『これから猫を飼う人へ』トリミングや日常生活での注意点について「トリマー」が解説

『これから猫を飼う人へ』トリミングや日常生活での注意点について「トリマー」が解説

犬とは体のつくりも性格も違う猫。そのお手入れなどの違いについてお話します。

意外と違う?お店の犬と猫への対応

ブラッシング中の猫

最近では犬よりも飼育頭数が多くなった猫。僕自身は犬しか飼った事がないので、ほとんど猫に対する知識はなかったのですが、学校で勉強をしたり、職場で猫と接するにつれて、犬との違いに驚くことがありました。

実際に飼ってからでないと想定できないような点が多くあったので、この記事が初めて猫を飼おうか考えている人や、すでに飼っていて自宅でお手入れをやってみようと考えている人の判断材料になればと思います。

トリミングについて

トリマーと猫

変化する猫との暮らし方

ある程度人の手でお手入れが必要な犬とは違い、猫は爪研ぎを置いておけば自分で研ぎますし、体の少しの汚れや毛玉なら自分で毛繕いをするし、毛の長さもある一定以上は伸びないのでシャンプーやカットなども基本的には必要ありません。

しかし、部屋の中で一緒に生活をする時間が長くなった最近の猫の飼い方では、どうしてもニオイが気になってしまったり、研いだ爪が家のフローリングや壁を傷付けてしまったりと、様々な問題点が出てきてしまいます。

お店に猫の爪切りや、トリミングなどをお願いしたいという問い合わせが増えています。犬が出来るんだから、猫も同じでしょ?と思う方もいるかもしれませんが、そう簡単なものではありません。

猫の性質

まず犬と比べると猫の方が警戒心が強く、攻撃性が高い傾向があります。

シャワーも苦手な猫が多いので、知らない場所や知らない人に苦手なシャンプーをされるとなると、猫にとんでもないストレスを与える事になってしまいます。ストレスで作業中にパニックを起こして暴れてしまう猫がとても多いです。

また俊敏性や、2メートルくらいは垂直にジャンプできるほど運動能力も高く、こちらがしっかり持っているつもりでも、するりと抜け出してしまうくらい体も柔らかいので、暴れてしまう猫の場合は抑えることが難しく、狭い隙間などから脱走の恐れもあります。

お店での受付状況

そういった脱走や、猫と人の怪我のリスクが高いため、トリマーの養成学校でも猫のトリミングを教えるところは少ないですし、お店でも猫はできないというところが多いです。

動物病院であれば猫のトリミングも受け付けている所が多いですが、トリマー1人だと危ないので2人で対応しなければいけなかったり、凄く暴れてしまう猫の場合は鎮静剤をかけてから対応しなければいけなかったりと大変です。

犬よりもスケジュール管理が難しいので、予約をとれる時間帯や日程が限られてしまっている事もあるので注意が必要です。

トリミングの注意点

基本的に猫は水に濡れることを嫌がり、音にも敏感なのでシャンプー中は特にパニックを起こしやすいです。脱走の恐れもこの作業中が最も高いので、戸締りの確認とリードを装着してどこかに結んでおきましょう。

使うシャンプー剤も猫の皮膚はデリケートで、人間や犬用のモノだと刺激が強い場合があるので、猫専用のシャンプー剤が好ましいです。

また音にもとても敏感なので、シャワーの水量も弱めにしてあげたり、音が出ないようシャワーヘッドを体にくっ付けてからお湯を出してあげたり、顔や耳の周りはスポンジで拭うなど工夫をしてあげて下さい。

乾かす時もドライヤーの風量を弱めでやるなど、なるべく音を出さない工夫は必要ですが、使う道具は犬と同じもので平気なのでブラシなどを使いながらしっかり乾かしましょう。

段階を踏む事が大事

上述したように猫のトリミングは注意しなければならない点が多く、猫にも強いストレスを与える恐れがあります。

その為、いきなり全ての作業をやろうとするのでなく、徐々に慣れさせていく事が大切です。

まずは人から触られる事に慣らして、嫌がることの多い足先まで触れるようになったら次はブラッシング。大人しくできる様になったらドライヤーで風を当てながらブラシを使う練習もした方がいいでしょう。

