猫に絶対NGな冬の食べ物5つ

猫に絶対NGな冬の食べ物5つ

冬場は鍋料理を通して野菜を摂取する機会が増える時期です。また、クリスマスには普段にはないご馳走が並びます。猫にも誘惑が多くなります。そこで、今回は猫にとって危険な冬の食材についてご紹介いたします。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫に危険な冬の食材

野菜を眺める猫

今年も鍋物がおいしい季節がやって来ました。鍋料理は野菜や肉などをバランスよく食べられて嬉しいですよね。また香り豊かな柑橘類のフルーツもリラックス効果があり、疲れを癒してくれます。このように野菜や果物は、我々人間にとって欠かせない栄養素を摂取するために重要な食品です。そして人間と暮らしている猫は、野菜や果物を目にする機会が多く、興味を示すことがあります。

食卓を囲んでいるときも、そばで猫が眺めていると「少しくらいなら大丈夫かな」とおすそ分けしてあげたくなるでしょう。でも、待ってください。人間にとって体に良いものが猫には害になってしまうことがあるのです。中には命に関わるほど危険な食材もあります。そこで、今回は冬が旬の野菜や果物の中から猫にとっては危険なものをご紹介いたします。

1.ユリ根

ユリ根

ユリ根は和・洋・中、何にでもよく合う万能な食品です。しかし、猫にとっては命に関わるほど危険な食べ物です。猫と暮らすご家庭でユリ根を扱う際はそばに猫がいないこと、調理後は必ず洋服にユリ根が付着していないことを確認することを徹底しましょう。そして、調理後は必ず手を洗ってから猫と触れ合うようにしてください。これはユリ根に限らず、「ユリ科」の食品や植物全般的に中毒を引き起こすため、大変危険なものになります。猫がユリ根を摂取してしまうと次のような症状が現れます。

  • 急性肝不全
  • 尿が出ない
  • 食欲不振
  • 過剰なほどヨダレが出る
  • 下痢
  • 運動失調
  • 無気力
  • 抑うつ

ユリ根を含むユリ科の植物が引き起こす中毒症状は全身に及びます。そして最悪の場合は死に至ることがあります。特に気をつけてほしいのはヨダレに対する認識です。犬は時々ヨダレを垂らすことがありますが、猫は健康な状態でヨダレを垂らすことはありません。よって、猫がヨダレを垂らすということは異変があるということなのです。ユリ科の植物の代表であるユリは、花粉が付着したり、花瓶の水を飲んだだけでも命にかかわります。もし愛猫が誤ってユリ根やユリ科の植物と接触し、異変があれば迷わず動物病院へ行きましょう。

2.長ネギ

ネギ

長ネギは体を温める作用があり、寒い冬場には重宝する野菜です。免疫力の向上や風邪予防、疲労回復などの効果が期待されるネギですが、人間でも胃が荒れてしまう人がいます。それはネギに含まれるアリシンという辛み成分が関係していて、生のままや多く摂取することで引き起こされる症状です。刺激物によってアレルギー反応が引き起こされる体質の人は、少量であっても吐き気を催したり嘔吐してしまうことがあります。このように、辛み成分を含むネギは猫にも危険な食材です。たとえ興味を示しても絶対に食べさせてはいけません。猫がネギを摂取すると以下のような症状が現れます。

  • 嘔吐や下痢などの消化器症状
  • 貧血
  • 黄疸や肝臓肥大などの肝臓障害
  • 赤褐色の尿が出る(血色素尿)

この他にも、食欲不振や歯茎や目の粘膜が白くなるなどの症状が出ることがあります。そして、心臓の鼓動が早くなり死に至ることがあります。特に、子猫や高齢の猫、免疫力が低下した猫などは要注意です。ネギが引き起こす病気は肝臓障害に留まりません。ネギを食べてしまうと次のような病気の原因にもなります。

  • 急性腎不全
  • 溶血性貧血

これらは、両者とも命を落とす危険性のある病気です。万が一ネギを食べてしまった場合は、至急動物病院を受診し「ネギを食べてしまった」と申告しましょう。野菜の中には加熱をしたうえで少量であれば問題のないものもあります。しかしながら、ネギは加熱調理をしても危険なことに変わりありません。そしてこれは、ネギのならず似た系統の野菜では共通して危険を伴います。ネギの仲間には次のような野菜があります。

