猫の『食欲がない』ときに考えられる原因3つ 病院に行くべき症状や対処法も解説

猫の『食欲がない』ときに考えられる原因3つ 病院に行くべき症状や対処法も解説

たとえば、食いしん坊な愛猫が急に食べなくなると、飼い主さんはとても心配でしょう。今回は、なぜ愛猫の食欲が落ちるのか、3つの視点から探っていきます。病院での受診が必要になるケースもあるので、ぜひ本文をチェックしてみてください。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

1.フードが気に入らない

ウェット&ドライフード

猫は食にシビアな動物で、自分の口に合わないものは無理して食べません。飼い主さんがどれだけフードを厳選しようとも、好みでなければあっさり却下されます。

グルメと言われる猫の食性には、ネオフォビア(新奇恐怖症)、ネオフィリア(新しいモノ好き)という異なる2つの特徴が隠されています。

ネオフォビアは、新しいものを敬遠する性質で、たとえば、栄養面やライフステージを考慮し、別のフードに切り替えると、「スルー」という形で表現されます。

一方、ネオフィリアは、毎日好んで食べていたフードに飽きて、急に食べなくなる現象のことです。本来、野生に生きる猫は、単一の獲物に依存していると、環境の変化などで数が減少した場合、大打撃を受けます。ネオフィリアは、獲物の選択肢を広げる生存戦略です。

ちなみに、ネオフォビア、ネオフィリア、どちらの傾向が強くなるかに関しては、猫によって個体差があります。

もし愛猫が主食のドライフードを食べなくなったら、猫缶やパウチのウェットフードをトッピング代わりに加えると、食欲が増すかもしれません。また、何かと飽きの早い猫には、何種類かのフードをローテーションで回す方法もあります。

ただし、栄養素が偏らないようトッピングは控えめに、「総合栄養食」と書かれたものから選ぶと安心です。

2.ストレスや加齢

浮かない表情のメインクーン

猫は環境に左右されやすく、ストレスのために食欲が湧かなくなることもあります。

ストレス要因は、食器の変更といった些細なものから、部屋の模様替え、引越し、同居猫の新加入まで実にさまざまです。

猫にとって、環境の変化は、縄張りの安全、存続に関わる異変であり、大げさに言えば、緊急事態のようなものです。本能的に危機管理システムが作動し、食欲の代わりに、まずは状況の見極めに専念します。

この場合の対策としては、「慣れ親しんだ食器を変えない」、「落ち着く場所で食べてもらう(例、人目につかない場所)」、「リラックスするまで様子を見守る」が有効です。

いずれにしても、一時的な「症状」の可能性が高いので、基本的には静観を心がけるようにしましょう(ただし、24時間以上続くと命に関わるため、動物病院に要相談)。

加齢による食欲不振は、若い頃と違って、基礎代謝が低下し、消化機能が衰えるので、ある意味、避けられない現象です。

シニア期を迎える7歳頃から、猫の運動量はだんだん減り、それにつれて食欲も少しずつ落ちてきます。あれほど食いしん坊だったのに…と飼い主さんは愛猫の変化に戸惑うかもしれません。

食欲の落ちたシニア猫には、食べやすいように、ドライフードをふやかしたり、ウェットフードを温めたりして、提供してみてください。適量範囲内で食事回数を増やす方法も効果的です。

逆に、年齢を重ねてから突然食欲が増す場合は、甲状腺機能亢進症や糖尿病といった病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。

3. 病気の可能性(口内炎、消化器系疾患、慢性腎臓病など)

診察中の猫

最後の3つ目は、病気の可能性です。

猫の食欲低下には、口腔内トラブル(口内炎など)や消化器系疾患、慢性腎臓病などが影響している場合があります。

口腔内トラブルは、よだれや口臭悪化などの兆候が見られ、消化器系疾患は、一般的に嘔吐や下痢などを伴います。また、慢性腎臓病になると、多飲多尿の症状が表れがちです。愛猫の異変に気づいた時点で、動物病院に連れていってあげてください。

前項でも説明しましたが、24時間以上に渡って食欲不振に陥ると、猫の健康上、非常に危険です。

猫の絶食状態が2~3日続くと、「肝リピドーシス(脂肪肝の一種)」のリスクが急激に高まります。

肝リピドーシスとは、猫の肝臓に脂肪が溜まることにより、肝機能が著しく低下する危険な病態のことです。

何日も食べなくなった猫の体内では、不足したエネルギーを脂肪で補おうとするメカニズムが働きます。しかし、あまりにも大量の脂肪が運ばれるため、許容範囲を超え、処理しきれなくなった分が、肝臓にどんどん溜まっていきます。

その結果、肝臓内に過剰な脂肪が蓄積され、肝リピドーシスに陥ります。

肝リピドーシスのサインは、嘔吐や無気力、黄疸が代表的です。重篤化すると、命を落とす危険性もあるので、十分に注意してください。

食欲減退で病院に行く目安としては、「生後3か月以下は8時間」、「生後4~6か月は16時間」、「成猫は24時間以上」となっています。

肝リピドーシスは、特に肥満体質やストレスに弱い猫に発症しやすいのが特徴です。何も食べてない状態が長時間続くようであれば、念のため、動物病院で診てもらうようにしましょう。

まとめ

テーブル上のキャットフードと猫

今回は、猫の食欲が低下する原因として、「フードの好き嫌い」、「心理面と老化現象」、「病気の影響」を挙げました。

本文でも触れましたが、成猫で24時間以上も絶食が続くと、何らかの病気の可能性が考えられます。そのまま放置すれば、肝リピドーシスのリスクが一段と高くなるため、早急に動物病院へ連れていくようにしてください。

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