猫にとっての抱っことは

愛猫がどんな性格や生い立ちであったとしても、基本的に猫にとって抱っこが不自然な状態であることを、飼い主さんは知っておくべきです。なにしろ、抱っこされることで猫は自由を奪われた上に足が地につかない不安定な状態になり、飼い主さんに身を委ねなければならないためとても「怖い」ことなのです。
ただし、たとえ短時間でも抱かれることに抵抗をしない猫であれば、危険な状態から救い出したり動物病院に連れて行ったりしやすく、また日々のケアや介護が必要な時にも役立ちます。さらに、自分から抱っこをせがんでくるような抱っこ好きの猫であれば、スキンシップを深めることにもつながります。
そこで、愛猫が嫌がらずに抱っこを受け入れられる抱っこ好きにしたい飼い主さんのために、役に立ちそうなアイデアをご紹介しましょう。
1.自然に慣れてもらうためのアイデア

まず、抱っこに対する嫌悪感や恐怖感を愛猫に植え付けないようにするため、抱っこを特別なことと感じさせないよう、ごく自然に慣れてもらうための工夫をしましょう。おすすめは、飼い主さんが床などに座っている時に膝の上に乗せ、安定した状態で抱くところから始める方法です。
まだ警戒心が少なく好奇心が旺盛な社会化期(生後2〜7週齢程度まで)の子猫であれば、近づいてきた時に優しく抱き上げて膝に乗せても大丈夫でしょう。抱き上げる時は両手を使って、お尻側と前脚側の脇の下からやさしくすくいあげるようにして膝の高さに持ち上げて乗せます。
警戒心が強くなった成猫の場合は、近づいてきたからといって無理やり抱き上げてしまうと、それだけで驚いたり怖がったりしてその後は近づいて来なくなるかもしれません。愛猫が自ら膝の上に乗るまでは抱き上げようとせず、膝の上に愛猫が好きなブランケットを掛けたりおやつやおもちゃなどを使って、根気よく誘導するようにしましょう。
2.不安を感じさせないためのアイデア

座った状態で膝の上に乗ることができたら、次に優しく圧迫感を感じないように力加減を注意しながら、密着度を高めて愛猫の体がしっかりと固定します。こうすることで抱っこをしている状態に近くなります。また膝の上なので足がぶらぶらする不安定感がなく、飼い主さんの体が密着していることで安心感も生まれます。
具体的には、飼い主さんの両手や上半身(お腹)で愛猫を包み込むようにし、あぐらをかくなどの座り方を工夫して安定感を出すことがポイントです。
ただし、圧迫感や窮屈さを感じるとすぐに嫌がりますので、力加減は愛猫の様子に合わせて適宜調節しましょう。また居心地良さそうにしていても、長時間抱かれていることを好む猫は少ないため、降りたがる様子を見せたら無理強いせずに解放してあげましょう。
愛猫が自分で飛び降りるように仕向けるのではなく、嫌がったら飼い主さんが膝に乗せた時のように優しくおろしてあげることもポイントです。
3.抱っこを好きになってもらうためのアイデア

抱っこをされても嫌なことをされるわけではないと理解してもらうだけでは、抱っこを嫌がらない猫にはなっても抱っこ好きにまではなかなかならないでしょう。そこで、抱っこ好きにするためには「抱っこされるといいことがある」と覚えてもらうための積極的な工夫も必要です。
具体的には、抱っこをしたら必ず口の周囲、あご、おでこ、耳の付け根などの愛猫が喜ぶ部位を優しく撫でる、大好きなおやつをあげるなど、愛猫が喜ぶことをするのです。また、抱っこをしている間は怖がったり嫌がったりすることをしないのも鉄則です。猫は嬉しいことも覚えますが、それ以上に嫌な思いをしたことは忘れないからです。
膝の上で気持ちよく抱っこされるようになったら、少しずつ立った状態でも抱っこできるように慣らしていきましょう。立った状態での抱っこも、基本的には両手、上半身を使って愛猫の体を安定させることが大切です。上半身を愛猫に密着させ、片方の腕で胸、もう片方の腕でお尻をしっかりと支えましょう。
決してやってはいけない抱き方は、愛猫を仰向けにした姿勢で抱くこと、そして赤ん坊を高い高いする時のように、愛猫の前脚の脇の下に両手を入れ下半身をだらりと垂らした状態で持ち上げることです。前者は愛猫に不安を、後者は愛猫に不安と痛みを与えます。
愛猫の体が大きくて安定させることが難しい場合は、愛猫の前脚を飼い主さんの肩に乗せて担ぐような姿勢で抱っこをするのも良いでしょう。
まとめ

抱っこは、自由を奪って拘束し、かつ体が宙に浮いた状態となるため、猫にはとても不自然で不安にさせる状態です。しかし、愛猫の安全を確保したり日々のケアを行なったりコミュニケーションを深めたりする際に、抱っこができることは愛猫にも飼い主さんにもスムーズで快適な状態を生み出します。
愛猫の気持ちとペースに寄り添いながら、抱っこが嫌なものではなく、むしろ良いことがあると教えることで、抱っこ好きな猫に育てることができるでしょう。社会化期の間に教えるのが理想ですが、成猫になってから迎えた猫でも、根気よく教えれば抱っこ好きになってくれる可能性は十分にありますので、頑張ってトレーニングしてみてください。