猫の分離不安症の症状とその対策について

猫の分離不安症の症状とその対策について

猫の分離不安症をご存知でしょうか。飼い主さんが大好き!ひと時も離れたくない!という、甘えん坊な愛猫と暮らす飼い主さんはご注意です!それは猫の「分離不安症」ではありませんか?ここでは、猫の分離不安症についてみていきましょう。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

猫の分離不安症とは

窓の外を眺める猫

子猫の頃から飼い主さんに付きっきりで、甘えん坊が過ぎる猫が、飼い主さんが離れると鳴き続けたり、食事や補水もしなくなったりする場合があります。

また、手皿でしか食事をしない、飼い主さんが居る時にしか排泄をしない等、猫の健康さえも脅かす様な行動を起こす事も。他にはトイレ以外の場所での排泄、過剰にグルーミングしたことで脱毛する、などもあげられます。

この様な症状は猫の問題行動のひとつ「不安行動」に分類される、「分離不安症」と言われるものに当てはまります。人間の赤ちゃんがお母さんと離れる事ができない状態と同じですね。この分離不安症が発症するのは以下のようなケースに多いとされています。

  • 完全室内飼い
  • 1匹飼い
  • 常に誰かが家にいる環境で育った
  • 母猫、兄弟猫と生後間もなく離れ離れになった

本来、猫は単独行動を好む動物の為、分離不安症を発症する事は非常に少なかったといいます。しかし、現在猫の飼育に関しても環境が変わり、家族の様に大切に育てられ、「猫可愛がり」されて育つ猫が増えた事で、分離不安症を発症する猫が増えたと言われています。

しかし、上記の項目の中で「生後間もなく母猫達と離れ離れになってしまった」という事以外は、決して悪い事ではありません。家族のように、我が子として大切に接するという事は、猫にとっての幸せにも繋がります。では、このような分離不安症による症状を緩和させる為には、どうすればいいのでしょうか。

猫の分離不安症への対策

食事中の猫

家中ついて歩いたり、一緒に眠ったりする程度なら飼い主さんにとっては「甘えん坊な可愛い我が子」ですが、分離不安症のように飼い主さんが居ない場所で排泄、食事をしない、問題行動となると心配ですよね。

我が家の愛猫も分離不安症の症状を発症した事があり、その際にいろいろと調べたのですが、「愛猫を突き放すような事はできない…しかしこのままではいけない!」と悩みに悩みました。悩んだ結果、実際に試した分離不安症の対策法をまとめました。

  • 分離不安で排泄をしない
  • 分離不安で食事をしない
  • 分離不安でお留守番中に鳴き続ける
  • 分離不安で破壊行動を起こす

分離不安で排泄をしない

原因は様々なので、一概には言えませんが、飼い主さんが居ないと排泄をしないという事は、飼い主さんが居ないと「安心して排泄する事ができない」という事ですよね。

まずは、自宅のトイレを「愛猫が安心して排泄できる場所」にする事から始めましょう。例えば、トイレが窓に近くにあって外の音がよく聞こえる、以前に排泄中に大きな音が鳴って驚いた、等の理由があるかもしれません。それらが思い当たる場合は、外の音が聞こえにくい場所に、もうひとつトイレを設置してみるといいかもしれません。

分離不安で食事をしない

飼い主さんが急な予定で家を空ける事になった場合、お留守番中にご飯を食べられないと思うと心配ですよね。まずは、現在の食事環境を見直してみましょう。例えば、飼い主さんの側で、飼い主さんが見守る中食事をしているならば、食事の場所を少々離れた場所にする、食事を置いたらその場を離れる事から始めてみましょう。

ただし、それまで側に居てくれたのに、と却ってストレスになってしまう可能性もありますので、夕飯だけは側にいる、おやつの時は側にいる等の対策をしましょう。

分離不安でお留守番中に鳴き続ける

飼い主さんが外出すると玄関で鳴き続けてしまうという場合、猫が安心できるドーム型のベッドや一人遊びができる電動のおもちゃを取り入れる事で、お留守番中の猫の気を紛らわせましょう。中には、テレビを付けておく事でいつも通りの環境に安心する猫も居るようです。他には飼い主さんの匂いのついた服などをおいておくのも一つの方法かもしれません。

