猫は魚を食べても大丈夫?

猫は、十分に加熱し、骨を取り除いた味付けなしの魚であれば、少量食べられます。ただし、魚は猫に必要なすべての栄養を満たすわけではないため、主食にはできません。
毎日の基本となる食事は、必要な栄養素がバランスよく含まれている「総合栄養食」のキャットフードを与え、魚はおやつやトッピングとして少量にとどめましょう。
猫が食べてもいい魚

加熱調理や骨の除去を適切に行うことで、猫に安全に与えられる代表的な魚を紹介します。
鮭(サーモン)
鮭は加熱処理を行い、骨を丁寧に取り除けば猫に与えられます。与えられる部位は加熱した身の部分です。主な栄養として、良質なたんぱく質を含みます。
調理時は油や調味料を使わず、ボイルや蒸し焼きで中心まで火を通します。脂質が多いハラス(お腹周りの身)やカマ(エラの後ろの身)といった部位はカロリーが高いため、与えすぎないよう注意しましょう。
また、人間用の塩鮭やスモークサーモンは塩分や香辛料が含まれるため避けてください。
タイ
タイは白身魚の一種で、加熱して骨を取り除くことで与えられます。主なたんぱく質源となり、脂肪分が比較的少ない背側の身を与えます。
調理は味付けをせずに茹でるか蒸す方法が適しています。タイは骨が硬くて鋭いため、喉や消化管を傷つけないよう、細かくほぐしながら骨を完全に除去してください。
タラ
タラも白身魚で、加熱すれば猫に与えられる魚です。クセが少なく、より脂肪分が少ない尾に近い部位の身を与えます。主な栄養素はたんぱく質です。
フライパンでの油焼きではなく、お湯で茹でるか蒸して調理します。タラは小骨が多く残っていることがあるため、ほぐしながら指先で小さな骨までしっかり確認して取り除きます。
カレイ・ヒラメ
カレイやヒラメも加熱処理を施すことで猫に与えることができます。与える部位は加熱した身の部分で、良質なたんぱく質を含んでいます。
調理時は一切の味付けをせず、ボイルなどで十分に加熱してください。ヒラメやカレイは縁側などの部位や小さな骨が混ざりやすいため、細かくほぐして骨のない状態にします。
猫に与える際に注意が必要な魚

与え方や量によっては健康被害を引き起こす可能性があるため、給与頻度や調理法に配慮が必要な魚の種類を解説します。
イワシ
イワシなどの青魚は、不飽和脂肪酸を多く含みます。これらを継続的かつ大量に与えると体内の栄養バランスが崩れて、黄色脂肪症(イエローファット)と呼ばれる皮膚下の脂肪が炎症を起こす病気につながる可能性があります。
十分に加熱し、骨や味付けを取り除いたものを少量与える程度であれば問題ありませんが、主食にしたり、毎日与えたりするのは避けてください。
サバ
サバも不飽和脂肪酸が多く含まれる青魚です。大量摂取や長期的な給与は、黄色脂肪症のリスクを高めます。
黄色脂肪症は、不飽和脂肪酸の過剰摂取とビタミンE不足など、食事全体の栄養バランスの崩れが関係して発生します。
なお、ビタミンEのサプリメントを与えれば大量に与えてもよいというわけではありません。与える際は加熱して骨を除き、ごくたまに少量だけに留めます。
アジ
アジも脂質を含み、偏った与え方をすると栄養バランスを乱す原因になります。イワシやサバと同様に、不飽和脂肪酸の摂りすぎに気を配る必要があります。
アジを与える場合も、主食として日常的に与えるのではなく、加熱した身を少量のみにする配慮が必要です。ゼイゴと呼ばれる硬いうろこや小骨も確実に除去してください。
サンマ
サンマは脂質が豊富な魚であり、継続して大量に与えることは避けるべきです。青魚に共通する注意点として、過剰な脂質摂取による黄色脂肪症の発症リスクが挙げられます。
たまの楽しみに加熱したものを少量与える範囲であれば過度な心配は不要ですが、毎日与えるような偏食は絶対に避けましょう。
ブリ
ブリは成長段階や部位によって脂質が非常に多く含まれます。脂質の多い腹側の部位を継続して与えると、黄色脂肪症のリスクだけでなくカロリーオーバーにも繋がります。
与える場合は、脂身の少ない部位を選び、完全に加熱して骨を取り除いたうえで、少量のみにとどめることが大切です。
マグロ
マグロは赤身魚として人気がありますが、同じ魚ばかりを主食のように毎日与えることは推奨されません。赤身魚を偏って与え続けると、栄養バランスの偏りや過剰な成分摂取につながる可能性があります。
マグロを与える際も、しっかり加熱し、調味料を使わずにトッピング程度で少量にとどめましょう。
カツオ
カツオもマグロと同様に赤身魚であり、猫が好む香りを持っていますが、主食として毎日与えるのは適切ではありません。不飽和脂肪酸や特定の成分に偏らないよう、給与量と頻度を制限することが重要です。
無添加で加熱されたものを、おやつとして少量与える範囲に抑えてください。
猫が食べてはいけない魚

