1.一点凝視
愛猫が壁の上辺りをじーっと見つめています。飼い主さんからすれば、そこに何かがあるようには思えません。
しばらく経って振り返ると、まだ同じ姿勢で一点集中モードに没頭しています。「もしかして、霊的なやつ…!?」と、ちょっと困惑してしまう状況です。
たとえば、賃貸マンションに暮らす飼い主さんは、ふと直観します。愛猫が熱心に壁を見つめているのは、何らかの理由により、前入居者家族の潮干狩りの思い出がプロジェクターのように映し出されているからだ、と。
不可解な状況に直面すると、とかく人間は不安になりがちです。普段のかわいさを知っているだけに、余計に愛猫が不気味な存在に見えてきます。
興味津々に何かをじっと見つめる行動は、実は、猫にとってそれほど珍しいものではありません。狩りのとき、対象となる獲物の動きをじっくり観察したうえで、襲いかかるタイミングを計ります。
愛猫が一点凝視、不動の姿勢でいた場合、不安や妄想はひとまず置いて、視線の先をたどってみてください。
本当に小さな虫が這っていたり、天井から垂れ下がったクモの糸が日差しの加減でキラッと光っていたり、案外、何でもなかったりします。
さらに、並外れて耳がいいので、遠くから聞こえてくる音を「これは何の音だ?」と聞き入っているケースもあります。いずれにしても、普段から猫は、視覚や聴覚の領域で人間とは比べものにならない能力を発揮しているわけです。
2.直立不動
いっしょに暮らしていると、何かの拍子に、直立する愛猫を目撃したことがあるかもしれません。人間の赤ちゃんだったら、「初めて立ったね記念日」として祝いたいところですが、愛猫の堂々たるたたずまいは、まるでミーアキャットのようで、何となく異様な光景です。
たちまち飼い主さんは、心配になります。このまま二本足でドスドス歩き、ダイニングテーブルの椅子にドカッとふんぞり返って座り、人間の言葉で「おい、メシ!」とエラそうに命令してくるようになったらどうしよう、と。
イエネコの起源をたどれば、野生時代にまでさかのぼります。自然界では自分の安全は自身で守らなければなりません。
二本足で立つと、四本足の姿勢よりもはるかに視野が広くなるので、外敵の存在にいち早く気づけます。その名残が愛猫の行動にも表れているわけです。
普段とは違う出来事が起こったとき、好奇心から「何だ?」と立つこともあります。状況をしっかり把握するためには、俯瞰(ふかん)して確認するのがいちばんなのでしょう。
3.変声
窓の外を眺めていたり、レーザーポインターで遊んでいたりするとき、今まで聞いたことのないような愛猫の鳴き声に驚くことがあるかもしれません。聞こえ方は人によって違いますが、「カカカ」「ケケケ」と表記されるのが一般的です。
「ニャー」や「ニャッ」などのかわいらしい声に慣れている飼い主さんは、当然のようにとまどいます。もしかすると、男性の変声期と同じで、いずれライオンやトラのような恐ろしい声に変わってしまうかもしれない、と。そうなったら、喉のゴロゴロ音もやけにワイルドになるに違いない…。
「クラッキング」と呼ばれるこの奇妙な鳴き声は、たとえば、窓の外の鳩に気づき、狩猟モードのスイッチが入ると聞こえてくることがあります。
本当だったら今すぐ飛びかかりたいところですが、窓に遮られてできません。「もどかしいなぁ!」という心の葛藤が声になって表れているわけです。
猫に第六感はあるのか…
患者さんの死期を予測する三毛猫「オスカー」、あるいは、阪神・淡路大震災後にわかった地震予知能力の可能性など、猫の第六感はたびたび話題に上ります。
猫は微細な音を拾い、ネズミの動きをコマ送りのような映像でとらえ、匂いひとつで外敵の侵入などを鋭敏に判断します。
人間と異なる認知世界を生きているその延長線上に、おそらく、猫の第六感が指摘される理由もあるのでしょう。ただし、人間にとって驚異的であっても、猫にとってはごく当たり前の能力かもしれません。
猫については科学的にまだ解明されていない分野も多く、ある意味、謎多き動物です。今後の研究次第では、驚くべき新事実が明らかにされる可能性もあります。
ただひとつ最後につけ加えるとすれば、「飼い主をメロメロにする」能力は、確実に第六感を超えています。
まとめ
愛くるしい反面、猫はどこかミステリアス、フレンドリーでありながら、ときにアンタッチャブルです。翻弄されつつも、愛さずにはいられないのが人間にとっての猫なのでしょう。
今回は、不気味に思える愛猫の行動を3つ紹介しました。猫はそれぞれ個性的ですから、飼い主さんだけが知る奇妙なふるまいもあるかもしれません。
そんなときは、猫好きの誰かにそっと打ち明けてみてください。「ここだけの話、うちの子も…」と相手から告白され、秘密を共有し合うことでさらに仲が深まるはずです。