ヒマラヤンとは
ヒマラヤンというとヒマラヤ山脈からふわふわの毛皮をまとって飛び出てきたように思われるかもしれませんが、実際にはヨーロッパで繁殖が始まり、その後アメリカやカナダで発展したペルシャ猫とシャム猫(サイアミーズ)から作られた品種です。ヒマラヤンはペルシャ猫の美しい毛並みとシャム猫のすばらしい毛色と瞳の色を合わせ持つ美しい猫です。猫の愛好家団体ではペルシャ猫のカラーバリエーションされていることが多いようです。
そんなヒマラヤンはどんな猫なのか、いろいろな面についてお話ししてみようと思います。
ヒマラヤンの性格
ヒマラヤンの一番の魅力はその美しい毛並みと青い瞳かもしれません。でも、実際に共に暮らしてみるとその性格に魅了される方が多い猫でもあるのです。
ペルシャ猫から生まれたヒマラヤンですが、ペルシャ猫よりも明るくひょうきんな性格をもつ猫が多いように思います。ペルシャ猫は小さなお子様や元気な犬は苦手としている子が多いように思いますが、ヒマラヤンは上手に距離を取って仲良くしてくれます。幼いころは元気いっぱいの猫ですが、成長と共に性格も落ち着き適度な距離間で家族を見守る良い家猫となってくれます。
ヒマラヤンの毛色
ヒマラヤンの毛色はシャム猫とほぼ同じです。シールポイント(顔・手足・しっぽのカラー)は必須ですが、そのカラーはブルー・ライラック・チョコレート・クリームと多様です。またカラーの部分が単色のソリッドポイントの他にも、タビーやトーティシェル(さび)など柄のあるポイントカラーもあります。顔・手足・しっぽにそれぞれのカラーが配色され、体は薄い色の美しい毛でおおわれています。
毛色の変動について
ヒマラヤンはシャム猫の系統の猫のため、季節や住む場所により体の色が変動することがあります。冬寒い地域でや、冬の間は顔まわりのカラーが濃くなったりカラーが広がったりします。逆に暖かい地域に住む猫は顔回りのシールポイントが薄く色が目立たないという場合もあります。他の猫種にはあまり見られない毛色の変動はヒマラヤンと暮らす楽しみの一つでしょう。
ヒマラヤンの瞳
ヒマラヤンの瞳はすべて青色です。黄色や緑がかることもあり、様々な色調の青色の瞳が見られます。この瞳の色は劣性遺伝するので、ミックス猫であれば青色の瞳を持たないことも多いのです。顔のポイントカラ―の中から見つめ返す青い瞳の美しさはヒマラヤンの一番愛されるところではないでしょうか。
ヒマラヤンの日頃のケア方法
ペルシャ猫と同様、ヒマラヤンはとても柔らかいダブルコートの被毛を持っています。このダブルコートは非常にもつれやすく、ごみを巻き込んですぐに毛玉を作りやすいです。毎日のコーミング・ブラッシングは必須です。丁寧なコーミング・ブラッシングは週に1回程度でも、ざっともつれをほぐすくらいはもっと頻繁に行うつもりで居ましょう。
ヒマラヤンが子猫のころから毎日きちんと習慣づけていればそれほどグルーミングを嫌がることはないでしょう。しかし、もつれた毛を無理やり引っ張ったり、硬いコームでガシガシと柔らかい皮膚を引っかかれるのは好きではありません。毎日のグルーミングで自分の猫が好きな力加減やコームやブラシをきちんと見つけて上手にお手入れを続けていきましょう。
コームは柔らかいものと硬いものを両方用意すると良いと思います。柔らかいものでもつれをほぐし、硬いコームで抜け毛を取り除くように丁寧にコーミングしましょう。お尻周りや顔回りなどはもつれやすく細かい部分なのでハンディな小回りの利くコームがあるととても便利です。
ブラシに関してはピンブラシがあればよいと思います。全体にざっとかけてムダ毛を取り除くように使いましょう。必要や好みに応じて、ラバーブラシやスリッカーブラシを使っても良いでしょう。
いったんもつれて毛玉になってしまうと、切って取り除くしかありません。その際は、毛玉と猫の体の間にコームを通してコームの外側を切るように気を付けてください。動物病院に駆け込むヒマラヤンやペルシャ猫には、毛玉を皮膚ごと引っ張って皮膚を切ってしまった場合があるというのも事実です。
さらに、毛玉を放置するとどうにもできなくなってしまいます。ひどい場合は全身麻酔で丸刈り・・・なんてことも。
シャンプー
シャンプーに関してはそれほど頻繁ではなくても構いません。しかし、まれにべたつきやすい体質のヒマラヤンもいます。子猫のころからシャンプーの習慣をつけておけばそれほど嫌がらないのでおススメです。
もし自宅で難しいということであればトリミングサロンの利用も考えておきましょう。猫のトリミングを請け負うサロンは数が少ない傾向にあります。
