1.「ねこま説」猫は魔の化身だった?

猫という名前には、かつて人々が猫に抱いた「不思議さ」や「畏れ」の感情がにじんでいます。その代表が「ねこま」説です。
「ねこま」は漢字で「猫魔」と書き、古い日本の伝承では、猫は年をとると妖怪のような存在になると信じられていました。たとえば尻尾が二股に分かれた「猫又(ねこまた)」などが有名です。夜な夜な人語を話す猫の話も各地に残されています。
こうした信仰から「猫魔(ねこま)」という言葉が生まれ、やがて「ねこま」が「ねこ」と短縮されたという説があります。
現代のふわふわしたイメージとは違い、昔の人々にとって猫はどこかミステリアスで、ちょっと怖い存在だったのかもしれませんね。
2.「ねずみが好きだから説」習性から名づけられた?

猫の語源には「ねずみ」との関係を示す説もあります。それが「ねずみが好きだからねこ」という発想です。たしかに猫はネズミを捕まえるのが得意で、農家や蔵の守り神のような存在でした。
この説では、「ね(鼠)」と「こ(好)」を組み合わせて、「ねこ=ねずみを好む動物」と解釈されます。
たとえるなら、魚好きな犬がいたら「うおいぬ」と呼ばれるような、動物の特徴を名前にする感覚です。動物に役割を見出していた昔の暮らしならではの発想かもしれません。
まとめ

「ねこま説」「ねずみ好き説」、どちらも違う角度から猫の存在をとらえていて面白いですよね。
怖れと神秘、役立つ存在、そしてかわいさ。それぞれの、人々の思いや暮らしぶりが、人と猫との距離感を物語っています。
普段なにげなく呼んでいる「ねこ」という言葉も、こうした背景を知るとちょっと愛おしく感じられるはずです。
名前の由来は、時に動物との関わり方そのものを映す鏡。実は遠い昔から人の心に寄り添ってきた存在なのかもしれません。
「ねこ」の名前に込められた背景を知ると、なんだか今日の愛猫との時間も、もっと大切に思えてきますね。