分離不安で破壊行動を起こす

飼い主さんが外出するとパニック状態に陥り、部屋の中の物を壊したり、暴れたりしてしまう場合があります。この場合も、上記のように「お留守番=寂しい、コワイ」という概念を覆す必要がありますので、安心できる寝床や、電動おもちゃを取り入れる事と、猫が触って危険な物はしっかり整理整頓しておくようにしましょう。また、飼い主さんのニオイがついた衣服や毛布等を置いておくのも効果があります。

分離不安症の症状は共通して「長い目でみて改善」していかなければなりません。どうしても、改善が難しい場合は最後の一手として「多頭飼い」を検討してみるのもいいかもしれません。但し、相性が悪かった場合のデメリット等も考慮してじっくり検討して下さいね。

分離不安症以外の猫の問題行動

威嚇している猫
  • 粗相、スプレー行為
  • 噛む、引っ掻く
  • 喧嘩、威嚇

愛猫の年齢や性別によって、問題行動の内容や、原因は異なります。問題行動の中でも、多くの飼い主さんが直面する項目から見ていきましょう!

粗相、スプレー行為

猫はトイレのしつけが殆ど必要ないと言われる程、子猫であっても決まった場所できちんと用を足す事ができる動物です。その為、粗相をしてしまう場合、何らかの原因があると考えていいでしょう。また、粗相ではなくマーキングの為のスプレー行為である可能性もあります。

粗相とスプレー行為の違いについては、スプレー行為の場合、少量の尿を霧吹きのように、自分の頭と同じくらいの高さの場所(壁や柱など)に吹きかけます。ニオイもきつく、生臭いニオイがする事もあります。

粗相、スプレー行為に関わらず、トイレ以外の場所でオシッコをしてしまった場合は、まずその場所についたオシッコのニオイを消す事が大切です。ニオイが残っていると繰り返し同じ場所でオシッコをしてしまうので、専用のニオイ取りスプレーを使用して、ニオイを消しましょう。

粗相を繰り返す場合は、トイレの砂や場所が気に入らない等の原因の他に、膀胱炎等の病気を発症している可能性もあります。尿の量や質、排泄時の様子をしっかり観察しましょう。分離不安症の症状としてもみられるものですので、困った場合はすぐに獣医師に相談しましょう。

スプレー行為の場合、殆どは去勢手術を受ける事によって無くなります。しかし、ストレスや不安等、心因性の原因が隠れている可能性もありますので、去勢後のスプレー行為の場合は、新入り猫が来た、引っ越しをした、部屋の模様替えをした等の変化がなかったか、他に様子がおかしいところはないかを、じっくり観察してください。

噛む、引っ掻く

猫は、母猫や兄弟猫とじゃれあいながら「力加減」を学びます。あまりに小さい頃に家族と引き離された場合等、加減が分からずに、いつまで経っても強く噛んだり、引っ掻いたりしてしまう事があります。

まず、強く噛まれたり、引っ掻かれたりした時は「痛いよ」と目を見て伝え、遊びを止めるようにし、手にじゃれついてきた時は、おもちゃを使って気を逸らしましょう。大きな声で怒鳴ったり、叩いたりするのは絶対に止めてくださいね。

喧嘩、威嚇

多頭飼いや、家を自由に出入りしている猫の場合で、毛を逆立て「フ―」「シャー」等と威嚇したり、常に喧嘩が絶えかったりする場合があります。猫同士の喧嘩がヒートアップした場合は、霧吹きで水を吹きかける等の方法で、猫同士を一度遠ざけ、別々の部屋やキャリーで落ち着かせましょう。

上記の3つは、猫の問題行動の中でも比較的多く見られるケースです。そして、近年になって増えてきているという問題行動が、猫の分離不安症です。

まとめ

抱っこをされている猫

分離不安症など、猫の問題行動は共通して、何らかの不安やストレスが原因になっているケースが多いですね。のんびり屋で気分屋と言われる猫ですが、実はとても繊細で、感情豊かな生き物です。我が家の愛猫も、分離不安症の症状が見られ、一時期は私が見守らないと食事も排泄もできない状態でした。

しかし、上記の方法で少しずつ改善され、現在では寂しそうにするものの、お利口さんにお留守番できるようになりました。分離不安症でお困りの飼い主さんは、是非試してみて下さいね!

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