猫にとっても『肥満』が危険な5つの理由 かかりやすくなる病気や生活への支障…愛猫のQOLを下げる大敵

猫にとっても『肥満』が危険な5つの理由 かかりやすくなる病気や生活への支障…愛猫のQOLを下げる大敵

日本の飼い猫における肥満率は、およそ40%という調査データがあるのを知っていますか?猫のてぷっとした丸いフォルムは愛らしいものの、健康や生活に悪い影響を及ぼしかねません。今回は、肥満が猫に与える悪影響について、具体的な5つの理由から解説します。「うちの猫、ちょっと太ってきたかも?」と感じている飼い主さんは、ぜひチェックしてみてください。

SupervisorImage

記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

病気のリスクを高める3つの理由

血糖値を測られている猫

1.血糖値をコントロールできず「糖尿病」にかかりやすくなる

「インスリン注射」という言葉を、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは人だけではなく、猫にも必要になることがある治療法です。

インスリンとは、血糖値を下げるのに欠かせないホルモンなのですが、肥満になると、適切に働かなくなってしまいます。その結果、糖尿病を引き起こしてしまうのです。

なお、肥満以外では「遺伝的な要素」が原因で発症することもあるため、早期に発見できるよう普段から健康管理をしましょう。

2.足腰に負担がかかり「関節炎」になりやすくなる

肥満は、支える体重が増える分、足腰に負担がかかりやすくなります。関節に炎症が起きやすく、関節トラブルにつながるリスクが高まります。

例えば、スムーズな上下運動ができない、触られるのを嫌がる、足を引きずるように歩くといった様子が見られる場合は、関節炎のサインである可能性があるでしょう。

特にシニア猫は、そもそも活動量が落ちてくるため、関節へのダメージに気づきにくいこともあるかもしれませんが、見過ごさないようにしてください。

3.脂肪が蓄積して「脂肪肝(肝リピドーシス)」にかかりやすくなる

「脂肪肝」とは、その漢字のとおり、肝臓にたくさん脂肪が蓄積される病気のことです。

猫が、何らかの理由で食事が取れない状況が続くと、足りないエネルギーを体の脂肪で補おうとします。しかし、肝臓に脂肪が沈着し脂肪細胞へと置き換わることで正常に機能できなくなるというメカニズムです。もし猫が食欲不振となった際には、迅速に対応しましょう。

生活に影響を与える2つの理由

毛づくろい中の猫

4.「行動」が制限される

当たり前のことですが、肥満になると、全ての身動きが取りにくい状態となります。猫にとって大切な「毛づくろい」の習慣も、その例外ではありません。

脂肪が邪魔をし、お手入れが思うように行き届かないゆえに不衛生な状態となり「皮膚炎」にもかかりやすくなってしまいます。

さらに、太っている猫は、健康な猫と比べて瞬時に動けず、ケンカの際などに逃げ遅れてしまうリスクも高まります。

このような、思うように体を動かせないストレスが積み重なると、心身ともに不調をきたしてしまうでしょう。

5.「暑さ」に弱くなる

猫は、野生時代に砂漠で暮らしていた歴史を持つことから、比較的暑さに強いと言われています。しかし、肥満の猫は、体内に熱がこもりやすいため、暑さに弱くなる傾向があります。

もともと人間のように全身で汗をかく体のつくりをしておらず、汗腺(汗の分泌)は「肉球」など、体のごく一部に限られるため、体温調整が苦手です。

また、肥満になると気管が圧迫されるため、呼吸がしづらくなる傾向があり、気温や湿度が高い中ではより呼吸困難につながりやすくなる危険性があります。

暑さによる不調があらわれると、呼吸が荒くなったり、食欲が落ちたりする様子が見られることもあるため、気をつけなければなりません。

特に熱中症のリスクが高まる夏場は、室温管理に一層気を配る必要があるでしょう。

まとめ

大柄の猫

肥満は、猫のQOLを下げる大敵です。糖尿病や関節炎、脂肪肝といった病気にかかりやすくなり、思うように体を動かせないことから、生活にも支障をきたします。

体を清潔に保つための毛づくろいも困難になり、瞬時に動けないこともストレスの要因になるでしょう。

また、暑さにも弱くなるため、熱中症対策がますます欠かせません。

猫自身の快適さを損なうだけでなく、飼い主さん側のお世話も大変になってしまいます。ちょっとした体重の変化も見過ごさず、リスクは小さな芽のうちに摘み取り、愛猫の健康を守りましょう。

スポンサーリンク