猫のしっぽの種類は多い!異なる理由や特徴的な猫種、動きの意味

猫のしっぽの種類は多い!異なる理由や特徴的な猫種、動きの意味

すらっとした真っ直ぐのしっぽ、稲妻のように曲がったしっぽ、切り株のように短くピコピコと動くしっぽ。猫のしっぽは長さも形も個性的。その愛らしさに魅了される人も多いのではないでしょうか。この記事では、そんな猫のチャーミングポイントでもあるしっぽの種類や、しっぽの動きの意味を解説します。

猫のしっぽの種類

猫のしっぽの種類

ひとことでしっぽと言っても、長さもかたちも様々です。
まずは種類についてご紹介します。

長尾(Full Tail)

後ろ姿の猫

頭胴(尾の付け根から鼻先まで)の半分以上の長さを目安とし、体長とほぼ同じくらいの長さのしっぽです。

一般的に多い長さで、尾は東へ行くほど細長くなると言われています。南東北や北関東、甲信地方など東日本は養蚕業が盛んで、蚕を守るために猫が飼われていました。

しっぽは猫にとってバランスを取るためのものでもあり、長いと運動神経がよくネズミ捕りが上手です。そのため、東へ行くとしっぽが長い猫が多いと考えられます。

短尾(Bob Tail)

短尾の猫

頭胴の1/5程度の長さで、まるで途中で切れたかのようにしっぽが短く6〜7センチ程度しかありません。事故や奇形で短くなったわけではなく、遺伝的に短いしっぽを持っています。

無尾(Rumpy)

しっぽが短い品種であるマンクスの中でも、ほとんどしっぽが無いタイプ。短尾とは違い、品種と遺伝によりこのような形状になります。

かぎ尾(Kinked Tail)

かぎ尾の猫

様々な長さで現れる、いわゆるかぎしっぽで尾曲がり猫とも呼ばれます。かぎの形にも様々あり、とても個性が出ます。飼い猫のかぎしっぽ率は全国平均41.7%となっており、しっぽの種類としては比較的多いです。

巻き尾(Corkscrew Tail)

まるでコークスクリューのように渦を巻いたしっぽで、「コークスクリューテイル」と呼ばれます。短いまき尾は「お団子しっぽ」や、ブタのしっぽのようなので「ピギーテイル」とも呼ばれます。

猫によってしっぽの種類が異なる理由

様々な長さや、形のしっぽを持つ猫たち。その理由には猫と日本の歴史も関係しています。

日本では縁起の良し悪しで短尾猫が好まれた

日本には、日本猫や和猫と呼ばれる猫がいます。この猫種は、古来より日本にいたとされています。丸い顔と太い足を持っており、中くらいの体格で毛は短く、尾は細長く先端が曲がっているものと短い猫がいます。

江戸では、長くまっすぐな尾は「火事になる」「蛇に似ている」「年をとると猫又になる」という都市伝説があり、忌み嫌われた時代もあったそうです。

猫又とは人の言葉を理解し、2本足で立つ化け猫です。しっぽがふたつに割れ、人を食い殺すとまで言われ恐れられていました。

猫又

江戸時代中期には、徳川第6代将軍「徳川家宣」に仕えた学者であり政治家でもある新井白石が「老いたネコは『猫股』となって人を惑わす」と述べていました。

当時の人々にとっては年老いた猫は猫又になるのは常識として考えており、猫を老いるまで長くは飼うものではないとされていました。

そのため猫又にならない短いしっぽは縁起が良いと好まれるようになり、長崎からもしっぽの短い猫を売るための商人が来たともいわれています。

その後、縁起の良い猫として選択的に交配されたため、短い尾の猫が増えたようです。

猫のしっぽは遺伝子変異の有無によって変わる

遺伝子には「顕性遺伝子(優性)」と「潜性遺伝子(劣性)」(※)があります。

短いしっぽやかぎしっぽを持つ遺伝子は「顕性遺伝子(優性)」で、長いしっぽは「潜性遺伝子(劣性)」です。そのため、短いしっぽを持つ遺伝子を持った猫は、優先的に現れる顕性遺伝子である短いしっぽで生まれます。

日本猫の多くは、この尻尾の特徴を遺伝的に受け継いでいるため、尻尾はまっすぐだが先が曲がっていたり、短かったりする猫が多いのです。。

(※)「優性遺伝子」「劣性遺伝子」とこれまで表現されていましたが、遺伝子に優劣があると誤解を招くことがあるため、2017年9月より「顕性遺伝子(優性)」と「潜性遺伝子(劣性)」という表現に変更されました。2021年より中学教科書内の記述も変更されています。

