猫が語る人間との愛情の物語
ご紹介するのは、猫が主人公で、なおかつ猫が一人称で語る形の小説です。「猫ってこんなふうに人間を見ているのかしら」と、感心したり、あきれたり、感動したり。自分の愛猫と重ねてしまうかもしれません。
『猫後の教科書』著者 ポール・ギャリコ
まだほんの幼い、生後6週間の仔猫が母猫を亡くしひとりぽっちになってしまいます。まずい虫ばかり食べる毎日に見切りをつけ、仔猫は飼い猫になるべく行動を起こすことに。
賢さと可愛さ行動力を兼ね備えた仔猫は、首尾よく狙った家の飼い猫になります。この小説は著者である猫(!)が、生涯の経験を他の猫が生かせるようにと、猫たちに向けて書かれた「猫が人間の家をのっとり、ねこが人間をしつけ、猫が人間と幸せに暮するため」の、猫による、猫のための教科書なのです。
『あたしの一生:猫のダルシーの物語』著者 ディー・レディー
仔猫のダルシーは見定めに来た人間たちの中から、一人の女性を見出します。「彼女は誰かを選ぶかしら。あたし?あたしを選んでくれるかしら?あたしは、彼女にあたしの人間になってほしかった。彼女はあたしをほしがっているかしら?イエス!」互いを見初めた、ダルシーとダルシーの人間との生活が始まります。猫のダルシーの目線で綴られていく、日々の生活の中で起こるさまざまな出来事。「あたしの人間」に対するダルシーの愛。そしてその最期は、涙なしには読めません。
『旅猫リポート』著者 有川 浩
マンションの駐車場で、気ままな暮らしを送っている「僕」は野良猫。猫好きでおひとよしの人間「サトル」の車の上で寝るのがお気に入り(サトルは車の足跡をつけても怒らないから)。ある夜、車に後ろ脚を轢かれて怪我を負い、そのあまりの痛みに泣き叫びます。マンションから駆け出してくるサトル。
「ーすごい切羽詰まって呼ぶから目が覚めたんだ。ー呼んでたよな、俺のこと」
「えらかったな、俺を思い出して」
サトルに助けられ「ナナ」と名づけられ(不本意ながら)、サトルと暮し始めます。楽しい日々。それなのに……。ある日サトルが言います。
「ごめんな。お前を手放すつもりはなかったんだけど」
人生ってままならないものだぜ、僕は猫生だけど。こうして二人(一人と一匹)の里親めぐりの旅が始まります。どうしてサトルは大好きなナナを手放す決心をしたのでしょう。そしてナナは、新しい里親に誰を選ぶのでしょうか。最初から二人の行く末まで、目が離せません。
まとめ
今回ご紹介した3冊はどれも「猫目線」であるのが特徴です。そして、その一生が描かれています。人間と猫の在り方を考えさせられる部分もありますし、猫との暮らしあるあるも盛りだくさんです。
猫を飼っている方、これから猫を飼う方、そして、過去に猫を飼っていた方々に、ぜひ一読していただきたいと思います。