ネギの仲間の注意野菜

  • 玉ねぎ
  • ニラ
  • にんにく
  • らっきょうなど

どれもとても身近な野菜で、料理の味を引き立ててくれる役割を担っています。よく調理される食材だからこそ、猫がいるご家庭での取り扱いには十分注意してください。

3.春菊・ほうれん草

春菊

春菊は鍋料理やすき焼きなどで活躍する野菜です。春菊が持つ独特の風味は、人間でも好き嫌いが別れるでしょう。春菊は「春」という漢字が使われているため混同しやすいのですが、春に花が咲くことから「春菊(春の菊)」と名づけられ、最も美味しく食べられる季節は冬になります。名前の由来から、冬の野菜でも春菊というのです。

この春菊やほうれん草はアクが強いので、猫の体には悪影響を及ぼす可能性があります。これらの野菜には「シュウ酸」という成分が含まれており、これが尿路結石の原因になります。尿路系の疾患を患っている猫や、現在は寛解(完治はしていないが病状が落ち着いている状態)である猫も食べさせてはいけません。また、シュウ酸には肝臓障害や腎臓障害を引き起こす作用を持っています。先ほどのユリ根やネギのように、食べること自体が直接命に関わるものとは異なり、春菊やほうれん草は少量を誤って口にしてしまってもすぐに影響がでるわけではないので安心してください。

故意に食べさせないことや多量摂取、継続的に食べることは避けるようにしましょう。ちなみに、ほうれん草と似ている小松菜はアクが少なく、シュウ酸の含有量もほうれん草の15分の1程度です。だからといって食べさせて良いというわけではありませんが、万が一食べてしまったときは、春菊やほうれん草に比べるとさほど心配いりません。

4.柑橘系の果物

みかん

「冬はこたつにみかん」という言葉が存在するほど、みかんは冬の定番フルーツでありとても身近な存在です。このみかんをはじめとする柑橘系の果物は、果実のみであれば猫でも食べることができます。一方、猫にとって危険なのは皮のほうです。

柑橘類の皮には「リモネン」という成分が含まれています。爽やかな香りを放つリモネンにはリラックス効果があり、不安や緊張を緩和してくれる作用があります。しかし、猫にとっては危険を伴う成分です。リモネンは、雑食である人間や犬の体には害を及ぼしません。それはこの成分を肝臓で無毒化し、代謝することが可能だからです。猫の場合は肉食動物なので、進化の過程で代謝の機能が我々とは異なるものになりました。

よって人間には無害なリモネンが、猫にとっては有害な成分になってしまうのです。危険性のメカニズムは、「アロマエッセンス」と同様であると理解しておきましょう。先ほど果実は食べられると紹介しましたが、リモネンの危険性を考慮すると、食べさせないことが無難です。みかん以外に冬が旬である柑橘系の果物は以下のようなものがあります。

冬季が旬の柑橘系の果物

  • ぽんかん
  • キンカン
  • デコポン
  • ネーブル
  • 文旦

これら全ての柑橘系の果物には、皮にリモネンが含まれています。飼い主さんが召し上がる際は、皮をキッチンで処理して食べると安全です。また、食後はよく手を洗ってから愛猫と触れ合うようにしましょう。

5.いちご

いちご

程よい酸味と甘みのバランスが良いいちごは、老若男女問わず人気のフルーツです。そしてケーキにも使用されることが多く、冬場は目にする機会が多い果物のひとつです。いちご自体は、ヘタを取り除き細かくしたものを少量であれば食べることができます。しかし、いちごに含まれる「キシリトール」には注意が必要です。虫歯予防の成分で有名なキシリトールを猫が摂取すると思い中毒症状を引き起こす可能性があります。中毒症状は次のようなものが挙げられます。

  • インシュリンの多量放出による低血糖
  • 肝機能の低下

これらの症状は、成猫の平均体重である3kgの猫が小粒のいちごを10粒摂取すると危険であるといわれています。もちろん個体差があるので、より少ない量でも中毒症状が見られる可能性も考えられます。先の柑橘系の果物と同様に、いちごも猫には食べさせないことが無難な対応です。

