『夜廻り猫』(著:深谷かほる)
Twitterから生まれた感動の8コマ漫画。主人公は大きなグレーの猫「遠藤平蔵」。物語の中ではコワモテ扱いですが、こんなに愛され、必要とされている猫はいないでしょう。
トレードマークは半纏と頭に乗せた猫の缶詰。「泣く子はいねーがー」と夜の街を歩き回りながら、今宵も平蔵は泣いている誰かの心に寄り添っていく。
傷ついている人、自分が泣いていることにすら気付かない人、孤独な人、寂しい人……。
とにかく生きづらい世の中で、平蔵は様々な人々の凍った心を溶かしていく。「にっこり」魔法の言葉と共に。
こんなに優しくて癒されるコミックはない、と言っても過言ではないくらい素晴らしい作品。平蔵の仲間の猫や犬たちも、みんな愛すべきキャラたち。
猫好きには勿論、猫好きじゃなくても、堂々とススメられる1冊。
「平蔵さーん、今夜はうちに来て下さーい!」
読み終わった途端に、誰もがそう思うに違いない1冊。
『ペットの声が聞こえたら』(原作:塩田妙玄、作画:オノユウリ)
高野山真言宗僧侶、心理カウンセラーもやられている塩田妙幻さんは、動物の声が聞こえるという不思議な力を持っています。
「私は霊能者でもないし、サイキックでもない」とご本人は仰っていますが、動物とお話出来るのですから、特別な能力があるに違いありません。
妙玄さんは本業とは別に、動物保護団体でボランティアをされています。その施設では愛さんという一人のサラリーマンが、会社勤めをしながら、ほぼ一人で犬猫のお世話をされているそうです。
そこには人間に愛されなかった犬猫、身勝手な理由で捨てられた犬猫など、行き場を喪ったたくさんの動物が存在しています。
そこで出会った彼らとの日常は可笑しくもあり、愛しくもあり、時には涙もありで、描かれているコミックエッセイです。
犬のお話もありますが、施設には猫の方が多いようで、必然的に猫のお話の方が多めです。
こむぎと言う猫とのエピソードが忘れられません。星になったこむぎを供養しながら「こむぎちゃん もう天国についた?」と聞くと、「天国はここでした」と返事が返って来る。返って来たような気がする。
猫が喋るわけないじゃん、と言う方もいるでしょうが、人間と動物は通じ合えると信じたくなる1冊です。
『猫ピッチャー』(著:そにしけんじ)
読売新聞日曜版で毎週連載されている『猫ピッチャー』。主人(猫)公のミー太郎1歳は、プロ野球史上初の猫投手。セロリーグ、ヨミウリニャイアンツ所属。しかも「100年に一人(匹?)逸材」と言われている。
契約金は大好物のキャットフード(高価であれば良いわけではない)。武器はストレートで、盗塁が得意。
投球フォームも人間顔負けの勇ましさ。マウンド上からバッターを睨む表情は最早ハンターのよう。
しかし、時々出てしまう猫の素顔。ボールでじゃれたり、苛立つと、ベントやバットで爪を研いだり、マウンドで寝てしまうことも。
味方は勿論、相手チームも虜にしてしまう愛くるしさ。
野球に全く興味のない私のような人間でも楽しめ、毎回、猫の習性や生態を物語にがっつりと絡めて来る作者の知識の深さに感心します。
猫にも野球にも興味が無い、と言う人にこそ敢えておススメしたい1冊です。
『きょうのらすぼす譚』(著:柿生みのり)
恋と狩りは苦手だけど、情に厚いコワモテの流れ者。猫たちは彼を「ラスボス」と呼ぶ。
野良猫たちの日常が面白可笑しく、時にはハートフルに描かれていて、僅かに残っている乙女心がきゅんとします。
一度仲間と認めたら、何があっても守り抜くのが、ラスボスのモットー。仲良しの子猫とアヒルのごはんさん。いくらおいしそう(!?)に見えても、ラスボスは決して襲ったりしません。それがラスボスの美学なのです。
ラスボスが口にする言葉は、まるで任侠道を体現しているよう。
「いつ以来だ? こんな穏やかな気持ちになったのは…」
「チッ 日和ったな この町で守りたいものが出来たのかよ」