中毒症状や重度の消化器障害を引き起こす危険性があるため、猫には絶対に与えてはならない魚の種類を説明します。
フグ類
トラフグ、マフグ、ヒガンフグ、ショウサイフグ、ドクサバフグなどのフグ類は、テトロドトキシンという強力な自然毒を含んでいる可能性があります。この毒素は通常の加熱調理を行っても分解されず、失われません。
人間用に適切に処理されたフグであっても、猫に与える必要や安全域はありませんので、絶対に与えないでください。
バラムツ・アブラソコムツ
バラムツやアブラソコムツは、体内に人間や動物が消化しにくいワックスエステル(油脂成分)を大量に含んでいます。
これを摂取すると下痢や油漏れなどの著しい消化器障害を引き起こすため、日本では食品衛生法により食用としての販売が禁止されています。
猫にとっても非常に有害であるため、絶対に与えてはいけません。
シガテラ毒を持つ可能性がある魚
バラハタ、バラフエダイ、アカマダラハタ、イシガキダイ、オニカマス、ドクウツボなどは、シガテラ毒と呼ばれるプランクトン由来の毒素を保有している可能性があります。シガテラ毒は加熱しても無毒化されません。
なお、該当する魚種のすべての個体が常に有毒というわけではありませんが、産地や安全性が確認できない場合は与えないでください。
種類や安全性を確認できない魚
自分で釣ってきた魚や、市場・店舗などで魚種が特定できないもの、安全性が確認されていない魚は与えないでください。
どのような毒素や寄生虫、環境汚染物質が含まれているか判断できないため、猫の健康を脅かす危険性があります。確実に安全性が担保されている市販の魚を選ぶことが基本です。
猫に生魚や刺身を与えても大丈夫?

生魚や刺身は積極的に与えず、加熱した魚を選んでください。
生の魚には、ビタミンB1を破壊する「チアミナーゼ」という酵素が含まれている場合があり、摂取するとビタミンB1欠乏症を引き起こすリスクがあります。
また、生の魚肉には腸炎ビブリオなどの細菌や、アニサキスなどの寄生虫が存在する危険性もあります。
チアミナーゼの有無や含まれる量は、魚の種類によって異なります。また、生魚を一度少量食べたからといって直ちにビタミンB1欠乏症になるわけではありませんが、生魚を継続的・偏食的に与えることが健康上の問題を引き起こします。
チアミナーゼは加熱調理によって不活性化するため、必ず火を通し、加熱不足がないように調理してください。
魚に含まれる主な栄養素と猫への働き

魚にふくまれる栄養成分が猫の体にどのような影響を与えるか、それぞれの性質と適切な摂り方について解説します。
たんぱく質
魚には筋肉や皮膚、被毛などを形成するために欠かせないたんぱく質が含まれています。
ただし、すべての魚が同じように十分なたんぱく質量を含んでいるわけではなく、魚の種類や部位によって含有量は異なります。
猫に必要な主要な栄養は、魚からではなく総合栄養食から摂取させることが基本です。
脂質・DHA・EPA
魚の脂質にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった脂肪酸が含まれる場合がありますが、すべての魚に豊富に含まれているわけではありません。
また、人に対して言われる血液循環や健康維持への効果を、そのまま猫に当てはめることはできません。栄養補給目的で積極的に与える必要はありません。
タウリン
タウリンは猫にとって必須のアミノ酸であり、目や心臓の健康維持に関わっています。魚の血合いなどに含まれることがありますが、含有量は魚の種類によって様々です。
必要量のタウリンは、バランス良く配合された総合栄養食から十分に摂取できるため、魚から与えることを主目的とする必要はありません。
ビタミン
魚にはビタミンAやビタミンD、ビタミンB群などが含まれている場合があります。しかし、過剰に摂取すると健康を害するビタミンもあり、魚の部位によっても偏りがあります。
必要なビタミン類はキャットフードで網羅されているため、魚はあくまで風味を楽しむ程度にとどめるのが安全です。
ミネラル
魚にはカルシウムやナトリウム、マグネシウムなどのミネラル分が含まれます。ミネラルの過剰摂取やバランスの崩れは、尿路結石などの原因になることがあります。
特定の栄養素を期待して魚を過剰に与えるのではなく、キャットフードによる栄養バランスを最優先に考えてください。
猫に魚を与える際の注意点

