猫には帰巣本能が備わっているのか?

まずはじめに、猫にも「帰巣本能」がある可能性は高いと考えられます。猫の帰巣本能に関する研究はいくつかあり、例えば生物学者「フランシス・H・ヘリック」が行った1922年の研究では、母猫が離れた場所から子猫のいる家へ戻った例が報告されました。他にも、1954年のドイツの研究では、猫が迷路の出口のうち自宅方向に近い出口を選ぶ傾向があったと紹介されています。
ただし、すべての猫が必ず家に帰れるわけではありません。猫の帰巣行動に関する研究数は多くなく、古い研究や事例報告が中心。分かっていないことも多いです。猫によっては、そのまま迷子になり帰ってこれなくなる可能性もあります。
特に、完全室内飼いの猫は外の景色やにおいに慣れていないため、不用意に外に出ると遠くへ帰ろうとするよりも、近くの物陰に隠れてしまうことがあります。そのため「猫には帰巣本能があるから大丈夫」と考えるのは危険です。
猫が帰ってこれる4つの説やワケ

猫は、複数の手がかりを組み合わせて家に帰っている可能性が高いと考えられています。ここでは代表的な4つの説を紹介します。
1.磁気を感じる力
猫が帰ってこられる理由のひとつとして、「地球の磁気を感じ取っているのではないか」という説があります。地球には方位を示す磁場があり、鳥や一部の動物はそれを手がかりに移動すると考えられています。一説では、磁気情報が方角を知るための手段のひとつになるとされています。
猫についても、前述した1954年の研究で自宅方向の出口を選ぶ傾向があったことから、磁気感覚が関係している可能性が語られてきました。ただし、猫の磁気感覚については、他の動物ほど研究が進んでいるわけではありません。あくまで有力な説のひとつと考えましょう。
2.鋭い嗅覚と聴覚
猫は嗅覚や聴覚に優れた動物。自分の家のにおい、飼い主のにおい、近所の建物や道に残ったにおいなどを手がかりにしている可能性があります。特に、猫は自分の縄張りににおいを残す習性があります。顔をこすりつけたり、体をすり寄せたりする行動には、自分のにおいをつける意味もあります。外に出る猫であれば、普段から通る道や庭、玄関まわりのにおいを覚えていることも考えられます。
また、聞き慣れた生活音も手がかりになるかもしれません。飼い主の声、車の音、玄関の音、近所の音などを聞き分けて、方向を判断している可能性も否定できません。
3.太陽の位置
猫が帰る方向を判断するうえで、太陽の位置が関係しているという説もあります。動物の中には、太陽の位置を手がかりにして方角を判断するものがいます。太陽や磁気など、複数の手がかりを組み合わせて方角を決めることもあるようです。
ただ、太陽の位置だけで家まで帰れるわけではありません。曇りの日や夜、知らない場所では使える手がかりも限られます。太陽の位置は、家に帰るための手がかりのひとつ程度の位置づけかもしれません。
4.感覚地図
猫が帰ってこられる理由として、「感覚地図」も考えられます。感覚地図とは、目で見た景色、におい、音、道順、建物の配置などを頭の中で結びつけた地図のようなものです。
猫は自分の生活圏をよく覚えています。どこに隠れ場所があるか、どの道が安全かなどを経験として記憶していると考えられます。外に出る習慣がある猫ほど、この感覚地図ができている可能性があります。
一方、完全室内飼いの猫は、家の中の地図には詳しくても、外の地図を持っていません。そのため、外に出た瞬間にパニックになり、帰るよりも隠れる行動を優先することがあります。
つまり、猫が帰れるかどうかは帰巣本能があるかだけでなく、「その場所を知っているか」「落ち着いて判断できるか」などにも左右されます。猫の帰巣行動に関する研究は限られているため、過信せず、脱走させない環境づくりが何より大切です。
まとめ

猫には帰巣本能があるかもしれないと考えられていますが、その仕組みはまだ分かっていません。様々な要素を組み合わせて、家の方向を探している可能性があります。
とはいえ、帰巣本能があったとしても、必ず帰ってこられるわけではありません。特に室内飼いの猫は外の環境に慣れておらず、迷子になると近くに隠れて動けなくなることもあります。愛猫を守るためには、帰巣本能に期待するより、脱走を防ぐ対策・早期の捜索を徹底しましょう。