猫の『鼻血』はトラブルのサイン?疑うべき3つの病気 思っているより深刻なケースも

猫の『鼻血』はトラブルのサイン?疑うべき3つの病気 思っているより深刻なケースも

匂いの世界で生きる猫にとって、鼻は非常に大切な器官です。鼻まわりのトラブル、特に鼻血が出た場合、飼い主さんもきっと心配になることでしょう。今回は、鼻血の裏に隠されている病気について紹介します。まさかのときに備えて、ひと通り理解しておいてください。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

1.鼻炎・副鼻腔炎の疑い

鼻を拭き取られる子猫

猫の鼻は人間と構造が異なっているため、基本的に鼻血は少ない、と言われています。ケガしたわけでもないのに、鼻から血を流している場合は、注意が必要です。何かの病気にかかっている疑いがあります。

まず、可能性があるのは、鼻炎・副鼻腔炎です。文字通り、鼻の粘膜に炎症が起こり、副鼻腔炎では、副鼻腔内に膿などが溜まる状態のことを指します。

原因で多いのは、猫ウィルス性鼻気管炎や猫カリシウィルス感染症などの「猫風邪」です。また、細菌や真菌が引き金になることもあります。

症状は、鼻水やくしゃみ、涙目、目やになどが一般的です。状態が悪化すると、ネバネバ系の鼻水になったり、鼻水そのものに膿や血が混じったりします。

歯周病の場合も、副鼻腔に膿がたまって鼻から血液と一緒に出る場合があります。

2.血液凝固のトラブル

止血剤を見つめる猫

人間でもそうですが、出血すると、血液内の血小板が正常に働き、やがて、血が止まります。いわゆる「血液凝固」と呼ばれるものです。

この血液凝固の働きに異常が発生すると、猫の場合でも、出血しやすくなったり、止血しにくくなったりします。

血液凝固のトラブルには、血小板の減少と機能障害、2つの側面があります。前者は、骨髄疾患をはじめ、感染症、免疫疾患などがきっかけ。後者は、先天性疾患の血友病などが代表例です。

両方の穴からの同時出血以外にも、紫斑や白目などの粘膜出血、腫れによる歩行異常、血便などの症状があらわれる場合もあります。

ちなみに、血液凝固の異常で最も厄介なのが、DIC(藩主性血管内凝固症候群)です。DICとは、悪性腫瘍や白血病などの基礎疾患を背景に、血液凝固の働きが過剰なまでに活発化し、血栓が発生する状態のこと。

結果として、あちこちに生じた血栓が血管を詰まらせ、各臓器が正常に機能しなくなります。最悪の場合、多臓器不全により、命を失うこともある病気です。

3.鼻腔内腫瘍

動物病院の猫

鼻腔内腫瘍もまた、猫の鼻血を引き起こす病気のひとつです。良性は少なく、ほとんどが悪性で、腫瘍の種類にはリンパ腫や扁平上皮癌、線維肉腫などがあります。

主な症状は鼻水やくしゃみ、目やに、涙、食欲不振ですが、悪化するにつれ、鼻血、あるいは、腫れによる顔面変形などに発展します。

腫瘍がもう片方の鼻腔内に及ぶと、両方の鼻から出血。いまだに原因がわからない怖い病気です。

CT検査や組織生検(鼻腔内の腫瘍を一部採取)で状態を見極めたのち、リンパ腫がベースになっている場合は、抗がん剤治療に移行します。それ以外のケースでは、放射線療法、外科手術、化学療法などが治療の選択肢です。

まとめ

猫の鼻アップ

結論から言うと、外傷を除けば、愛猫の鼻血には何らかの病気が隠されていることが多いです。今回、紹介したのは、鼻炎・副鼻腔炎、血液凝固のトラブル、鼻腔内腫瘍の3つの可能性です。

解説したように、命に関わるものもあるため、迅速な対応が欠かせません。鼻血はもちろん、愛猫の鼻まわりで異常を発見したら、何よりも先に動物病院へ相談しましょう。

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