猫の『視力を低下させる』原因6選 目が見えづらくなっているサインも解説

猫の『視力を低下させる』原因6選 目が見えづらくなっているサインも解説

猫は言葉を話せない分、体の異変や不調を隠す傾向があります。特に「目が見えにくくなる」といった変化は、初期にはとても気づきにくいものです。ですが、早く異変に気づき、適切な対応を取ることで、大切な視力を守れることもあります。この記事では、猫の視力低下の主な原因や、日常で見られるサイン、飼い主ができる対処法までを詳しく解説していきます。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫の『視力を低下させる』原因6選

白内障の猫

猫の視力が低下する背景には、いくつかの病気や状態が関係しています。加齢による変化のほか、体の不調や外傷が原因となることも少なくありません。

ここでは、代表的な6つの原因について、それぞれの特徴やリスクを解説します。

1.白内障

白内障とは、目の中の水晶体(レンズ)が白く濁り、光がうまく通らなくなる病気です。主な原因は加齢ですが、糖尿病が引き金になることもあります。進行すると視界がぼやけ、最終的には失明に至ったり、周囲の構造にも問題が起こることも。

初期は気づきにくいですが、目の奥が白く濁って見えるようになったら注意が必要です。治療は進行度によって異なり、進行の段階によっては外科手術が検討されることもあります。

2.緑内障

緑内障は、目の中の圧力(眼圧)が高くなり、視力の低下などの問題が起こる病気です。急性の場合は突然の痛みや充血、目の大きさの変化などが見られ、早急な対応が求められます。

慢性的に進行するタイプでは、知らない間に視野が狭くなっていき、最終的には失明のリスクも。治療では眼圧を下げる点眼薬などが使われますが、早期発見が非常に重要です。

3.ブドウ膜炎

ブドウ膜炎とは、目の内部にあるブドウ膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)が炎症を起こす病気です。原因は感染症(細菌やウイルス)、免疫異常、外傷など多岐にわたります。

目の充血、涙が多くなる、痛み、まぶしがるといった症状が見られ、進行すると視力が低下します。白内障や緑内障との関連のある疾患です。できるだけ早い治療が必要です。

4.高血圧性網膜症

猫も高血圧になることがあり、その影響で網膜(目の奥の光を感じ取る部分)にダメージを受けることがあります。これを「高血圧性網膜症」と呼びます。

網膜出血や網膜剥離が起こり、突然視力を失うケースも。高血圧は腎臓病や甲状腺機能亢進症などの持病と関係していることが多く、定期的な健康チェックが大切です。

5.進行性網膜萎縮症

進行性網膜萎縮症(PRA)は、網膜が徐々に萎縮していき、視力を失う遺伝性の疾患です。特定の猫種に多く見られ、生後半年〜数年のうちに徐々に視力が低下します。

残念ながら有効な治療法はなく、進行を遅らせたり、生活環境を整えることが中心となります。

6.事故やケガによる外傷性の視力喪失

高所からの転落、家具や物に目をぶつける、喧嘩による外傷など、物理的な衝撃が目に加わることで視力を失うこともあります。

見た目に異常がなくても、内部で出血や網膜剥離が起きていることもあるため、事故後は早めの診察が重要です。適切な治療を受ければ、視力を一部取り戻せる場合もあります。

こんな行動に注意!猫の視力低下を示すサイン

瞳孔が開いた猫

猫の視力低下は、外見だけではなかなか判断がつきません。しかし、日常のふとした行動に“サイン”が隠れていることがあります。

ここでは、愛猫の視力が低下しているかもしれないと気づける、5つの代表的な行動を紹介します。

家具や壁にぶつかるようになった

今まで何の問題もなく歩いていた場所で、壁や家具にぶつかるようになった場合は、視野が狭くなっている可能性があります。

特に慣れたはずの室内でぶつかることが増えたら、注意が必要です。見えていないというよりは、以前と比べて距離感や位置関係がつかみにくくなっているのかもしれません。

動きが慎重で活動量が減った

視界がぼやけたり、暗く感じるようになると、猫は用心深くなります。ジャンプをためらう、歩き方がゆっくりになる、キャットタワーに登らなくなるなど、動きに変化が見られたときは、視覚の問題を疑ってみましょう。