地域性

さまざまな特徴を持つ猫のしっぽですが、全国的にみるとそのしっぽの種類には地域差があります。特に長崎では短尾やかぎしっぽが多く、むしろ長くまっすぐな尾の方が珍しいようです。

そのルーツは日本が鎖国だった時代に、唯一海外貿易の拠点であった長崎へネズミ獲りとして猫が船に乗ってやってきたからと考えられています。

元はインドネシアのジャカルタ周辺にいた尾曲がり猫が、ネズミ対策のために貿易船に乗っていたという記録があります。

日本にやってきた貿易船にも猫が乗っており、日本で逃げ出してしまったために日本に土着したのではないかと考えられています。

幸運のお守りかぎしっぽ

特徴的なしっぽとして、かぎしっぽもあります。途中で曲がっていたり、クルっと丸まっていたりとその曲がり方も千差万別です。

このしっぽが曲がった部分は、「半椎骨」と呼ばれる通常とは形の違う骨になっています。

通常は円柱状に近い形をしていますが、この半椎骨は円柱ではなく角が無かったり三角に近い形などをしています。そのため、しっぽが曲がってしまうのです。

このかぎしっぽは、古くから幸運を招く猫として愛されてきました。曲がった尾が南京錠の鍵に似ていることから、財産を守る繁栄のお守りとされ、曲がった先端に引っ掛けると幸運が訪れるとされた。

かぎのしっぽが珍しいヨーロッパでは見るだけでも幸運だとされています。

しっぽが特徴的な猫の種類

品種によってしっぽが特徴的な猫もいます。

ジャパニーズボブテイル

丸まった尾が特徴的な和猫です。アジア大陸から日本に渡り、古来より日本に住んでいたと考えられています。

欧米にはいない短い尾は外国人にとても珍しがられ、魅了されていました。記録によると、1910年にイギリスで撮影されたしっぽの短い猫の写真や、1900年に横浜からイギリスへ渡ったお雪という名前の日本猫の記録も残っています。

その可愛らしさとしっぽが短いという珍しさに、外国での日本猫の記録は複数残っています。明治時代から海外でも人気が高かったしっぽの短い日本猫をアメリカで計画的に繁殖させたことにより、1976年に品種として認定されました。

マンクス

イギリスのマン島を発祥とする尻尾の無い品種です。貿易のために来ていたイギリスの商人が猫を置いていき、その中から尾のない猫が生まれて土着したといった説が有力です。

マンクスにはしっぽの種類が複数あります。

  • ランピーと呼ばれる完全無尾。
  • スタンピーと呼ばれる切株のような動かない尾。
  • ロンギーと呼ばれる短めから長めの尾。

一般にペットとして流通しているのはランピーです。

しっぽが短い理由は不明ですが、「ネズミを追いかけていた猫が、ノアの箱舟に最後に飛び乗ろうとして尻尾が扉に挟まれてしまった。」「マン島を根城にしていた海賊が帽子の飾りとして長いネコの尻尾をみんな切り取ってしまった。」といった伝説があります。

アメリカンボブテイル

アメリカ原産の短尾猫です。ジャパニーズボブテイルやマンクスの遺伝子が入っているのではないかという説もありますが、定かではありません。

1960年代にアリゾナで見つかった短尾猫が始まりとなっており、その子供の中からもまた短尾猫が生まれました。その子猫を気に入ったブリーダーが新しい猫種として繁殖させ、1970年代に品種として固定されました。

温厚で癒し系の猫であり、猫界のゴールデンレトリーバーと呼ばれることもあります。

メインクーン

その大きな骨格と長い毛並みで知られ、頭がよく優しい性格で愛されています。

ゴージャスなふわふわの毛並みは寒い地域でも体温を保つことができ、尻尾がとても立派にふさふさとしているため「尻尾にくっついている猫」という異名もあります。

また、メインクーンの尻尾は長く、2011年に世界一長い尻尾の猫としてギネス認定された猫もいます。その際の尻尾の長さは41.5 cm(16.34インチ)でした。

シャム

タイでは古来よりシャムネコは大切にされ、王室や貴族、寺院など、高貴な血筋の家系でのみ飼うことが許され門外不出とされていた時代もありました。

1884年にイギリス総領事館へ寄贈されたのがきっかけで、世界中にその名が知れ渡りました。シャムの特徴的な色合いであるポイントカラーは、生まれた時は真っ白ですが体温が影響して色が変わってきます。

