきたかと思えば突然離れてひとりで過ごすなど、自分のペースを大事にするのです。この予測不能な行動は、心理学でいう「間欠強化」に近い効果を生みます。
猫の気分で許されるスキンシップや飼い主にとってのご褒美であるゴロゴロ音は、脳の報酬系を刺激して、「安定した愛情よりも、たまに得られる好意のほうが印象に残りやすい」というメカニズムが働いてしまうのです。
3.触れて感じる幸せ

猫のやわらかい毛並みや体温に触れたり、喉をならすゴロゴロの音を聞いたりすると、脳の中では、幸せホルモンのオキシトシンが分泌されます。これは信頼や愛着を感じたときに増えるホルモンで、その多幸感は「かわいい」という感情を強めます。猫を家族のように感じやすくなるのもこの瞬間です。
また、猫の小さな仕草や表情にも強く反応するようになります。スリスリと足元に甘える姿や、顔を見上げてニャッと鳴く姿を見るだけで、大きな喜びを感じたり、安心できたりするのはそのためです。
猫をなでる時間は、脳と体がリラックスできる状態になるため、自然と力が抜け、幸せな気分になるのです。
4.距離感が現代人向き

人にぴったりと寄り添い、お散歩の必要性のある犬とは違い、猫は家庭の中でも比較的自立して生活ができ、飼い主との関係でも適度な距離感を保ちます。このような猫の特性は、都市化が進んだ現代社会のライフスタイルとも、とても相性が良いです。
歴史的に見ても、人間によって家畜化されたわけではなく、猫は自ら人間社会に近づき、ネズミを捕食する存在として適応してきました。見た目のかわいさだけでなく、共生関係を築き上げたことが人からの信頼を受け、私たちを虜にする動物種として認識されているのです。
まとめ

今回は、猫の魅力を多角的な学問の視点から検証してみました。
大きな瞳、ぷにぷにの肉球、しっぽの先までモフモフで、そこにいるだけでも十分にかわいい猫ですが、私たちが猫を見て感じる気持ちの背景には、科学的に説明できる要素がいくつもあるのです。
私たち人間と猫とのつきあいは、約1万年になるといわれています。さまざまな動物の中でも、人間の身近なパートナーとして残っているのは、単なるネズミ捕りの道具ではなかったことを示しています。
ネコという動物はまだまだわからないことも多い存在ですが、本能や心理、さらには社会的適合性が絶妙にヒトと噛み合った結果、猫が今も私たちの隣にいるのかもしれませんね。