見えづらさから不安を感じて、行動が消極的になったり、性格が攻撃的になったりする猫もいます。

明るい場所でも瞳孔が開いたまま

通常、猫の瞳孔は明るい場所では細く、暗い場所では丸く大きくなります。しかし、視力に問題があると、明るい場所でも瞳孔が大きく開いたままになることがあります。

これは、目が十分に光を取り込もうとしているサインで、網膜や視神経に異常がある可能性も考えられます。

驚きやすくなる、音に敏感になる

視力が低下すると、猫はまわりの状況を把握するために、より聴覚や嗅覚に頼るようになります。その結果、普段なら気にしないような物音にも敏感に反応したり、ちょっとした気配で驚くことが増えることがあります。

これは、視覚の不安定さを他の感覚でカバーしようとしているからです。

目をよくこすったり、夜鳴きが増える

目に不快感や異常を感じているとき、猫は前足で目をこするような仕草をします。また、視界が暗く感じることで不安が増し、特に夜間に鳴く頻度が増えることも。

これらは見逃されがちなサインですが、視力だけでなく目の健康全体に関わる兆候として重要です。

もし視力低下が疑われたら?飼い主が取るべき対処法

猫の診察

猫の視力に異変を感じたとき、まず大切なのは“自己判断で済ませず、すぐに動物病院を受診すること”です。

視力低下の原因は多岐にわたり、放置すれば悪化するケースも少なくありません。ここでは、飼い主がとるべき対応と、診断後のサポートについてご紹介します。

まずは動物病院での診察を

目に異常がある場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。症状に応じて、眼科の専門機器を使った詳しい検査(眼圧測定、網膜の状態確認、血液検査など)が行われます。原因が特定できれば、白内障や緑内障、高血圧性網膜症など、適切な治療をスタートすることができます。

視力の低下が進行性のものであっても、早期に診断を受けることで進行を遅らせる方法がとられる場合もあります。飼い主としては「気のせいかな?」と思っても、念のために一度診てもらうことが大切です。

家庭でのサポート方法

診断後は、愛猫が安心して暮らせるように環境を整えていきましょう。視力が落ちている猫にとっては、日常の何気ない変化も大きなストレスになります。

  • 家具やキャットタワーの配置を変えない
  • 障害物を減らし、通り道を確保する
  • 高い場所へのジャンプは控えさせ、昇降しやすいステップを設置する
  • 階段や段差のある場所には柵やマットなどで落下を防ぐ工夫を
  • ごはんやトイレの場所は決して変えず、安心できるルーティンを維持する

また、視力を補うために、声をかけて存在を知らせたり、音のするおもちゃで遊ぶことで不安を和らげることもできます。猫はとても順応力のある動物です。飼い主の配慮とサポートがあれば、視力を失っても穏やかに暮らすことができます。

キャットタワーなど視力の低下によって上った後に不安を感じていたり、けがをしそうな場合は上段に登れないよう工夫をしたり低めのタワーに変えるなどのけが対策をするとよいでしょう。

まとめ

猫の瞳

猫の視力低下は、白内障や緑内障、高血圧、遺伝的な疾患、外傷など、さまざまな要因で起こります。初期は目立った症状がなく、気づきにくいため、日頃からの観察がとても大切です。

動きが慎重になったり、物にぶつかるようになったりする変化は、視力の異常を知らせるサインかもしれません。視力を失っても、愛猫が安心して暮らせる環境は作ることができます。大切なのは、早期発見と寄り添う姿勢です。

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