愛猫の健康を守るために、魚を与える際に守るべき重要なポイントや禁忌事項をまとめています。
主食の代わりにしない
魚は必要な栄養素がすべて揃っているわけではないため、主食の代わりに与えてはいけません。
毎日の食事のベースは総合栄養食にし、魚を与える場合はほんの少量をトッピングやご褒美として与える程度にしてください。
生魚を習慣的に与えない
生魚を日常的に与える習慣をつけると、チアミナーゼによるビタミンB1欠乏や寄生虫感染のリスクが高まります。
安全のため、給与する際は必ず中心までしっかり加熱した状態のものを与えるように徹底してください。
骨を必ず取り除く
魚の骨は、加熱後であっても硬く尖っているため、口の中や喉、胃腸などの消化管を傷つけたり、刺さったりする危険があります。
骨を細かく砕いても危険性は残るため、骨は絶対に与えず、身から完全に除去してください。骨をカルシウム補給源として与えることも避けてください。
味付けや油を加えない
調理時に塩、醤油、みりん、その他の調味料や油を絶対に使用しないでください。
人間用の味付けは猫にとって塩分や脂質が過多となり、腎臓や内臓に負担をかける原因になります。完全に味付けなしの状態で調理してください。
干物や加工品を与えない
塩焼き、煮付け、干物、スモーク製品、練り物、オイル漬けの缶詰などの加工品は、塩分や油分、保存料、調味料が多く含まれているため与えてはいけません。
また、人間用のツナ缶も猫に必要な栄養を満たすものではないため、日常的な主食として与えないでください。
同じ魚ばかり与えない
特定種類の魚ばかりを長期的に与え続けると、栄養バランスが偏ったり、特定の成分の摂りすぎにつながったりします。
青魚の継続給与による黄色脂肪症のリスクなどを避けるためにも、同じ魚を毎日連続して与えることは控えてください。
アレルギーや消化不良に注意する
猫によっては魚に対して食物アレルギーを持っている場合や、うまく消化できずに嘔吐や下痢を起こす場合があります。
与える際は体調の変化に注意を払い、異変が見られたらすぐに給与を中止してください。
持病や療法食がある猫には自己判断で与えない
腎臓病や尿路結石、その他の持病があり療法食を食べている猫には、自己判断で魚を与えないでください。
魚に含まれるミネラルやたんぱく質が、病気の治療や管理に悪影響を及ぼす可能性があります。
猫に魚を食べさせる際の与え方・適量

トラブルを防ぎ、安全においしく魚を食べてもらうための具体的な手作り調理法と適量の目安を解説します。
中心部まで十分に加熱する
魚を与える際は、ボイルや蒸し調理などで中心部までしっかりと火を通してください。
十分な加熱により、細菌や寄生虫のリスクを低減させ、チアミナーゼを不活性化させることができます。生焼けの部分が残らないよう注意しましょう。
骨を取り除いて細かくほぐす
加熱が終わったら、手で身を細かくほぐしながら、太い骨から目に見えないような小骨まで残さず取り除きます。
ほぐすことで骨の有無を確認しやすくなり、大きな身を猫が喉に詰まらせるリスクを防ぐことができます。
味付けせずに与える
魚本来の味覚だけで猫には十分に味わいがあります。茹で汁を含めて、塩や出汁、醤油などの調味料は一切加えずに与えてください。
人用の料理から取り分けることも、塩分や油分が含まれるため避けましょう。
初回は少量から与える
初めて魚を与える際や、久しぶりに新しい種類の魚を与える場合は、ごく少量から試してください。
食後に下痢や嘔吐、皮膚のかゆみなどのアレルギー反応や消化不良を起こさないか様子を観察します。
おやつ全体を1日の必要カロリーの10%以内にする
魚を与える場合の量は、他のおやつも含めて1日の必要エネルギー量の10%以内に収める必要があります。
魚の種類によってカロリーや脂質量が異なるため、一律のグラム数ではなく、その時の食事全体のカロリーバランスを考慮してごく少量を与えてください。
猫が「危険な魚」や「魚の骨」を食べた場合の対処法

事故や誤食が発生してしまった際に、飼い主がとるべき確認項目と適切な応急対処について説明します。
食べた魚・量・部位・調理法・時間を確認する
万が一、危険な魚や骨付きの魚を食べてしまった場合は、焦らず状況を把握します。
食べた魚の種類、摂取した量、部位、生か加熱かなどの調理法、食べてからどれくらいの時間が経過したかをメモしてください。
注意すべき症状
誤食後に注意して観察すべき症状には、嘔吐、下痢、過剰によだれを垂らす、食欲不振、元気がないといった行動の変化があります。
さらに、体や足の震え、ふらつき、食べ物を飲み込みにくそうにする仕草、呼吸の異常や荒さなども重大なサインです。
すぐに動物病院へ相談すべきケース
フグや種類が不明な危険な魚を食べた場合、尖った骨が喉や食道に刺さった可能性がある場合、あるいは震えやふらつき、呼吸異常などの症状が見られる場合は、すぐに動物病院へ連絡して指示を仰ぎましょう。受診時は確認した状況を獣医師に正確に伝えます。
なお、飼い主の自己判断で無理に吐かせたり、口や喉の奥に見える骨を手で強引に取り出そうとしたりしないでください。粘膜を傷つけたり、症状を悪化させたりする危険があります。
まとめ

猫は、中心部まで十分に加熱し、骨を丁寧に取り除いた味付けなしの魚であれば少量食べることができます。ただし、魚は猫の主食にはならず、必要な栄養素はバランスの取れた総合栄養食から摂取するのが基本です。
生魚やフグ、骨付きの魚、塩分や調味料が含まれる加工品などは避け、与える際はおやつとして1日の必要カロリーの10%以内に留めましょう。安全な調理法を守り、愛猫の健康に配慮しながら与えることが大切です。