猫の『虐待』に遭遇したら取るべき5つの対処法 ネグレクトや遺棄…私達にできることとは

猫の『虐待』に遭遇したら取るべき5つの対処法 ネグレクトや遺棄…私達にできることとは

猫の虐待は法律で禁止されており、れっきとした犯罪です。しかし、実際に虐待を目撃したとき「どうすればいいかわからない」「どこに相談すればいいの?」と戸惑うこともあるでしょう。本記事では、猫の虐待に気づいたときに取るべき適切な対処法を詳しく解説します。緊急時の対応から通報のポイント、私たちが日常的にできることまで、一つずつ紹介していきます。もしものときに迷わず行動できるように、一緒に考えていきましょう。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫の虐待とは?どのような行為が該当するのか

安心して眠る猫

「猫の虐待」と聞くと、殴る・蹴るといった暴力を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、虐待にはさまざまな形があり、どれも猫の命や健康を脅かす重大な問題です。ここでは、代表的な虐待の種類について解説します。

身体的虐待

最も分かりやすい虐待の形で、猫に直接危害を加える行為です。例えば、以下のような行為が該当します。

  • 殴る、蹴る、叩く
  • 物を投げつける
  • 高いところから落とす
  • 尻尾を引っ張る
  • 熱湯をかける

このような行為は、猫に大きな苦痛を与えるだけでなく、命を奪うこともあります。日本の法律では、動物への暴力行為は「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」で禁止されており、罰則も定められています。

ネグレクト(適切な世話をしない虐待)

暴力をふるわなくても、猫に必要な世話を怠ることも虐待の一つです。これを「ネグレクト」と呼びます。具体的には、以下のような行為が該当します。

  • 餌や水を与えない
  • 劣悪な環境(汚れたケージ、異常な多頭飼育など)で飼育する
  • 病気やケガをしても適切な治療を受けさせない
  • 猫を外に放置し、極端な暑さや寒さにさらす

ネグレクトは、一見「放置しているだけ」に見えるかもしれませんが、猫の健康や命を奪う深刻な問題です。飼い主が意図的でなくても、結果的に猫が苦しむ場合は虐待とみなされることがあります。

遺棄(飼育放棄)

猫を飼うことを放棄し、適切な引き取り手を探さずに外に捨てることを「遺棄」といいます。これは法律で禁止されている虐待行為の一つです。

【具体的な例】

  • 飼えなくなった猫を公園や山に置き去りにする
  • 引っ越しの際に猫を置いていく
  • ダンボール箱に入れて道端に捨てる

猫は人間の助けなしでは生きていくことが難しい動物です。突然外に捨てられると、餌を見つけられなかったり、交通事故に遭ったり、ほかの動物に襲われたりして命を落とすこともあります。

「飼えなくなったから捨てる」というのは決して許される行為ではありません。もし飼育が困難になった場合は、信頼できる里親を探したり、動物愛護団体に相談したりするなど、責任を持って対処する必要があります。

猫の虐待を目撃したときに取るべき5つの対処法

スマホを操作する手元

猫の虐待を目撃すると、ショックを受けたり、怒りを感じたりするかもしれません。しかし、感情に任せて行動すると状況が悪化したり、証拠が不十分で対応してもらえなかったりすることも。

ここでは、具体的に取るべき5つの対処法を紹介します。

1.冷静に状況を確認する

猫が虐待を受けているのを見たり、疑わしい状況を目にしたりしたとき、まず大切なのは冷静になることです。感情的に加害者を非難したり、すぐにSNSで拡散したりすると、かえって事態が悪化する可能性があります。

【確認すべきポイント】

  • 虐待の内容:暴力を振るっているのか、餌や水を与えていないのかなどを把握する
  • 猫の状態:ケガをしているか、衰弱しているか、外に放置されていないかを確認する
  • 場所と日時:どこで、いつ虐待が行われたのかを正確に記録する

証拠が不十分だと、警察や動物愛護センターに相談しても対応が難しくなることがあります。まずは事実をしっかり把握しましょう。

2.証拠を確保する

虐待の事実を証明するためには、できるだけ客観的な証拠を集めることが重要です。証拠があることで、専門機関が迅速に対応しやすくなります。

【証拠として有効なもの】

  • 写真や動画:スマートフォンなどで撮影し、虐待の様子を記録する
  • 目撃情報のメモ:日時、場所、加害者の特徴(服装や車のナンバーなど)をメモする
  • 他の目撃者の証言:同じ虐待を見た人がいれば、証言を記録してもらう

ただし、証拠を集める際は、加害者に気づかれないよう注意しましょう。自分の安全を第一に考えて行動してください。

3.警察や専門機関に通報する

虐待を止めるためには、適切な機関に通報することが不可欠です。状況に応じて、警察や動物愛護センターなどに相談しましょう。

緊急の場合はすぐに110番通報し、「猫が虐待されている」と具体的な状況を説明しましょう。例えば、以下のように伝えるとスムーズです。

「○○市○○町の公園で、男性が猫を蹴っていました。猫はうずくまって動けません」

警察は人命優先のため、対応が遅れることもありますが、動物愛護法違反の可能性がある場合、加害者への指導や捜査が行われることがあります。

また、明らかに暴力が振るわれているわけではないが、猫が劣悪な環境に置かれている、繰り返し虐待を受けている様子が見られる場合は、以下の機関に相談しましょう。

  • 動物愛護センター(各自治体)
  • アニマルポリス(設置地域のみ)
  • 保健所や保健センター

通報の際は、証拠を提示すると対応してもらいやすくなります。

4.SNSでの拡散には注意する

虐待の事実を広めたい気持ちはわかりますが、SNSでの拡散には注意が必要です。

【拡散のリスク】

  • 加害者が警戒し、証拠を隠滅する可能性がある
  • 被害に遭っている猫がさらにひどい虐待を受ける恐れがある
  • 目撃者の個人情報が特定されるリスクがある

どうしても広めたい場合は、動物愛護団体に相談し、適切な方法で情報を発信してもらうのが安全です。

5.地域や動物愛護団体と協力する

虐待を防ぐためには、個人の力だけでなく、地域全体で取り組むことも大切です。例えば、自治体により以下のような取り組みがされています。

  • 地域の動物愛護団体に相談し、支援を受ける
  • 地域猫活動(TNR活動など)に参加し、野良猫の保護環境を改善する
  • 近隣住民と協力し、虐待が行われていないか注意する

また、動物虐待についての知識を広めることで、周囲の人が虐待に気づきやすくなります。日頃から動物愛護に関心を持ち、できることを少しずつ実践していきましょう。

まとめ

オリに入った子猫

猫の虐待は決して見過ごしてはいけない深刻な問題です。しかし、実際に虐待を目撃したとき、どう行動すればよいのか迷ってしまうこともあるかもしれません。

本記事で紹介したように、冷静に状況を確認し、証拠を確保したうえで、警察や動物愛護センターなどの専門機関に通報することが重要です。また、SNSでの拡散には慎重になる必要があり、長期的な視点で地域や動物愛護団体と協力することも大切です。

一人の行動が、猫の命を救うきっかけになります。「自分には何もできない」と思わず、できることから始めてみましょう。猫たちが安心して暮らせる社会を作るために、私たち一人ひとりの意識と行動が求められています。

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