冬に警戒すべき「尿石症」

猫の健康管理で冬に最も警戒すべきトラブルの一つが「下部尿路疾患(FLUTD)」、特に「尿石症」です。
寒くなると飲水量が減り、尿が濃くなることで、膀胱の中に砂や石(結晶・結石)ができやすくなります。
なぜ冬は「石」ができやすいのか?
猫という動物は、祖先が砂漠で暮らしていたために、少ない水分で生きていけるよう、尿を濃縮する能力が非常に高くなっています。
しかし、この優れた能力が、現代の飼育環境下では裏目に出てしまうのです。
冬特有のリスク・スパイラル
飲水量の低下
寒さで活動量が減り、喉の渇きを感じにくくなります。また、飲み水が冷たすぎると、さらに飲むのをためらうようになります。
尿の濃縮
水分摂取が減ると尿の「比重」が高まり、尿に含まれるミネラル成分(マグネシウム、リン、カルシウムなど)の濃度が高くなります。
結晶の発生
濃くなった尿の中でミネラルが結晶化します。これがストルバイトやシュウ酸カルシウムといった「石の卵」です。
滞留時間の延長
寒さで暖かい場所から動きたくない猫は、トイレに行く回数自体を我慢してしまうことがあります。
に尿が長く留まるほど、結晶は大きく成長し、結石へと変わります。
特にオス猫の場合、尿道が細く長いため、小さな砂状の結晶でも詰まってしまい、「尿閉」(おしっこが出なくなる状態)という命に関わる緊急事態に陥りやすいので注意が必要です。
見逃さないで!泌尿器トラブルのSOSサイン

尿石症や膀胱炎が始まると、猫は以下のような行動・症状で異変を伝えます。
トイレの回数が増える
何度もトイレに行くのに一回量はごくわずか、もしくは出ていない。
不適切な場所での排尿
トイレ=痛い場所と認識し、布団やカーペットでするようになる。
トイレで鳴く
排尿時の痛みにより、いつもとは違う鳴き方をする。
陰部を執拗に舐める
排尿時に違和感や痛みを感じているサイン。
尿の色が変化
血尿(キラキラした砂のようなものが見えることも)。
冬の水分補給における「5つの工夫」

しかし「水を飲みなさい」と言って聞く猫はいません。
そこで飼い主様が「猫が飲みたくなる環境」を作ってあげることが重要になってきます。
「ぬるま湯」の提供
多くの猫は冷たい水よりも、30℃~38℃程度のぬるま湯を好みます。
冬場はボウルの水がすぐに冷えてしまうため、ペット用の保温ヒーターを利用したり、一日に数回お湯を足して温度をキープしてあげましょう。
水飲み場の「増設」と「配置」
冬の猫は移動を嫌がります。
「こたつから出たくない」「寝床から遠い」という理由で飲むのを諦めさせないよう、猫がよく過ごす場所のすぐ近くに水飲み場を設置してください。
ポイント
トイレのすぐ横は避けましょう!(猫は清潔好きなので、排泄場所の近くの水を嫌う傾向があります)。
「ウェットフード」の活用
ドライフードの水分含有量が約10%なのに対し、ウェットフードは約80%が水分です。
さらに水分を摂らせるもう一工夫
ウェットフードにさらに大さじ1~2杯のぬるま湯を混ぜて「スープ仕立て」にするのが最も確実な水分補給法です。
これだけで、一日の必要水分量の大半を確保できる場合もあります。
「風味」で誘惑する
真水に興味を示さない子には、猫用のちゅーるを水で薄めたり、塩分無添加の「ささみの茹で汁」や「鰹節の出汁(少量)」を水に加えるのも効果的です。
ただし、腎臓病などの持病がある場合は必ず事前に獣医師に相談してください。
器のこだわり
ヒゲが器の縁に当たるのを嫌う猫も多いため、広口の器や、陶器・ガラス製など素材を変えて好みを把握しましょう。
流れる水が好きな子には循環式給水器も有効です。
トイレを「快適な場所」にするサポート

水分を摂らせることと同じくらい、「おしっこを我慢させないこと」も大切です。
トイレを暖かく
廊下や玄関など、極端に寒い場所にトイレがあると、猫は行くのをためらいます。
リビングなどの暖かい場所に設置するか、トイレの足元にマットを敷くなどの工夫をしてみましょう。
常に清潔に
冬は乾燥して尿の臭いが目立ちにくいですが、猫の鼻は敏感です。
常に清潔を保ち、気持ちよく排泄できる環境を整えてください。
小さな工夫が寿命を延ばす

猫にとって、泌尿器の健康は健康寿命に直結します。
冬の間の少しの配慮が、将来の腎不全や痛みを伴う結石症を防ぐ最大の予防策となるのです。
まずは愛猫のトイレの回数を確認し、いつものお水に少しだけお湯を足して「ぬるま湯」に変えてみることから始めてみてください。