以上、5つの食材について紹介させていただきました。どれも身近で、好物である飼い主さんもいらっしゃると思います。旬の食材はその時期に人間の体が必要としている成分や、理にかなった効果を発揮するものになります。飼い主さんの健康面を考えると、無理に控えるのは好ましくありません。安全面に注意しながら調理するようにしましょう。

ある特定の条件で危険になる食べ物

バスケットに入る猫

猫にとって、全ての野菜が危険というわけではありません。中には摂取量に注意すれば安全に食べられる野菜も多く存在しています。ここからは、食べること自体に問題はないものの、ある特定の状況下で危険が及ぶ食材をご紹介いたします。

アブラナ科の野菜

アブラナ科の野菜といわれても、イメージしにくいかもしれません。そこでまずは、アブラナ科の野菜を挙げてみたいと思います。

  • キャベツ
  • 芽キャベツ
  • カリフラワー
  • ブロッコリー
  • 大根
  • 白菜など

どれも我々の生活と密接に関わる野菜です。これらは基本的に加熱調理をし、少量であれば猫も食べることができます。ただし、控えたほうが良い猫もいます。それは「甲状腺の病気を患う猫」です。甲状腺機能に問題を抱え猫には食べさせないでください。また、食物繊維を豊富に含むため、胃腸が弱い猫も控えたほうが良いでしょう。

きのこ類

きのこ類は、市販されたもので加熱調理をすれば食べることができます。きのこ狩りが趣味で、森林からきのこを採ってくる方もいらっしゃるかもしれません。きのこ狩りのリスクは、誤って毒きのこを採取してしまうことです。毒きのこは人間が食べてしまっても危険が及びますが、猫も例外ではありません。愛猫により安全な条件のきのこを食べさせるには、市販のものを購入することがベターです。ただし、種類を問わずきのこ類は消化に良くありません。胃腸が弱い猫は控えたほえが良いでしょう。健康体の猫でも、加熱したものをごく少量、細かくして食べさせるようにしましょう。

水菜

水菜は細かく切ったものを少量であれば問題なく食べることができます。元々砂漠で生活していた猫は、積極的に水を飲む習慣がありません。水菜は水分を多く含む野菜なので、猫が苦手とする水分補給を補うことができます。ただし、泌尿器系の病気を患う猫や寛解中の猫に食べさせてはいけません。またメリットはあるものの、食べないからといって必要な栄養素が欠けてしまうことはありません。好むようであれば摂取量に注意し、特別欲していないようであれば食べさせなくても大丈夫です。

クリスマスに潜む危険

プレゼントと並ぶ猫

クリスマスにはご馳走が並びます。猫にも誘惑が多いイベントです。そして、やはり気をつけなければならない食べ物が潜んでいます。楽しいパーティーにするためにも、NGな食べ物を意識しておきましょう。

骨つきのチキン

チキンはクリスマスの定番メニューです。猫は肉食動物なので、焼いたチキン自体は問題なく食べられます。注意したいポイントは次の2点です。

  • 人間用は味付けされていること
  • 骨ごと食べさせないこと

猫にもチキンを食べさせてあげたい場合は、猫専用に味付けを一切行わずに調理しましょう。そして、必ず加熱してください。さらに、雰囲気を出すために骨つきの肉をそのまま食べさせるのは危険です。骨が喉や胃腸を傷つけてしまう恐れがあります。猫が食べるときは必ず骨を外し、速やかに撤去しましょう。

人間用のケーキ

人間用のケーキには糖分が多く含まれています。猫は甘味を感じない動物なので、ケーキには興味を示さないと思われがちです。しかし、侮ってはいけません。意外にも猫は生クリームに興味を持っています。これはクリームの甘み成分ではなく、脂肪分が気になるのです。人間とは異なる観点から生クリームに魅力を感じてしまい、気がつけば舐められているという状況に陥らないようにしましょう。

猫は甘味を感じることはできませんが、クリームの食べ過ぎが原因で糖尿病になる恐れがあるのは人間と何ら変わりません。猫にもケーキを食べさせたい場合は、猫用のケーキを購入するか、ヨーグルトを代用してクリームを作るようにしましょう。