連れて行けるところにトリミングサロンがあれば助かりますね。毎日きちんとお手入れすれば、美しい被毛をキープできます。ヒマラヤンと暮らすということはグルーミングをキチンとすることだと理解しておきましょう。
トイレにも気を使ってあげよう
ヒマラヤンは、ペルシャ猫と同じく非常に毛にゴミを巻き込みやすいです。固まるタイプの猫トイレ砂だと、足裏・お尻・しっぽに砂を巻き込んで毛玉を作ることが多いです。最近よく販売されているシステム系のトイレなら砂がつくことも少なく毛玉の元になりづらいです。猫の好みもありますが、毛玉をつくると本当に大変なので上手にトイレを選んであげてください。猫砂を使わずにペットシーツだけのトイレを使っている長毛種の飼い主さんもいるようです。
ヒマラヤンの病気
ヒマラヤンは比較的遺伝性の病気は少ないといわれています。しかし、ペルシャ猫の系統であることから、腎臓にのう胞の出来る多嚢胞腎遺伝子を持っている場合があります。この病気は優性遺伝します。世界的にペルシャ猫では約40%の猫がこの多嚢胞腎の遺伝子を持っていると言われていますが、その中でどれ位のヒマラヤンがその遺伝子を持っているのかは不明です。
ヒマラヤンにはシャム猫の血が入っている分、ペルシャ猫よりはその遺伝子を持つ確率が低いといいのですが、ヒマラヤンを購入する場合には親猫の遺伝子検査(PKD1遺伝子)の結果を見せてもらう方が良いでしょう。その他の遺伝性疾患として、肥大型心筋症と進行性網膜委縮症がヒマラヤンでも見られるそうです。
また、尿石症や膀胱炎などの下部尿路疾患(FLUTD)も猫一般で多く見られる病気です。出ていないのに頻繁にトイレに行く。トイレの時に痛そうに鳴く。下半身のグルーミングがやけに多いなどの兆候をしっかり見極め、早めに動物病院を受診しましょう。
普段から尿のpHをチェックしておくくらいの気持ちでしっかり予防してあげたい病気だと思います。最近は尿のpHを測定できる猫砂も販売されています。あくまでも指標ではありますが用心するなら取り入れても良いかもしれませんね。
食事もFLUTD対応食を選び、飲水もきちんとできているかチェックしましょう。
あと、鼻ぺちゃのタイプの顔のヒマラヤンでは目から鼻へ涙を流しだす鼻涙管が曲がって通りが悪くなりやすく涙があふれて涙やけになりやすいです。グルーミングの際には目周りのクリーニングと、顔のヒダの間のケアも欠かさないようにしましょう。
ヒマラヤンの寿命と健康
ヒマラヤン作出の祖先となったペルシャ猫もシャム猫も長寿猫の系統です。なので、ヒマラヤンも比較的長寿な猫だといえるでしょう。15年前後といわれていますが、それ以上の長寿の猫も数多く存在しています。
ヒマラヤンの運動
ヒマラヤンはペルシャ猫と同じく運動が苦手な子が多いと言われている猫です。キャットタワーなどは高い所まで登らない、なんていうこともありうると思います。ですが、ペルシャ猫ほど不活発ということはないように思います。床で猫じゃらしで遊ぶのは大好きですし、ボールを追いかけたりするのも得意な猫が多いと思います。
ペルシャ猫と同じく、肥満にもなりやすいので普段から遊びを通じて運動を心がけてあげましょう。
ヒマラヤンの価格
ヒマラヤンはペットショップでそんなに頻繁に見かける猫種ではありません。販売価格も15万~と比較的高価な部類になるでしょう。とくに毛色の希少な猫や良好な血統のヒマラヤンは高額です。
ヒマラヤンの飼いやすさについて
ヒマラヤンは家庭猫として非常に優れた資質を持っています。子供や犬、ほかの猫ともケンカせずにうまくやってくれる子が多いでしょう。被毛の手入れは面倒ですが、その面倒以上の素晴らしい経験を家族にもたらしてくれる猫です。
ただし、完全室内飼いは絶対に必要な条件でしょう。ヒマラヤンは運動も得意ではなく、被毛にゴミを付けやすいので外に行く猫ではないと理解しておいてください。
まとめ
ヒマラヤンという素晴らしい猫は、飼う人を魅了するすべての要素を兼ね備えている猫だと思います。きちんと被毛の手入れをすること・尿石症に気を付けることなど注意したい点はありますがそれはどの猫種にもある部分ですね。
それ以上に、ともに暮らして素晴らしい体験ができる猫がヒマラヤンです。子供とも仲良くでき、ほかの猫や犬とも上手に距離をとってくれることが多いヒマラヤンは家族の大切な一員となってくれることでしょう。
ヒマラヤ山脈とは関係がないのになぜ「ヒマラヤン」という名前なのか...それはヒマラヤ原産と言われている「ヒマラヤウサギ」に関係しています(ヒマラヤウサギの原産地については正確には不明なようですが)。白い体に耳や鼻づら、足先、しっぽの先だけが黒いいわゆるポイントカラーのウサギで、このウサギに似たカラーを持つので「ヒマラヤン」と名付けられたと言われています。