1.とにかく心細い…

猫はハプニングを嫌い、一定のリズム、安定した暮らしを好む動物です。環境が急に変わってしまうと、調子を崩すことさえあります。数日間の滞在にせよ、ペットホテルで過ごす時間は、愛猫にとって非日常世界そのものです。
まわりの匂いやケージの居住性、お世話してくれる人など、どれも未知のことばかりで、とにかく心細くてしょうがありません。特に、普段からデリケートな子の場合、飼い主さんの想像以上に強いストレスがかかります。
子供の頃の思い出にたとえると、初めて幼稚園に通った日に近い心境かもしれません。ワクワクよりも、頼りになる家族(飼い主さん)がいない寂しさが募って、不安でいっぱいです。
やむをえない事情でペットホテルを利用する際には、愛猫が少しでも安心できるように、お守り代わりとして、愛用している毛布やぬりぐるみなどを用意してあげてみてください。
2.緊張しっぱなし…

野生時代からの名残で、猫は縄張りをとても大事にします。日々のパトロール業務もその一環です。テリトリーに侵入する者に対しては、追い払うなど、激しい行動に出ます。持って生まれた本能なので、猫自身も簡単に制御できません。
そんな猫がペットホテルを訪れたら、どうなるのでしょうか?
いつも以上に警戒して、自分の身を守ろうとするに違いありません。ましてや、よその猫や他の動物(犬や小動物など)といっしょの施設だった場合、緊張を解く余裕すらなく、ただひたすら精神的に消耗してしまうはずです。
私たち人間で言うと、極度に人見知りな中学生が転校初日に直面する心理的葛藤に似ている状況かもしれません。まわりに高い壁をつくって、そのなかに隠れていたい気持ちです。
現在の飼い猫は、完全室内飼育が主流で、動物病院の通院時を除けば、外の世界を知りません。平気な子ももちろんいますが、なかには、ペットホテル体験で大きなストレスを抱えてしまう子もいます。その事実を飼い主さんは前もって知っておきましょう。
3.おうち(飼い主さん)が恋しい…

自由気ままに見える猫ですが、自分好みの環境が整ってこそ、はじめてのびのびと暮らせます。言い方を変えれば、「わが家がいちばん」であり、おうちの外はあくまでアウェイの世界です。
実は、ペットホテル滞在中の猫には、「ごはんを食べない」「トイレを我慢する」「眠れなくなる」などの異変が表れるケースもあります。食器が変わっただけで食欲がなくなる子もいるほど、猫は環境に左右される動物です。
いつもと違う匂いに囲まれながら、いつもと違う食器でごはんを食べ、いつもと違う猫砂でトイレ…さまざまな「違う」がどっと押し寄せてくれば、混乱するのも無理はありません。猫は、基本的に「いつもと同じ」が大好きです。
「いつもと同じ」の究極形と言えば、まさしくおうち空間です。自分の匂いのついた毛布や猫ベッドが用意されて、快適そのもの。お気に入りの食器でごはんを食べれば、食欲もモリモリ湧いてきます。猫砂だって使い勝手抜群です。
何よりも、おうちには常にやさしくしてくれる飼い主さんがいます。愛猫にはそれこそが重要です。ペットホテルの人がどんなに親しく接してくれようとも、飼い主さんには敵いません。
ペットホテルで過ごす愛猫の気持ちを翻訳すると、「おうち(飼い主さん)が恋しい…」と言ったところでしょうか。みなさんのなかにも、たとえば、大学時代、外国留学中に同じ思いにとらわれた人がいるかもしれません。
ペットホテルから帰宅後のフォロー対策

ペットホテルから帰宅後、飼い主さんが心がけておくポイントはいくつかあります。まず、大事なのは、ごはんを以前のように摂取できているかどうか、確認することです。あわせて、トイレの使用状況もチェックしてみてください。
いつもよりも長くいっしょに過ごし、なおかつ、スキンシップの回数も増やすと、ペットホテルで溜まったストレスが解消されることもあります。しばらくの間、怖がっているようであれば、安心して隠れられる場所をつくってあげましょう。
ペットホテルには、ペットホテル専門店をはじめ、動物病院併設のもの、あるいは、ペットショップ内に設けられているタイプもあります。
長期入院や旅行、冠婚葬祭などで、ペットホテルを利用する際は、施設やサービス内容、愛猫との相性などをあらかじめ吟味したうえで、最適なところを選んでみてください。
まとめ

動物病院と同じで、ペットホテル訪問もまた、愛猫に大きなストレスを与える場合があります。今回は、ペットホテル滞在中の猫の心理について、3つの視点に基づいて紹介しました。
長期不在時には、ペットホテルのほかに、ペットシッターという選択肢もあります。それぞれ、愛猫にもたらす影響を考えつつ、適切な方法を選んでみてください。本記事がみなさんの今後のために役立てば幸いです。