チョコレート

クリスマスケーキにチョコレートをチョイスした場合は、絶対に猫が食べないように気をつけてください。チョコレートに含まれるカカオには中毒を引き起こす恐れがあります。猫がチョコレートを食べてしまうと、次のような症状が現れます。

  • 嘔吐や下痢などの消化器症状
  • 興奮
  • 震え
  • けいれんや不整脈(重症な場合)

我々人間にとって鎮静作用があるチョコレートが、猫に対しては真逆のはたらきである興奮や震えを引き起こします。そして、最悪の場合は死に至るほど危険な食べ物です。どの程度の症状が現れるかは、チョコレートに含まれるカカオの量によって異なります。

また、症状が出るのは食後約6~12時間になりますが、空腹時に食べてしまうと時間が早まることがあります。もしも大量摂取をしてしまった場合、時間に関係なく突然症状が出てくることもあります。誤って食べてしまった場合は、愛猫の行動に違和感を覚えたら動物病院を受診しましょう。休日や夜間にはかかりつけの病院では診察が受けられないことがほとんどでしょう。万が一に備えて、休日や夜間でも診察してくれる病院をピックアップしておくと安心です。

アルコール

猫にとってアルコールは大変危険です。猫は肝臓の構造上、アルコールを分解することができません。摂取してしまうと、分解できずに体内に留まり続けたアルコール成分が体内を巡り、悪影響を及ぼします。アルコールが猫に及ぼす症状は以下の通りです。

  • 意識が朦朧とする
  • 昏睡状態になる
  • 心肺機能が低下する
  • 吐物が詰まることで起きる窒息

全身を巡ったアルコールが、最終的にダメージを及ぼすのは脳です。さらに脳の中でも、生命維持に関わる「脳幹」を蝕みます。心肺機能を低下させるのも、この脳幹にダメージを受けてしまうからです。そして、回復しない場合は命を落としてしまいます。故意に飲ませることは虐待に匹敵するほど残酷な行為になります。

もしも誤飲してしまった場合は、普段通りに元気に過ごせていても動物病院に相談してみましょう。また、クリスマスの定番であるワインは、アルコールだけではなく原料であるぶどうも危険です。ぶどうを摂取すると腎臓に悪影響を及ぼし、腎機能障害が急激に進行してしまうことがあります。嘔吐や落ち着きのなさを繰り返すことが初期症状であり、前兆になります。

本来食用ではない植物にも要注意!!

ポインセチア

猫が興味を示し、食べてしまうものは食用の食材だけではありません。我々人間が本来食用としていない植物であっても油断はできません。冬場に限定したものであれば、クリスマスの定番であるポインセチアが挙げられます。ポインセチアは色鮮やかで美しい植物です。最近では定番カラーである赤以外にもピンクや白、黄色などバリエーションが豊富になっています。より良い雰囲気を作り出すためにポインセチアを飾りたいと考えている方も多いのではないでしょうか?

しかし、猫がいるご家庭ではポインセチアの扱いには十分気をつけましょう。ポインセチアは葉の部分と樹液に毒を含んでいます。猫が食べてしまうと次のような症状が現れます。

  • 口周辺の炎症
  • 嘔吐や下痢などの消化器症状
  • 皮膚炎(樹液に触れた場合)

摂取量が少ない場合は、命を落とす危険性はほとんどありません。しかし、猫はメインクーンやノルウェージャンフォレストキャットなどの大型種を除き、犬よりも小柄なため摂取量が少量で済んだ場合でも注意しなければなりません。異変があれば動物病院に相談し、指示を仰ぎましょう。そして、猫がいる環境にポインセチアを置かないことをおすすめします。

まとめ

フミ

冬場の食材にも、定番のユリ科植物が登場しました。これは今回紹介した中でも最も気をつけていただきたい食べ物です。そして、その他の食材も特別なものはなく、我々が日々口にしているものばかりです。中には猫に食べさせても良い野菜や果物もあります。

しかし、肉食動物である猫にとって野菜や果物は必須ではありません。特別興味を示さない場合は、栄養バランスの整ったキャットフードのみを食べているほうが安全です。猫には食べて良い食材と危険な食材の判断ができません。飼い主さんが責任を持って管理するようにしてください。猫と人、お互いに体に良いものを食べて、冬を満喫したいですね。

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