それができたらまずは足先、足一本や顔周りなどを部分的にシャンプー。そうして段々とトリミングに慣れさせていき、最終的に全身のシャンプーが出来るようにしてあげた方が猫にも人間にも負担が少ないはずです。

またこのように工程を分けた方が、その猫がどの作業を嫌がるのか分かり易いので対策がしやすいです。

ブラッシングを嫌がるなら使うブラシを変えてみたり、濡れる事を嫌がるなら水のいらないドライシャンプーを使ってみたりします。

また、シャワーの音を怖がるなら桶にシャンプー剤とお湯をためて、そこへお風呂のように浸からせて洗ってあげたり、決して無理やりにやる事なく、その猫にとってベストな方法を探してあげましょう。

日常生活について

ご飯を食べてる猫

ペットホテル

ご飯をあげようとゲージの扉を一瞬開けただけでも脱走する恐れがあるので、猫は受け付けてないホテルも多いです。

それにホテル室の作りも犬だけに対応したものだと、柵と柵の間隔が広く猫だと簡単に抜け出てしまう事があるので、そういった設備面の問題で猫は預かれないという所もあります。

また犬であればお散歩に連れて行ったり、フリースペースで運動をさせてストレスを軽減させる事ができますが、脱走のリスクの高い猫だとホテル室から出す事自体が難しいです。

仮に外での運動ができたとしても、運動中に大きな物音がした時や、いざ猫をホテル室に戻そうとした時にパニックを起こされてしまうと触る事すら非常に難しくなってしまいます。

そのような危険性を考えると、ホテル中の猫に十分な運動をさせてあげるというのは難しく、実施出来ているお店はごく少数に限られるのではないでしょうか。

そういった運動不足のストレスもありますし、環境の変化にもストレスを感じやすいので、1週間などの長期間のお預かりだと体調を崩してしまうこともあります。

少しでもストレスを軽減してあげる為に、長期で預ける前にはまず半日、大丈夫なら次は朝から夜まで、そして1泊という様に徐々にその場所やスタッフに慣れさせる事が大切です。

かかりつけの動物病院でホテルをやっているならその場所を利用したり、自分の家にスタッフがお世話をしに来てくれるというお店もあるので、何がベストなのかを色々工夫してあげましょう。

食事

基本的に食べたり食べなかったりとムラがある猫が多いです。それに加えて少しでもストレスを感じると食欲を無くしてしまうことも多いので、1日くらいご飯を食べなくてもそこまで気にしなくてもいいかもしれません。

それ以上に大事なのは水です。猫の先祖は砂漠地帯で生活をしていた動物で、水を飲む機会が少ない環境に適応するために腎臓の働きを強化し、必要な水分を食べたエサから吸収できるように進化をしていきました。

ただ砂漠で生活をしていた為その存在に慣れていないのか、水を怖がる猫が多く自身で積極的に水を飲もうとしません。

水分が不足してしまうと便秘や尿路結石であったり、その結石が尿路を塞いでしまう事で腎不全になってしまうなど大きな病気の原因になるので、ご飯からしっかりと水分が取れるように水分量の多いウェットフードを与えてあげる事が望ましいでしょう。

ただ上記のようにご飯を食べなくなる事も多いので、あまりに長期間食べない場合は脱水症状などにも注意が必要です。

逆に普段は水を飲まなかった仔が、急に大量に水を飲むようになった場合も腎臓などに異常が起きてる場合が多いです。水分摂取量は少し気を付けて観察してあげるといいでしょう。

猫は繊細な生き物

猫は手がかからない、世話がいらないとよく言われています。それを理由に猫を飼う人もいるかもしれません。

確かにトイレも勝手に覚えるし、無駄吠えもしない、お手入れも自身でしてくれるなど犬に比べると我々が手をかけなきゃいけない作業は少ないかもしれません。

しかし手がかからない分、様々な変化を見逃しがちになってしまいます。加えて僅かなストレスでも変化をきたしやすい動物です。

部屋の温度や運動設備、騒音対策や寝床などの飼育環境を猫にストレスのないように整備・コントロールをして、毎日の食事量・水分量・運動量・生活リズムを我々がしっかりと把握してあげるように努めましょう。

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