1.ゴハンやおもちゃ遊びを先住猫に譲る

多頭飼いのおうちでありがちなのは、先住猫にゴハンの順番を譲ったり、横取りされてしまう場面です。一見すると、気遣いや遠慮のように見えますが、本当のところはどうなのでしょうか?
人間の場合、特に兄弟間で、食事を巡ってたびたび「抗争」が勃発します。
たとえば、部活帰りで遅く帰ってきた5歳年上のお兄ちゃんに、お楽しみに取っておいた最後のエビフライをつまみ食いされたら、弟はきっと激怒するはずです。力の差があろうが、「何すんだよ!」と食ってかかります。
ところが、猫の場合は、たとえ力の強い先住猫に横取りされても、文句のひとつも言いません。犬ほどシビアではありませんが、猫の間にも緩やかな上下関係があり、優位に立つ者に対してはそれなりに敬意を払っているからです。
猫の心理では、おそらく、「正直、揉めたくないなぁ…」というのが本音なのでしょう。ゴハンを横取りされたとしても、気づいた飼い主さんが先住猫を制したり、少なくなった分を補充してくれます。大ごとにして事件化するほどではないと思っているのかもしれません。
ゴハン問題と同じように、飼い主さんとのおもちゃ遊びやスキンシップの最中にも、ボス的な先住猫が割り込んでくると、ピタッとやめてしまうパターンもあります。
2.バタバタと忙しい飼い主さんをそっと見つめる

続いては、飼い主さんへの気遣いや遠慮が感じられるシーンです。
最もわかりやすいのは、飼い主さんがおうちで美味しい夕食をせっせと作っているときです。飼い主さんの視界にさりげなく入った愛猫は、料理中の飼い主さんの慌ただしい様子をそっと見つめます。
本心では、「かまって欲しい」や「甘えたい」「おもちゃ遊びの続きがやりたい」などの要望を抱えているのですが、つけ入る隙もなく、いつものようにスリスリしに行けません。
いったんキッチンで調理が始まると、簡単にはかまってもらえない、ということも愛猫は十分に学習しているはずです。もちろん、気になった飼い主さんが忙しい合間に、ときどきネコナデ声で話しかけてくれることも。
猫は観察力が鋭く、普段から飼い主さんの行動をしっかり把握しています。
一方で、飼い主さん目線では、愛猫の慎み深い行動に心動かされ、「なんて内面の美しい子だ(健気という意味)…」と感じ入ってしまう場面かもしれません。いつにも増して、愛くるしさがあふれてきます。
丹精を込めた逸品がひと通り出来上がると、飼い主さんはほっとして、愛猫の望み通りにかわいがってあげます。
限りなく遠慮に近いような行動が、まるで料理の隠し味のように、飼い主さんのやさしさを存分に引き出すことも、愛猫にはちゃんとお見通しです。
3.体調不良時の飼い主さんとの接し方

飼い主さんが風邪などで調子を崩した際にも、愛猫はまるで気遣ってくれるような行動に出ることがあります。
いつもはベッタリの甘えん坊派なのに、適度に距離を取ってそれとなく飼い主さんを見守る、あるいは反対に、通常の超絶クールな態度は影を潜め、心配してくれるかのようにそばにずっといてくれる。普段とは、まったく両極端な反応です。
このケースでは、飼い主さんの身に起こった変化に何らかの不安を感じた結果、「とりあえず、様子見しておこう…」という愛猫の気持ちが隠されているかもしれません。
いっしょに暮らす飼い主さんは、愛猫にとってなくてはならない存在であり、「世界」そのものです。平和と安全を常に希求する立場からすれば、「世界」が熱にうなされ、ゴホゴホと咳き込み、たびたびトイレに駆け込む姿は、やはり、無視できない状況なのでしょう。
ツン多めの愛猫が看病してくれるかのように寄り添ってくれると、高熱で意識を朦朧とさせながらも、飼い主さんはとんでもなくうれしくなるはずです。「たまに風邪を引くのもアリかも…」とつい不謹慎な思いが頭をよぎります。
まとめ

猫の辞書に「遠慮や気遣い」はあるのか?今回は、気まぐれでワガママ、とイメージされがちな猫の意外な一面について考察しました。
遠慮や気遣いに見えるような猫の行動は、猫同士間を除いて、ほとんどの場合、いつもと違う雰囲気を察し、状況を見極めようとしている結果と言えます。飼い主さんが風邪で寝込んでいるときに、寄り添ったり、逆に距離を取ったりするのも、そのあらわれです。
ただ、本当に愛猫にかしこまられてしまうと、どう対応していいのかわからないのも飼い主さんの本音でしょう。遠慮や気遣いなどお構いなしに、自由奔放にふるまうところが、猫の最大の魅力かもしれません。
今後も、飼い主さんは、遠慮や気遣いを適度に挟みつつ、愛猫が上機嫌に暮らせるように、やさしく見守り続けてください。