耳やしっぽの先など体温が低い所から色が変わり、徐々に耳、顔、足と尻尾の先とポイントが生じていきます。

しっぽの動きの種類が意味する猫の気持ち

猫のしっぽはバランスを取ったり、防寒のために使われています。さらに、感情表現や意思の伝達といったコミュニケーション手段としても、猫たちはしっぽを使っています。

その動きを見ることで、猫たちの気持ちをよりしることができます。

しっぽをピンとまっすぐ上に立てる

うれしい時、機嫌がいい時、ご飯が欲しい時などです。尾を垂直に立てるのは、子猫が母猫に肛門や陰部周辺を舐めて清潔にしてほしい時の名残ともいわれています。

相手に対する好意の表現でもあり、しっぽの先を細かく震わせていたら最上級のご機嫌がいい時です。

しっぽをゆらゆら・パタパタとふる

  • 大きくゆらゆらしている

大きくゆらゆらしている時は機嫌がよく、細かくパタパタとしっぽを動かす時はイライラしています。

「抱っこをして最初は大きくゆらゆらしていたけれど、動きが細かくなった」なんて時はそろそろ降ろしてほしいと考えているかもしれません。

立ったまま大きくゆらゆらしている時は、何かに興味を持って観察をしているときです。

  • しっぽを縦に振る

窓の外の鳥や虫、何かの音など何かに興味を惹かれている時です。狩猟本能が刺激されて興奮している時なので、そっと見守りましょう。

  • 床をたたくように大きくパタパタとふる

何かに我慢していたり、葛藤している時です。「少し静かにしてほしい、こちらに来ないで」と考えているかもしれません。

  • 呼ぶとしっぽをふる

寝ている時やのんびりしている時など、呼ばれたことを認識はしているけれどめんどくさいと感じています。「無視はせずにとりあえず」の返事です。

しっぽをうねうねと動かす

楽しい気持ち、遊びたい気持ちの時です。近づいてきたら遊んであげましょう。

また、体勢を低くしてうねうねとしっぽを動かしている時は、視線の先におもちゃや虫などがいて狙っているのかもしれません。

しっぽを丸める

  • しっぽの先を頭に向かって背中で弓なりに丸める

遊びたい相手と距離をつめたい時です。とてもフレンドリーで楽しく遊びたい気持ちです。

  • しっぽを後ろ足の間に入れる

体を小さくして後ろ足の間にしっぽを入れたり、うずくまってしっぽを丸め、体に沿うようにしている時はとても怖がっています。なるべく自分を小さく見せた、防御の姿勢です。

  • しっぽをふくまらせて後ろ足の間に入れる

体を横向きにして大きく見せ、しっぽがぶわっ!と膨らんで脚の間に入れている時は怖くて攻撃と防御の両方の気持ちがあります。怒っているけど腰が引けているような状態です。

  • 手にしっぽを巻き付ける
しっぽマフラーの猫

しっぽで手を隠すように巻きつけるのは「しっぽマフラー」や「しっぽ巻き座り」とも呼ばれます。多くは寒い時に防寒対策として巻いていますが、何かに警戒していたりイライラしているサインのこともあります。

しっぽをなめる

グルーミングの一環として舐めるのは問題ありませんが、成猫が子どもの指しゃぶりのようにいつもなめ続けるのは注意が必要です。

なめすぎの原因は、母猫や兄弟猫と早くに離されてしまった。飼い主に甘えたい。ストレスを感じている。などが考えられます。

とてもかわいいしぐさではありますが、しっぽの毛が抜けてしまったり、皮膚炎を起こすこともありますので注意しましょう。

まとめ

猫のしっぽについてご紹介しました。長さがいろいろ、曲がっていたりお団子だったり、地域差などもありました。どんなしっぽもとても個性的でどれも可愛らしいですね。そんなしっぽにたくさんの人が魅了されています。

そのしっぽはバランスを取って活動に役立つだけではなく、気持ちを表現するためにも使われています。動きを見ることで愛猫がどう考えているのかがわかると、ますます愛しくなりますね。

これから新たに猫を迎えようとしている方も、ぜひこの記事を参考に猫ちゃんとのコミュニケーションを楽しんでください。

言葉は通じなくても、気持ちが通じ合うためのしっぽ。猫たちにとっても、気持ちを理解してもらえるときっとうれしいはずです。

また、その長さや形で、その猫ちゃんのルーツを想像してみるのも楽しいかもしれません。