世界各地に存在している『猫の神様』

1.古代エジプトで崇拝された女神「バステト」
世界には昔から、猫を神聖な存在として敬う文化がありました。その代表格が古代エジプトで信仰されていたバステトです。
もともとは獅子の頭を持つ戦いの女神として描かれていましたが、時代が進むにつれて穏やかな家猫の姿をした女神へと変化しました。バステトは家庭、豊穣、出産、音楽などを司る守護神として、多くの人々から親しまれていたのです。
古代エジプトでは猫を傷つけることは重い罪とされ、亡くなった猫は家族同然に弔われました。猫が死ぬと飼い主が眉毛を剃って喪に服したという記録も残されています。
愛猫が体調を崩しただけで心配になったり、帰宅すると真っ先に顔を見に行ったりする飼い主さんは少なくないでしょう。現代人が猫を「家族」と感じる感覚は、数千年前のエジプト人とも共通していたのかもしれません。
2.北欧神話に登場する愛と美の女神「フレイヤ」
北欧には、猫と深い関わりを持つ女神フレイヤが存在します。
フレイヤは愛や豊穣、美しさを象徴する女神で、二匹の大きな猫が引く戦車に乗って空を駆ける姿で語り継がれています。猫の種類は明確ではありませんが、森林に暮らす大型の猫だったのではないかと考える研究者もいるようです。
当時の北欧では農業が生活の中心でした。穀物を食い荒らすネズミは大きな悩みだったため、ネズミを捕まえる猫は非常に役立つ存在だったのでしょう。
そのため、人々は猫を粗末に扱わず、結婚式では新郎新婦の幸せを願って猫を贈る風習もあったと伝えられています。
気まぐれに見えても、そっと隣で眠ったり、疲れている日に寄り添ってくれたりする猫の姿には不思議な魅力があります。愛と幸福の女神が猫を連れていたという話も、どこか納得してしまいますね。
3.日本で福を招く存在となった「招き猫」
日本にも、猫を神様に近い存在として大切にしてきた歴史があります。その象徴ともいえるのが招き猫です。
招き猫は厳密には神様ではありませんが、人々に福を呼び込む縁起物として長く親しまれてきました。
江戸時代には養蚕業が盛んでしたが、蚕の繭を食べてしまうネズミが問題になっていました。猫はその天敵として重宝され、人々の暮らしを守る存在だったのです。
招き猫が誕生した由来にはいくつかの説があります。寺の飼い猫が手招きをして通りかかった武士を呼び寄せ、その直後に雷が落ちて命拾いしたという話は特によく知られています。
現在でも商店の入口や飲食店のレジ横で招き猫を見かけることがあります。「お客さんがたくさん来ますように」「商売がうまくいきますように」という願いは、昔も今も変わらないのでしょう。
人々が猫を崇めるのはなぜなのか

猫が神様のように扱われるようになった理由は、大きく分けて「実用的な価値」と「神秘的な魅力」の二つがあります。
昔の人々にとって、穀物や食料は生活そのものを支える大切な財産でした。しかし、ネズミによる被害は深刻で、せっかく収穫した食べ物が失われてしまうことも珍しくありませんでした。
そんな中、優れた狩猟能力を持つ猫は頼もしい存在だったのです。薬も殺鼠剤もなかった時代には、猫はまさに天然の害獣対策でした。
一方で、猫は完全には人間に従わない動物でもあります。甘えてきたかと思えば急に離れていき、高い場所を好み、暗闇でも自在に動き回ります。夜になると瞳が大きく輝く様子を見て、「特別な力を持っているのでは」と感じた人もいたのでしょう。
実際に猫と暮らしていると、「今何を考えているんだろう」と思う瞬間はたくさんあります。その少し謎めいた性格が、人々の想像力を刺激し、神聖視されるきっかけになったのかもしれません。
まとめ

猫は単なる愛玩動物ではなく、古代エジプトでは家庭を守る女神として、北欧では愛の女神の伴侶として、日本では福を招く存在として大切にされてきました。
人々が猫を崇めた背景には、ネズミを退治して暮らしを支えてくれた実用性と、自由気ままでどこか神秘的な魅力があります。
愛猫が窓辺で外を眺めていたり、静かに隣へ寄り添ってきたりすると、「昔の人が神様のように敬った気持ちも分かるな」と感じる飼い主さんは多いのではないでしょうか。
私たちを癒やしてくれる猫は、現代でも小さな福の神のような存在なのかもしれません。