カラスがさらってきた子猫
相談
私は動物愛護団体の代表をしています。
ある日、電話がかかってきました。
「子猫拾ったんですが…」
猫の出産シーズンには、そういう電話が頻繁にかかってきます。
どうしようもないケースのみ対応し、どうしてもの時だけ保護していますが、もうその時点でキャパオーバーでした。でも無視するわけにもいかず、とりあえず事情を伺ったところ、
自宅屋根でカラスが騒いでいて、何事かと外に出てみたら、目の前の道路で子猫が1匹、カラスに襲われていたとのこと。慌ててカラスを追い払い、保護したということでした。
覚悟
その方は猫に対しての知識がなく、とりあえず牛乳を温めてお皿に入れてやっていると言われたので、「人間用の牛乳はダメです!子猫用のミルクと哺乳瓶かシリンジ(=注射器)を買ってきて与えてみてください」と頼みました。
当時の私は、もう子猫をこれ以上保護できるような状態ではなかったのですが、多分このままでは死んでしまうだろうと、覚悟を決めました。
保護
保護先で子猫を引き取り、そのまま動物病院に連れて行きました。
いきなり母猫のオッパイから引き離された子猫は、人口の哺乳瓶やシリンジからはうまくミルクが飲めないでいました。その状態がもう数時間続いていたので、ひとまず獣医師さんにカテーテルで授乳してもらいました。
その後すぐに自宅に連れ帰ったので、いざという時はカテーテルでの授乳覚悟でしたが、少しずつシリンジからミルクを飲むことができました。
体重はまだ200gしかありません。猫風邪も耳ダニも真菌などもなく、とても綺麗な状態でしたが、あちこちにつつかれた小さな傷がありました。
カラスがくわえてきて道路に落とした可能性があるので、骨折していないか全身チェックしていただきましたが、内臓共に特に異常はみられませんでした。生後1週間~10日くらいの目が開いたばかりの女の子でした。
命名:小雪
一時預かりさんの元へ
その後、小雪の一時預かりさんをSNSで探したところ、以前も預かりさんをしてくれた当団体のボランティア・トリマーさんが挙手してくれました。彼女は以前も、4匹の目が開いたばかりの子猫たちの一時預かりをしてくれたことがありました。
彼女はトリミングサロンを経営しています。
3時間おきにミルクをあげなければならないため、彼女は小雪を仕事場に連れて行ってくれました。
家に戻れば2匹の小型犬がいます。その子たちも、小雪のベビーシッターをしてくれました。
里親様の元へ
心強い協力者を得て小雪は無事成長していきました。そして、最終的に彼女が里親様につないで下さいました。
現在、小雪は『しらたま』と改名され、家族の一員として里親様のお家で大切に育てられています。
最後に
小雪はカラスにさらわれたことで、運よく一人の女性に助けられ、そして当団体が保護したことで心優しい一時預かりさんに繋がり、最終的に永遠の家族に巡り合うことができました。
小雪は、最強の運をもっていたと思います。もしも、カラスにさらわれていなければ、小雪は野良猫として生涯を終えていたことでしょう。
またあの場所にカラスが落としていなければ、女性が気が付くこともなかったことでしょう。女性が当団体に相談していなければ、一時預かりさんに繋がることも里親様に巡り合うこともなかったことでしょう。
巡り合わせというものは、何が幸いするかわかりません。
複数の人たちが1匹の子猫をなんとか助けようと動いたことで、子猫は幸せを掴むことができました。助けが必要な命と出逢った時は、自分には無理だと最初から諦めずに、どうか助ける勇気をもってください!