とにかくラスボスがカッコいいです。「私の理想の男がここにいた!!」と叫びたくなる1冊です。
『悪のボスと猫。』(著:ポマーン)
こちらもTwitter発の作品です。基本的には「猫あるある」なのですが、飼い主がマフィアのボス。着眼点のセンスの良さに感心します。
コワモテのマフィアのボスのセリフは「フフフ」か、「ククク」か、「フハハハハハ」で、それ以上のことは口にしません。
そんなボスが溺愛する5匹の猫たちの自由っぷり。相手がマフィアのボスでも、猫たちには何の関係もないのです。
2ページで1つのお話になっています。
ギャップ萌えが好きな人におススメしたい1冊です。
『鴻池剛と猫のぽんたニャアアアン!』(著:鴻池剛)
こちらもTwitter上で熱い視線を集めている作品です。友人に押し付けられるようにして始まった愛猫・ぽんたとの生活。
自由気ままに振る舞うぽんた(基本的に塩対応。つんつんしてます)と、それに振り回される作者との関係が、猫を飼っている人なら分かる「猫あるある」で溢れて返っています。
尽くしても報わわれない。でも尽くすのはイヤではない、という猫飼いの微妙な心理を上手くついている作品だと思います。
実際のぽんたの写真も掲載されています。2巻からは捨て猫のアルフも加わり、更に賑やかな猫ライフ展開中。
ただひたすら笑いたい人におススメの1冊です。
『うちの猫がまた変なことしてる。』(著:卵山玉子)
こちらはアメーバーブログ猫ランキング1位に輝いた作品。
多頭飼い「ねこあるある」です。2匹の元保護猫。トンちゃん(♀・2歳)とシノさん(♀・1歳半)の愛くるしい姿に癒されます。2匹は仲良しだけど、性格はバラバラ。でも猫は猫なりに、お互いを尊重し合って暮らしています。
同じように遊びに誘っても、一匹は涎を垂れ流す勢いで食いついて来るのに、もう一匹はちら見しただけで無反応。
甘え方もそれぞれで、グイグイ来たり、遠慮がちだったり。その対比が面白いです。
飼い主はいつでもそれを下僕のように受け止めるだけ。
ほのぼのとした絵柄と、たくさんの猫たちの写真、また「譲渡会で猫を迎えるまで」の経験談が分かりやすく描かれているので、これから保護猫を迎えたい方には参考になるかもしれません。
とにかく癒されたい!! そう思う方におススメの1冊です。
『きょうの猫村さん』(著:ほしよりこ)
猫マンガの王道です。出版社のメールマガジンに登録すると、毎日1コママンガ読めます。
えんぴつで描かれたゆるいイラストが、ほのぼのとした雰囲気を醸し出しています。
猫の家政婦「猫村ねこ」は、昔可愛がってくれた坊ちゃんを探すべく、新しい奉公先「犬神家」にやって来るが、そこは家庭崩壊寸前の家だった。
『家政婦は見た』の猫バージョンと言っても過言ではない作品。猫村さんの世話好きなおせっかい加減と、生真面目な優しさに和むけれど、それだけでは決して言い表せない魅力があります。
エプロンの後ろのリボンをキリっと縦結びにして、人のために颯爽と働く姿が、猫好きには溜らないと思います。
一度でいいので、猫村さん特製の「ネコムライス」が食べてみたいです。
「私も猫村さんのような家政婦が欲しい!」と思うこと間違いなしの1冊です。
まとめ
以前、本屋の店員さんが「犬本より猫本の方が売れる」と言っていたことを思い出しました。それには理由があると言われています。その理由とは「犬好きが興味あるのは自分の犬だけで、猫好きはどんな猫でも興味があるから」だそうです。
まだまだおススメしたい猫マンガはたくさんありますが、今回はこの辺にしておきます。最近のマンガはインターネットで発表されて、人気に火がついて、書籍化という流れが多いようですね。ご紹介した作品の幾つかは、インターネット上でも読むことが出来ますので、よろしかったらご一読下さい。
秋の夜長に猫マンガはいかがですか? 今まで以上に猫の魅力に取り憑かれること間違いありません。