猫の『歩き方』に異常があるときの原因5つ 病気の可能性や確認すべきポイントを解説

猫の『歩き方』に異常があるときの原因5つ 病気の可能性や確認すべきポイントを解説

猫は、しなやかで優雅な動きをする動物です。そのため、飼い主が「あれ?今日の歩き方は少しおかしいかも」と感じたとき、そこには身体のSOSサインが隠されているケースが少なくありません。そこで今回は、猫の歩き方におかしくなる原因と、自宅でチェックするポイント、そして考えられる病気について解説します。

SupervisorImage

記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

1.関節や骨の異常

家の中を歩く猫

猫は高いところからのジャンプや着地を行うため、関節や骨への負担は想像以上に大きいものです。

特に高齢の猫(10歳以上)の多くが「変形性関節症」を持っていると言われていますが、犬のように顕著に足を引きずることが少なく、「寝てばかりいる」「ジャンプしなくなった」「爪とぎをしなくなった」といった行動の変化として現れるため、加齢のせいだと見過ごされがちです。

考えられる主な疾患

  • 変形性関節症: 軟骨の摩耗により慢性的な痛みが生じます。
  • 膝蓋骨脱臼(パテラ): 膝のお皿が外れる病気で、後肢をスキップするような歩き方をする
  • 骨軟骨異形成症: 特定の猫種(主にスコティッシュフォールド)に見られる遺伝性の疾患で、手足の関節に骨瘤(こぶ)ができ、激しい痛みを伴います。

チェックポイント

  • 行動の変化: キャットタワーに登らなくなった、爪とぎをしなくなった、グルーミングが減り毛割れしている(背中など届かない場所がある)。
  • トイレの失敗: トイレの縁をまたぐのが辛くて、外で粗相をしていないか。
  • 触診: 足や腰を触ると嫌がる、怒る、噛みつこうとする反応がないか。

2.神経系の障害

家の中を歩く猫の後ろ姿

脳、脊髄、末梢神経の異常により、運動機能やバランス感覚が損なわれる状態です。

猫で特に緊急性が高いのが「血栓症」による後ろ足の麻痺です。心臓病を持っている猫に多く、血栓が血管に詰まることで突然激痛と共に歩けなくなります。

考えられる主な疾患

  • 大動脈血栓塞栓症(サドル血栓): 後ろ足への血流が途絶え、肉球が冷たくなり、激痛と麻痺が起こります。一刻を争う救急疾患です。
  • 椎間板ヘルニア: 犬ほど多くはありませんが、外傷や加齢により発症し、麻痺やふらつきが生じます。
  • 前庭疾患: 特発性や中耳炎などが原因で、目が回っている状態になり、まっすぐ歩けず転倒したり、首が傾いたり(斜頸)します。

チェックポイント

  • 足の甲: 足の甲を地面につけて歩く「ナックリング」をしていないか。
  • 肉球の色と温度: 麻痺している足の肉球が白っぽく、冷たくなっていないか(血栓症の兆候)。
  • 目の動き: 黒目が左右や上下に揺れる「眼振」がないか。

3.筋肉の疾患

ぐったりする猫

筋肉そのものの炎症や、病気による筋力の低下によって歩行が困難になるケースです。筋肉が弱ると、頭を支えられなくなったり、ふらふらとした歩き方になったりします。

考えられる主な疾患

  • 低カリウム血症性ミオパチー: 慢性腎臓病などでカリウムが欠乏し、全身の筋力が低下します。首を持ち上げられなくなる(首下がり)のが典型的な症状です。
  • 重症筋無力症: 神経から筋肉への指令が伝わらなくなる病気で、動くとすぐに疲れて座り込んでしまいます。巨大食道症を併発することもあります。
  • 筋炎(トキソプラズマ症など): 感染症や免疫介在性の原因で筋肉に炎症が起き、歩くと痛がる様子が見られます。

チェックポイント

  • 首の角度: 顎を胸につけるように、うなだれて歩いていないか。
  • 歩き方のリズム: トボトボと歩幅が狭い、あるいは後ろ足をぎこちなく揃えて動かしていないか。
  • ジャンプ力: 以前なら登れていた低いソファなどにも失敗していないか。

4.代謝性疾患

診察を受ける猫

ホルモン異常や内臓機能の低下が、歩き方に独特の影響を与える場合もあります。

代表的なのが「糖尿病」です。高血糖が続くことで神経障害が起き、「蹠行(しょこう)」が見られるようになります。

蹠行とは普段はつま先立ちで歩く猫が、人間のように踵(かかと)をべったりと地面につけて歩く状態です。

考えられる主な疾患

  • 糖尿病性ニューロパチー: 末梢神経障害により、後ろ足の踵が地面につく歩き方(蹠行)になります。ジャンプ力が著しく低下します。
  • 甲状腺機能亢進症: 高齢猫に多く、代謝が活発になりすぎるため、食べているのに痩せていきます。筋力が落ち、落ち着きなくウロウロと歩き回るようになります。
  • 慢性腎臓病: 貧血や尿毒症による倦怠感から、足取りが重くなり、ふらつきが生じます。

チェックすべきポイント

  • 足の着き方: 後ろ足の踵(アキレス腱の部分)が地面に接していないか。
  • 飲水量と尿量: 水を飲む量が異常に増え、おしっこの塊が大きくなっていないか(糖尿病・腎臓病のサイン)。
  • 体型: 食欲はあるのに背骨が浮き出るほど痩せてきていないか。

5.中毒や栄養障害

花に顔を近づける猫

猫は肝臓の解毒機能が犬や人間と異なるため、特定の植物や化学物質、あるいは栄養バランスの偏りに対して非常に敏感です。

中毒や栄養障害は、急激な痙攣やふらつきを引き起こすことが多く、早急に動物病院で治療を行う必要があります。

考えられる主な疾患

  • ビタミンB1(チアミン)欠乏症: 生の魚介類やイカやタコばかり食べ続けたり、偏った手作り食を与えたりすることで発症します。ふらつき、瞳孔が開く、背骨が反り返るなどの神経症状が出ます。
  • ユリ中毒: ユリ科の植物を齧ったり花粉を舐めたりすることで急激な腎不全を起こし、脱力して歩けなくなります。
  • 薬剤中毒(ピレスロイド系など): 犬用のノミダニ駆除薬に使用されることがあるペルメトリンは猫に激しい震えや痙攣、運動失調を起こし、命に関わります。

チェックすべきポイント

  • 食事内容: 総合栄養食以外のもの(刺身、偏ったおやつ)を主食にしていないか。
  • 環境: 観葉植物(特にユリ科)がかじられていないか、アロマオイルを使用していないか。
  • 症状の急変: ついさっきまで元気だったのに、急に泡を吹いたり、千鳥足になったりしていないか。

まとめ

歩くサバトラ

猫の歩き方の異常は、体からのSOSサインである可能性があります。

その原因は外傷から、命に関わる疾患まで多岐にわたりますが、毎日一緒に過ごしている飼い主だからこそ気づける「違和感」は、診断において何よりも貴重な情報となります。

ぜひ日頃からスムーズに歩いているか、ジャンプの高さが変わっていないか、毛繕いの範囲が狭まっていないかなどを観察する習慣をつけましょう。

スポンサーリンク